↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
51/64

憑依代行黄泉代 死者憑き高坂編 第三幕


 追っ手は、まいた。


「……はぁ……」


 高坂は路地を歩いていた。


 身体中が痛い。


 服はボロボロ。


 靴も片方が脱げかけている。


「……散々だな」


 そう呟いた、その時。


 ――ドンッ。


「おい」


 誰かと肩がぶつかった。


「今、肩ぶつかったやろ」


「……」


 高坂は無視して歩き続ける。


「おい!」


 背後から怒鳴り声。


「待てこのガキぃ!」


 男が肩を掴もうとした。


 高坂は振り返る。


 そして。


「――邪魔だ」


 回し蹴り。


 男は咄嗟に腕を上げてガードした。


 ――ガァンッ!


「ぐっ!」


 高坂の足が止まる。


「……?」


 蹴った感触がおかしい。


 まるで――


 鋼鉄。


 男の腕。


 いや。


 本当に鋼鉄でできているようだった。


「……何だ、こいつ」


 男が腕を下ろす。


「てめぇ……!」


 高坂は一歩後退した。


 そして。


「……なにもんだこいつ」


 走った。


     *


 人混み。


「くそっ……!」


 前が見えない。


 進めない。


「ここはダメか!」


 進路を変える。


「……ちっ、ここも!」


 右。


 ダメ。


 左。


 ダメ。


「ここは……」


 前方を見る。


「……空いてる!」


 高坂は走った。


 人混みの中を。


 押し退け。


 すり抜け。


 揉みくちゃにされながら進む。


 服が破れる。


 そんなことは気にしない。


「ちょっと!」


 前から声。


「そこの人! チケットを!」


 高坂は無視。


「ちょっとぉ!」


 声が追ってくる。


「ちょっと、ちょっとちょっと!! 待って!」


「……!」


 男が追いかけてくる。


「うぉ!」


「なんだ!」


「誰だ!」


 左右から声が聞こえる。


 高坂は全部無視した。


 ただ。


 走る。


 走る。


 そして――


 足が止まった。


「……?」


 目の前に広がる。


 まばゆい照明。


 視界を一直線に走る、三本のロープ。


 熱気。


 歓声。


 怒号。


 何百人もの人間の声。


「……何だ、ここ」


 後ろから。


「ちょっと!!」


 あの男の声。


「チケット!!」


「……!」


 高坂は反射的に逃げた。


 目の前にロープ。


 掴む。


「――っ!」


 飛び越える。


 そして。


 リングの中へ。


 瞬間。


「――なんだぁぁぁぁぁぁ!!?」


 会場が揺れた。


「なんだなんだなんだぁぁぁぁーーーーーー!!」


 甲高い声が響き渡る。


 リングサイド。


 スーツ姿の男がマイクを握っている。


「リング上に――!」


 一拍。


「な、謎の男が登場だぁぁぁぁーーーーーー!!!」


 会場が爆発する。


「しかもぉぉぉ!!」


 男が高坂を指差す。


「上裸ぁぁぁ!!」


 高坂。


「……」


「そしてぇぇぇ!!」


 さらに指差す。


「赤パン一丁ぉぉぉぉーーーーーー!!!」


 観客。


「うおおおおおおおお!!」


 高坂は自分の姿を見る。


「…………」


 逃げる途中。


 服が全部引っかかって破れたらしい。


「……最悪だ」


 その時。


「……高坂?」


 リングの向こうから声。


「おまえ……なぜここに?」


 高坂が顔を上げる。


 そこにいたのは。


 見覚えのある男。


「……」


 巨漢。


 屈強な肉体。


「不動さん……」


     *


 リング上。


 二人の男が向かい合う。


 一人は。


 巨漢の屈強な男。


 もう一人は。


 人間とは思えない形相をした男。


「なんで、お前がここに……」


 不動が呟く。


 高坂は答えない。


「……これも運命(さだめ)か」


「運命……?」


「何の話だ・・・」


 不動は高坂を見る。


「アンタと俺の約束は……」


「閻魔大王が取り持つってわけか」


「……!」


 不動の表情が変わった。


「約束って……」


 一歩。


 近づく。


「まさか、おまえ――」


 高坂は俯いている。


 拳を握る。


「俺は……」


 大きく息を吸った。


 会場が静まる。


「地獄の習志野だぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!」  


 リングのロープが爆発。


「うおおおおおおおおおおお!!!」


 湧き上がる歓声。


 リングの中央で男が吠える。


 会場は一人の男に、まさに釘付けだった。


     *


 その時。


 遠くの客席。


 一人の男が座っていた。


 黒いスーツ。


 サングラス。


 微動だにしない。


 ただ。


 リング上の男だけを見つめている。


 口が、わずかに開いた。


「……」


 そして。


 小さく呟く。


「왜 녀석이 여기에 있는 거지?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。