憑依代行黄泉代
白い光が消える。
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静寂。
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焼けた研究施設。
崩れた装置。
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そして。
その中央に立つ俺たち。
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「……終わったのか。」
高坂が呟く。
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しかし。
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御影はまだ立っていた。
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身体は傷だらけ。
それでも。
笑っていた。
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「理解できない。」
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「なぜだ。」
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「なぜ人間は。」
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「苦しみながら生きようとする。」
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俺は答えなかった。
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代わりに。
春人が前へ出る。
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「御影。」
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「もういい。」
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御影が睨む。
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「先生。」
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「あなたは分かっていない。」
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「人間は弱い。」
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「だから。」
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「私たちが導かなければならない。」
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春人は首を振った。
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「違う。」
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「私は。いや。私たちは。」
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「そう思い込んでいただけだ。」
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御影が驚く。
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「……先生?」
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春人は空を見る。
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「私は。」
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「失うことが怖かった。」
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「妻を。」
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「友を。」
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「そして。」
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「息子を。」
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黒瀬が黙る。
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「だから。」
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「誰も失わない世界を作ろうとした。」
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「でも。」
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春人は拳を握る。
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「そのために。」
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「私は。」
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「人が自分で選ぶ権利を奪った。」
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御影が叫ぶ。
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「それの何が悪い!」
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「幸せになれるんですよ!」
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「苦しまない人生を!」
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春人は静かに言う。
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「御影。」
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「お前は。」
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「昔の私だ。」
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「だから分かる。」
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「お前が本当に欲しかったものは。」
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「完璧な世界じゃない。」
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「失敗しても。」
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「誰かに許してほしかっただけだ。」
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御影の顔が歪む。
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「……違う。」
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小さな声。
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「私は。」
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「救いたかった。」
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春人は頷く。
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「ああ。」
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「最初はそうだった。」
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「だから。」
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「お前を止める。」
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御影が装置を起動する。
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最後の抵抗。
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しかし。
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もう装置へ向かう人間はいなかった。
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村人たちが立ち上がる。
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「もういい。」
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老人が言う。
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「俺たちは。」
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「自分の人生を生きる。」
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少年も。
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「怖いけど。」
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「自分で決めたい。」
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一人。
また一人。
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人々が御影の思想を拒絶する。
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「なぜ……。」
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御影が震える。
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「なぜ苦しい方を選ぶ……。」
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俺は答える。
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「苦しい方を選んでるんじゃない。」
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「自分の人生を選んでるんだ。」
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その言葉で。
装置が完全に停止する。
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御影は膝をついた。
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「……私は。」
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「間違っていたのか。」
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春人は答えなかった。
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ただ。
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静かに頷いた。
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「でも。」
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「気づくことはできる。」
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御影は初めて泣いた。
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その後。
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黄泉谷村は少しずつ日常を取り戻した。
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詩乃は村に残ることを決めた。
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「私は。」
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「ここで。」
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「私として生きてみたい。」
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俺は笑った。
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「それがいいと思う。」
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黒瀬は春人の前に立つ。
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「……父さん。」
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春人は顔を上げる。
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「俺は。」
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「まだ許したわけじゃない。」
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「ああ。」
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「分かっている。」
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「でも。」
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黒瀬は続ける。
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「いつか。」
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「話くらいは聞く。」
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春人の目に涙が浮かぶ。
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「ありがとう。」
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帰り道。
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車の中。
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高坂が言った。
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「なあ翔。」
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「結局。」
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「お前は何をするんだ?」
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窓の外。
流れる景色。
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俺は考える。
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役者になる夢。
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憑依代行。
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人を助ける力。
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全部。
捨てる必要なんてなかった。
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「俺は。」
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「役者を続ける。」
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高坂が笑う。
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「まだ諦めてなかったのか。」
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「当たり前だろ。」
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「誰かの人生を理解すること。」
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「それが俺の演技だから。」
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スマホが鳴る。
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新しい依頼。
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『助けてください。』
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俺は画面を見る。
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そして。
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笑った。
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「行こう。」
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「憑依代行だ。」
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