敵だった男
「黄泉谷全体が。」
「能力実験場になっている。」
高坂の言葉が響く。
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村全体を覆う赤い光。
地面には見たことのない装置。
そして。
村人たちが次々と倒れていく。
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「何をしている。」
春人が男を睨む。
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男は笑った。
「実験ですよ。」
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「人間から苦しみを取り除く。」
「そのための。」
「最後の段階です。」
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「お前の名前は。」
黒瀬が聞く。
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男は振り返る。
「私は。」
「御影。」
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「春人先生の研究を。」
「引き継いだ者です。」
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春人の表情が険しくなる。
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「違う。」
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「お前は。」
「私の研究を理解していない。」
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御影は笑う。
「理解?」
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「先生。」
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「あなたは最後まで。」
「人間を信じてしまった。」
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御影は装置を見る。
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「人間は弱い。」
「苦しみに耐えられない。」
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「なら。」
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「最初から苦しまない人間を作ればいい。」
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俺は言う。
「それは人間じゃない。」
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御影は俺を見る。
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「君なら分かると思ったが。」
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「黄泉代翔。」
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「君も。」
「他人の人生を生きてきた人間だろう?」
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胸がざわつく。
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確かに。
俺は誰かになった。
誰かの人生を体験した。
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でも。
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「違う。」
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俺は答える。
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「俺は。」
「その人の人生を奪ったんじゃない。」
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「一緒に歩いただけだ。」
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御影は興味なさそうに笑う。
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「綺麗事だ。」
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その時。
村の中央で爆発。
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詩乃が倒れる。
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「詩乃!」
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俺が駆け寄る。
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能力反応が乱れている。
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春人が見る。
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「まずい。」
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「彼女はまだ存在が安定していない。」
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御影が言う。
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「当然です。」
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「作られた存在は。」
「所詮、作られたもの。」
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その言葉。
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俺より先に。
春人が反応した。
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「違う。」
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全員が驚く。
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春人は詩乃の前に立つ。
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「彼女は。」
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「もう私の作品ではない。」
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「彼女自身だ。」
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御影が笑う。
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「先生。」
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「あなたがそんなことを言うとは。」
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春人は静かに答える。
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「私は間違えた。」
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「だから。」
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「同じ間違いを。」
「もう繰り返させない。」
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御影が装置を起動する。
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「残念です。」
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「では。」
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「先生ごと。」
「古い思想を消しましょう。」
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巨大な光。
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能力反応。
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村全体が揺れる。
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高坂が叫ぶ。
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「翔!」
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「止められるか!?」
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俺は装置を見る。
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これは。
能力を強制的に引き出す装置。
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誰かの願いではなく。
無理やり能力を使わせる。
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「……最低だ。」
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俺は歩き出す。
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春人が止める。
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「翔。」
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「一人では無理だ。」
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俺は振り返る。
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「分かっています。」
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「だから。」
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「力を貸してください。」
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春人は少し驚いた。
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そして。
小さく笑った。
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「君は。」
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「本当に父親に似ている。」
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黒瀬がため息をつく。
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「親父。」
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「俺も手伝う。」
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春人を見る。
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「……許したわけじゃない。」
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「分かっている。」
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「でも。」
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「今だけは。」
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「同じ敵を見る。」
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三人。
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黄泉代翔。
黒瀬零。
春人。
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かつて交わらなかった三人が。
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同じ方向を見る。
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御影が笑う。
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「面白い。」
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「では見せてもらいましょう。」
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「あなたたちの言う。」
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「人間の可能性を。」
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装置が最大出力になる。
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その瞬間。
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村中の人々から。
無数の声が響いた。
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助けて。
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苦しい。
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怖い。
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俺は目を閉じる。
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聞こえる。
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でも。
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もう飲み込まれない。
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「俺は。」
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「全部背負うんじゃない。」
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「一緒に向き合う。」
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能力発動。
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