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写世

「渡せ。」


黒服の男たちが、一斉に銃口を向ける。


その先頭に立つ男は、静かに笑っていた。


「黄泉代翔。」


「君はまだ、その力の価値を知らない。」


---


「お前たちは何者だ。」


俺が問いかける。


男は胸元のバッジを見せた。


そこには一文字だけ。


**『写』**


「我々は。」


「**写世うつしよ**。」


---


高坂が小さく舌打ちした。


「やっぱりか。」


「知ってるのか?」


「能力者を集めている連中。」


---


男はゆっくり歩き出す。


「能力とは才能だ。」


「才能は、選ばれた者だけが持つ。」


「なら。」


「人生も、選ばれた者が生きればいい。」


---


俺は眉をひそめる。


「意味が分からない。」


男は微笑む。


「努力しても報われない者。」


「病で夢を失う者。」


「心が壊れた者。」


「そんな人生を続ける意味があるか?」


---


「我々が代わる。」


「より優れた人間が。」


「その人生を成功へ導く。」


---


黒瀬が一歩前へ出る。


「……まだそんなことを言っているのか。」


男は黒瀬を見る。


「久しぶりだな。」


「零。」


---


俺は振り向く。


「知り合いなのか?」


黒瀬は静かに頷いた。


「昔。」


「俺も写世にいた。」


---


空気が張りつめる。


「え……。」


高坂も驚く。


---


黒瀬は目を閉じた。


「最初は正しいと思った。」


「救えない人を救える。」


「夢を叶えられる。」


「そう信じた。」


---


「でも違った。」


「写世は。」


「人を救うんじゃない。」


「人を消している。」


---


男は笑う。


「消す?」


「違う。」


「より幸せな人生に書き換えるだけだ。」


---


「書き換える?」


俺は拳を握る。


「その人はどこへ行く。」


---


「必要ない。」


男は即答した。


「失敗する人生なら。」


「誰かが成功させた方がいい。」


---


その言葉を聞いた瞬間。


俺の中で何かが切れた。


「違うっ!!!」


倉庫中に声が響く。


「人生は。」


「成功するためだけにあるんじゃない!」


---


森川さん。


妻を失った。


それでも前を向いた。


桐谷美咲。


自分らしい演技を見つけた。


三浦航。


もう一度、自分の音楽を信じようとしている。


誰一人。


完璧じゃなかった。


だからこそ。


自分の人生だった。


---


写世の男はため息をつく。


「やはり君は幼い。」


「黄泉代。」


「君は父親に似た。」


---


「父を知っているのか。」


俺が問う。


男は静かに頷いた。


「もちろんだ。」


「彼は。」


「最後まで我々を否定した。」


---


「だから。」


男の表情が冷たくなる。


「消えてもらった。」


---


空気が止まる。


「……何?」


---


黒瀬が叫ぶ。


「翔!」


「乗るな!」


---


でも。


俺は止まれなかった。


「父を。」


「父を殺したのかっ!!!」


---


その瞬間。


胸の奥が焼けるように熱くなる。


今まで感じたことのない感覚。


頭の中に。


無数の声が響く。


助けて。


怖い。


苦しい。


ありがとう。


泣き声。


笑い声。


これまで憑依してきた人たちの感情が、一気に押し寄せる。


---


「翔!」


高坂の声。


でも聞こえない。


俺の身体が淡く光り始める。


---


神崎が青ざめた。


「まずい・・・」


「能力が暴走する!」


---


黒瀬はすぐに理解した。


「記憶が戻り始めている!」


---


俺の視界が白く染まる。


最後に見えたのは。


父の背中だった。


父は振り返らない。


ただ一言だけ。


『翔。』


『誰かを救う前に。』


『自分を見失うな。』


---


その瞬間。


俺の意識は闇へ落ちた。


---


静まり返った倉庫。


敵も味方も動けない。


神崎がゆっくり呟く。


「始まってしまった。」


---


「第二覚醒が。」


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