【番外編】登場人物紹介
拙作『7番目のシャルル』シリーズで各章の締めくくりにやっていた登場人物紹介です。
史実の1623年(元和九年)6月、徳川家光は父・秀忠とともに30万7千人の大軍を率いて江戸を発ち、7月27日に伏見城で将軍宣下を受けました。本作は、その歴史の転換点である「1623年6月」の、わずかな隙間に起きた知られざる旅の物語です。
——主人公——
▼竹千代/徳川家光(1604年7月17日生まれ)
数え二十歳。上洛軍が江戸城を出発する前夜に誘拐された、徳川家三代目の世継ぎ。誘拐犯のハチには幼名を名乗るが、速攻で見破られる。色白で中肉中背のお坊ちゃんだが、柳生但馬守直伝の柳生新陰流・免許皆伝の実力を持つ。趣味は城下の夜歩きと、ヘタウマな絵を描くこと。雨の碓氷峠を経て、一人の少女を守る為政者へと覚醒する。
▼ハチ(十代半ば)
もう一人の主人公。竹千代を身代金目的で誘拐した人さらい。祖父(宇喜多秀家)譲りの美形で、可憐な少女のようにも、凛々しい少年のようにも見える。曾祖父・宇喜多直家のお家芸である「鉄砲暗殺」の逸話にちなみ、火縄短筒を懐ふところに忍ばせる。祖父を救うための命懸けの旅路で、竹千代と魂を通わせる。本作唯一の架空の人物(家光の最初の側室・お振りの方がモデル)。
——徳川・幕府陣営——
▼稲葉正勝(1597年生まれ)
数え二十七歳。竹千代の乳母・お福(春日局)の実子であり、竹千代の乳兄弟。馬廻番頭(親衛隊長)を務め、主君の忍び旅をひそかに護衛・支援する。真面目で忠義一徹だが、それゆえに桶川宿での先回り(紅花の小袖)が裏目に出て、主君から理不尽な怒りを買ってしまう苦労人。のちに幕府の老中として権勢を振るう。
▼お福/斎藤福(1579年生まれ)
数え四十五歳。竹千代の乳母。のちの春日局。明智光秀の重臣・斎藤利三の娘であり、幼少期は謀反人の子として苦渋を舐めた過去を持つ。当初は誘拐犯への厳罰を望んでいたが、ハチの生い立ちを知り、かつての自身の境遇を重ねて最大の理解者・協力者となる。
▼徳川秀忠(1579年生まれ)
数え四十五歳。徳川幕府二代将軍。冷徹な政治手腕を持つ名君だが、私生活では妻・お江に頭が上がらない小心者。信濃国高遠藩の保科家に、隠し子・幸松丸(のちの保科正之)を極秘裏に預けており、その秘密が巡り巡って竹千代とハチの切り札となる。
▼お江の方(1573年生まれ)
数え五十一歳。秀忠の正室(御台所)であり、竹千代の実母。織田信長の姪にして「浅井三姉妹」の三女。誇り高く嫉妬深い性格で、次男の国松を溺愛するあまり、長男である竹千代を疎むようになる。
——宇喜多・前田陣営——
▼宇喜多秀家(1572年生まれ)
数え五十二歳。ハチの祖父。かつて備前岡山57万石を領した豊臣五大老の一人。関ヶ原の戦いで西軍の副大将として戦うも敗れ、現在は八丈島へ流刑の身。幼名は八郎。ハチの持つ「密書」は、この祖父が愛する孫娘を島から救い出すために仕掛けた、一世一代の謀略だった。
▼豪姫/樹正院(1574年生まれ)
数え五十歳。ハチの祖母。前田利家の娘であり、豊臣秀吉の養女。宇喜多家の没落後は実家の加賀前田家に引き取られ、夫と子供たちのいる八丈島へ仕送りを続けながら、静かに暮らす。本作において、ハチが目指した旅の本来の目的地。
▼富田重政(1564年生まれ)
数え六十歳。中条流剣術の剣豪で「名人越後」と恐れられる老剣豪。前田家三代に仕える剣術指南役。すでに隠居の身ながら主家のために影として動き、ハチの命を狙って高遠城に夜襲をかける。1599年、徳川家康が病床の前田利家を見舞った際、その御前で剣術を披露した誉れ高き武人。高遠城の暗闇にて、竹千代の「無刀取り」に技を封じられ、主家の安泰のために潔く身を引く。
▼前田利常(1594年生まれ)
数え三十歳。加賀藩主(前田家三代目)。前田利家と側室・千代の子。豪姫とは腹違いのきょうだいにあたる。利家の正室まつ(芳春院)と実母の対立など、家督相続における複雑な内憂を抱えており、宇喜多家の遺児の接近が幕府への疑惑の種になることを恐れ、結果的に富田重政を動かす要因となる。




