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1─4─5

 その後しばらくし、教室には続々と参加者が集まり賑わっていた。隼人は対戦を終え一息つこうと休憩スペースに足を運ぶ。


 そこでは真梨が椅子に腰を下ろしていた。ぼんやりと対戦スペースを眺めている。


「お疲れ」


「⋯⋯松川君もお疲れ様」


 隼人は真梨から少し距離を置いて座った。真梨は変わらず対戦スペースを見つめている。


 気になって視線を追いかけると、どうやらGameLovoのメンバーの対戦を見ているらしかった。


「GameLovoってさ、どれくらい人数いるのかな?」


「今日は全員参加してるわ。だから6人よ」


「そっか。⋯⋯あの人たち、楽しそうに試合するよな」


 今日対戦して、試合を観て感じたことだった。彼らは生き生きとDBTをプレイする。時には茶々を入れながらわいわいと、時には真剣に盤上のクリスタルを見つめて。


 こちらまで楽しくなってくる程だ。


「⋯⋯本当に、そうね」


 真梨は真剣な眼差しだ。それには熱が篭っていて、憧れているように感じられた。


「⋯⋯そういえば、萩追さんの勧めたお菓子食べた?」


 そんな真梨をあまり見てはいけないような気がして隼人は別の話題を振る。


「『スナイプスナック──からしマヨ味──』よね? 食べてないわ、怪しいもの」


「あれ? そうなの?」


 隼人はテーブルの上を探し例のそれを発見する。未開封だ。誰も食べていないらしい。


「止めておいたほうがいいわ」


「うーん、でも一口食べてみるよ」


 開封しようと袋を引っ張る隼人を真梨が止めるが、それを無視して力を込める。


「⋯⋯不味い」


「だから言ったのに」


 スナックを口に含んで渋い顔をした隼人に真梨は苦笑した。


「隼人くーん!」


「お姉ちゃん」


 スナックの袋をテーブルに戻していると琴葉がこちらへと向かってきた。


「初心者講座はいいんですか? あとこのお菓子美味しくないです」


 隼人はスナックに視線をやって顔をしかめる。


「そんなお菓子わたし勧めたっけ? そんなことより交代してもらったの! 約束、守れそうだよー?」


 しれっと過去の言動を無かったことにしている琴葉に隼人はげんなりするが、『約束』と聞いてはっとする。


「⋯⋯対戦してくれますか?」


「もちろん! さあ行こう!」


 琴葉は元気よく対戦スペースを指差し歩く。


「⋯⋯私も観戦していい?」


「うん」


 琴葉の後に続く隼人に真梨がそっと問いかけた。隼人は頷く。


「ありがとう。頑張って」


 真梨は顔を綻ばせ隼人の隣を歩く。


 対戦スペースで琴葉が教室奥側、半折りたたみ式テーブルをまたいで入口側に隼人と真梨。


 友也は運営、亮太は対戦、その他のプレイヤーも彼らの思うがままイベントを楽しんでいて、隼人と琴葉の対戦を観覧するのは真梨ただ一人。


「あの時と同じだねー!」


「そうですね」


 琴葉の陽気な声に隼人は同意。真梨もこくりと首を縦に振る。


 じゃんけんで先攻・後攻を決める。隼人が負け、後攻となる。


 これは前回とは異なる。──勝敗も前回とは変えてみせる。


 1stラウンドが開始。隼人は『ガァルーダ』のクリスタルを手に取り、《スピンシュート》のテクニックを使って飛ばす。


 琴葉が使うのは重量のある『フェニックス』。となればまずは堅実な一手。狙うはフィールド中央付近だ。


「いけっ!」


 隼人の気合いとともに『ガァルーダ』が飛翔する。その雄々しき翼はためかせ、大空を自在に駆け巡る。


 クリスタルは薄青の軌跡を場内に描いて見事狙いの場所に停止。『Ⅺ』とローマ数字の刻まれた面が表に出る。


 フィールドボーナスは+1。ファーストディフェンスボーナス+3が加算され、11+1+3より15点を得る。


「よーし、わたしの番だねー!」


 琴葉はニコニコ笑顔を浮かべながら『フェニックス』のクリスタルを発射。


 その際一見なんのテクニックも使用していないように見える。


 だが、この後の《スラントプレス》のためにかなりの回転を加えていることを既に隼人は知っている。


 フィールドに着地した『フェニックス』はその『9の目の反対側に重さが集中している』という性能のため、不規則に踊りまわる。


 それを制御し思惑どおりに動かすのは《スラントプレス》。使える人物は数少ない高等テクニックだ。


「もう二人にはバレちゃってるからねー!」


 前回琴葉は《スラントプレス》の使用が目立たないように肘のみで発動させていたが、今回は両腕でテーブルを押している。


「こうして見ると必死で体勢を保とうとしているおばあちゃんみたいね」


「確かに⋯⋯」


 真梨の呟きに隼人は同意。プレイマットが敷かれているのは半折りたたみ式テーブルの上だ。その構造上力を込めればやや傾く。


 よって《スラントプレス》は問題なく使えるのだが、琴葉は両腕をテーブルに置き、突っ張るようにしてそこに体重をかけているため、姿勢を維持する老人を彷彿させる。


「真梨ちゃん覚えてろー!」


 琴葉は反論しようとするが、クリスタルの制御に意識を集中させなければならないらしく、頬をぷくーと膨らませるのにとどまる。


 『フェニックス』は琴葉により軌道を修正されてフィールド最外部へ。そのまま静止し、×2のボーナスを得る。出た目は当然9。よって18点だ。


 盤上の『ガァルーダ』に接触させ、その出目を変える選択もあったはずだが琴葉はそうしなかった。


 おそらく接触による『フェニックス』の回転数低下で、『ガァルーダ』同様の+1ゾーンに留まってしまうことを避けたのだろう。


 また『ガァルーダ』の目を変更しても、もう一つの11や8の目だった場合、ファーストディフェンスボーナスを加味すると点数が劣ってしまうことも考慮したのだと思う。


 2ndラウンド。攻守が入れ替わり続けて琴葉がクリスタルを投げる。『フェニックス』が高回転を得て空気中を落下し場内に着地────


「────!」


 隼人はその刹那を狙って持ち替えておいた『ドラゴニル』を放つ。


 ──《アンチプレス》。友也には逆手に取られてしまったが、今ここで使わない理由はない。

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