1─4─3
「よろしくお願いします!」
残った二人──負け組というカテゴライズで少々不服だが──も対戦相手を確認し対戦フィールドの前に移る。
隼人はフィールドが乗っている半折りたたみ式のテーブルを挟んで友也に相対した。
「いけ友也ー! 三木ー!」
「負けんな高校生ー!」
残りのGameLovoメンバーによる和気藹々とした野次の中、それぞれの対戦がスタートした。
友也の実力はどれほどなのだろうか? あの琴葉が所属しているサークルの長だ。中学生の部活動のように、一番上手い人がリーダーになるわけではないかもしれないが、警戒しておいて損はないはずだ。
隼人が先攻となり試合が始まる。1stラウンド。ディフェンスの友也がクリスタルを放った。
隼人は友也を観察する。友也はクリスタルを投げた直後、その太い腕をテーブルに置いた。拳を見ると、爪の先が白くなっており、力が込められていることが分かった。
──《スラントプレス》を使っている!
「──っ!」
隼人は咄嗟に手に持っていたクリスタル、『ガァルーダ』──1stラウンドでは後から投げるため、邪魔されずに高得点を狙うつもりでいた──を放った。
対用テクニック、《アンチプレス》だ。
プレイマットが敷かれているのは半折りたたみ式テーブルの上。その構造上──体重を掛けて傾かせること──が可能であることに今気づく。
「おっとぉ!」
テーブルに体重をかけていた友也はすぐに腕をテーブルから離す。テクニックが相手クリスタルに直接影響を及ぼしてはならないのだ。
隼人と友也のクリスタルが同時にフィールドを走り回る。二つのライトブルーの光が交錯し、反対方向へと弾け飛んだ。そしてそれぞれ停止する。
隼人は友也のクリスタルを観察した。中に入っているフィギュアは気高き鬣を持つ流麗なフォルムの純白の獅子。
友也の使うクリスタルはバランスタイプのスーパーレア、『レオ』だ。上面8、8、7、7、下面8、7、8、6と高水準でまとまっている。重さも平均的と申し分ない。
二体は場内に踏みとどまる。『レオ』は+1のゾーンで7の目を出し、ファーストディフェンスボーナスの3点が加わり計11点。一方の『ガァルーダ』は重さの関係上『レオ』より大きく弾かれ+3のゾーンへ。
しかし、そのピーキーな性能の弊害として下面の3が出てしまう。計6点。
咄嗟のアクションだったとはいえ、ぶつかる可能性を考慮せずに『ガァルーダ』を放ったのは悪手だったと隼人は自責する。
「いきなりかぁ! やるなぁ!」
友也はノータイムでクリスタルを放たれたことは想定外だったらしく、冷や汗をかいている。
しかし得点は友也のほうが上。晴れない気持ちのままクリスタルを回収する。
2ndラウンド。隼人は再び『ガァルーダ』を、今度は《スピンシュート》を用いて放つ。地面に対して平行にスピンをかけることで、上面にした面の目しか出なくなる。狙うは最外部、×2のゾーンだ。
このラウンドでは隼人はディフェンス、ポイントタイプの『ガァルーダ』には不向きだが仕方がない。
『ドラゴニル』でフィールド中央付近に堅実な一手を打つことも考えた。
しかし相手が主に使うクリスタルはバランスタイプ最強、『ドラゴニル』の上位互換である『レオ』だ。
そうしたところで友也はわざわざ『ドラゴニル』にアタックしようとは思わないだろう。フィールド外部を狙って×2ボーナスによる高得点を選ぶに決まっている。そうなれば点差は開く一方だ。
怪鳥が雄々しき翼を羽ばたかせ、天空を舞い踊る。そのクリスタルはフィールド場内の本当にギリギリのところで静止した。
『Ⅷ』が表で×2ボーナスにより暫定16点である。
隼人は一瞬ヒヤッとしたが思惑通りの場所に放てほっと息を吐き出す。
「⋯⋯これは難しいなぁ」
「どうします?」
友也はフィールドを見てその切れ目を細めて唸った。『ガァルーダ』は場内超ギリギリ。あと僅かでも動かせば落とせるのだが、その位置ゆえぶつければ自分のクリスタルも一緒に出てしまう可能性が非常に高い。
「こいつの出番だなぁ」
友也は二つ目のクリスタルを取り出した。ライトブルーの八面ダイスの中には木の化け物が鎮座している。
確かあれは『トレンティア』。レア度が低いため確証はないがブレイクタイプだったはずだ。
クリスタルを注視する隼人をよそに、友也は『トレンティア』に《スナップショット》──威力を犠牲にコントロールを高めるテクニックを使用した。
『トレンティア』は『ガァルーダ』に衝突──というよりすぐ近くに『置かれた』という表現のほうが適切か──した。
それにより『ガァルーダ』は小さく横にずらされてそっと場外に転がる。
「どおだぁ!」
「⋯⋯やりますね」
ドヤ顔で胸を張る友也に悔しさを滲ませながら好戦的な笑みを浮かべる隼人。
『トレンティア』はブレイクタイプであるため重い。だから少し触れるだけで軽量な『ガァルーダ』は落ちてしまった。
ブレイクタイプゆえ出目は控えめで、×2ボーナス込みでも2点にしかならなかったのが幸いだが、点差は更に開いてしまった。隼人6点、友也13点である。
「いいぞ友也ー!」
「こっからだぞ高校生!」
外野から楽しそうな声が響いてくる。彼らの言うとおりだ。まだ勝負は始まったばかり。
「⋯⋯⋯⋯こうだなぁ!」
3rdラウンド。友也がディフェンスとなり先にクリスタルを放つ。『トレンティア』に代わってフィールドに君臨したのは『レオ』だ。
再び友也が《スラントプレス》を使ってきたので隼人は再び《アンチプレス》。今度は《スピンシュート》もかけて『ガァルーダ』を飛ばす。
『ドラゴニル』でない理由は高得点を取って逆転しなければならないからだ。
友也はテーブルから腕を離した。これにより《スラントプレス》は無効となり『レオ』の安定性は低下する。
「⋯⋯⋯⋯ん?」
──安定性が低下する?




