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  作者: 花京院
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第二章 九節



キサラ率いる革命軍の兵士と共に戦闘が行われているキャンプへ向かっていた。道中も僕の手は震えが止まらなかった。向かわなければならない。その気持ちとは裏腹に僕の心は恐怖に捕らわれていた。

キャンプではまだ戦闘は続いていた。

「聖教騎士団か、厄介だな」

キサラはポツリと言うと抜刀する。そして

「私は革命軍のキサラ!反乱軍に助太刀する!」

叫ぶと騎士へ向かって走り出す。それに続く革命軍の兵士たち。

キサラはすさまじいスピードで騎士を翻弄する。小太刀という短い刀で鎧の隙間から斬り込み攻撃し、一人ずつ確実に倒していく。

革命軍が加わりこちらが有利となるはずだった。しかしフルプレートの鎧を打ち破ることができた者はまだ少ない。

圧倒的防御力の前に兵士たちの攻撃はあまりにも無力だった。

騎士の前に次々と倒されていく兵士たち。このままじゃ、いつかサツキまで。不安がよぎる。


ふと右手に宿る光。その光はまるで使えと言わんばかりに輝きを増していく。暗黒の光はこの場を確実に制圧することができる。この右手を振るだけでいい。すべてはこの光が導いてくれる。

「やめろ!その力に耳を貸してはいけない!」遠くで誰かが叫ぶ声が聞こえた。

右手を空に掲げる。一際強く輝きを増す暗黒の光。この状況を打開することができるなら。この光が希望の火を灯し、僕らの道を切り開く。ためらうことなどない。


「天害」


右手で払うようにして光を放つ。

解き放たれた光は瞬時に拡散し、爆音と共に激しい衝撃波が周囲を襲った。敵も味方も関係なく打ち砕く。

立ち込めた砂煙が晴れると目の前に広がっていたのは惨々たる光景。

その力はあまりにも強大で、凶悪で、無慈悲だった。僕の目の前にあるものをすべて破壊する。僕は、目の前の光景が理解できなかった。僕は、僕が守りたかったものまで殺そうとしたのか。

サツキ…。サツキを探さないと。

「サツキ!」

いそいで瓦礫を払いサツキを探す。守りたかったはずなのに、僕が殺してしまったのか。

と、その時奥の方で瓦礫が動く音がした。あやめが顔を出すと続いてサツキが現れる。

「サツキ!」

急いで駆け寄る。

サツキはひどく怯えた様子だった。僕を恐れ、恐怖している。テアと同じ、目だ。そう思ったら、かける言葉がなかった。

「使うなと言っただろう!」

あやめが僕の襟を掴むとそれを制止するようにキサラが仲裁する。

「待って。彼は私たちを助けようと力を使ったのよ。あまり攻めないであげて」

「あなたも見たでしょう。あの力を!」

「えぇ、でも私たちは生きている」

と、再び瓦礫が動きレイが顔を出した。

「まだ生き埋めになってる人がいるかも、助けよう」

サツキの声でみんかが救助に向かう。

僕は一人立ち尽くしていた。



その後僕たち反乱軍は一度革命軍の本部があるキュリオス国へ向かうこととなった。反乱軍の基地は無くなったためだ。戦力を建て直すためにも革命軍のもとでお世話になるとレイが決め、移動が始まった。

僕は行かないつもりだった。いや、行けるはずがない。反乱軍のキャンプを潰し、兵士の人々まで傷つけた。

そんな僕を呼び止め誘ったのはキサラだった。

「どうした?行かないのか?」

「僕は行けない」

「なぜ?行く宛は無いのだろう?」

その通りだった。僕には頼れる人も、帰る場所も何もない。

「だけど」

「心配はいならい。私と共に来い。私がお前を導いてやろう」

キサラは僕へ手を差し伸べる。

僕は彼女へ救いを求めるように、彼女の手をとった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


剣の稽古をしていたとき、遠くの方で嫌な気配を感じた。

こんな遠くの気を感じるなんて珍しい。先日リュカが言っていた破壊神の力の封印が解かれたことが関係しているのだろうか。

空を見上げているとシャロンが話しかけてくる。

「エリック王よりお呼びがかかっている。ついてこい」

シャロンに続き会議室へ向けて歩き出す。


会議室には王エリックとフリード将軍、エルドレッド将軍の3人がテーブルを囲むように座っていた

「来たか。さぁ、座ってくれ」

エリックに勧められ席につく。

「これで全員揃ったな。急な招集にもかかわらず集まってくれて礼を言う。呼び立てたのは他でもない。元老院より指令があり、ロウレン共和国と同盟を組むことが決定した」

「な、待ってください。我々は初耳です!?」

フリードは驚いた様子で問う。

「私もつい先程知った。教会と我らの関係は知っているな。もはやこの国は教会の助けなしに存続は不可能。我ら王族としても教会の決定には逆らえない」

「しかし、こうも教会の連中のやりたいようにやられては」

教会と王属騎士団の不仲は薄々感づいていたが、そういう理由だったのか。

「話を戻す。同盟を組むにあたって使者がこの国へ来ることとなった。その者の担当をシャロンにしてもらう」

「はい。期待に応えるよう、責任をもって担当させていただきます」

シャロンは胸に手を当てて応える。

「この国には教会の行いをよく思っていない者もいる。シャルには警護に当たってもらう」

「わかりました。それで、使者はいつ来るのですか?」

「使者がくるのは一ヶ月後。それまでに色々な露払いをしなくてはならない。詳細はフリードより説明がある。以上だ」

会議はすぐに解散した。


続きはフリードの自室で話を聞くこととなった。

「さきほど王より話があったことについてなのだが、この国にも反乱分子がいることは知っているな」

「たしか革命軍と。どこの国にもそういうのは居るのか」

「その連中が使者との接触を狙うことは確実。使者がくるに当たって問題を解決しておきたいんだろう。お前には革命軍の本部を叩いてほしい」

「本部を叩くと言われましても、俺はまだ騎士になって日が浅い。そんな者に任せていいのですか?」

「あぁ、だからこそだ。おまえがこの任務を遂行したなら騎士たちもお前のことを信頼する。おまえの剣の腕は皆知っている。おまえになら安心して任せられる。」

そこまで言われては断れない。

「わかりました。まずは何をしたらいいですか?」

フリードはまってましたと言わんばかりに懐から地図を取り出すと机の上に広げる。

「作戦には私の兵を連れていけ、テテフ村の屯所はここから南に進んだところにある。そこの騎士に協力を依頼しておく、ルミナスという騎士が代表だ。少し気性の荒い男だが信頼はできる。きっとお前を助けてくれるはずだ。そして革命軍の基地もその近くだという情報もある。ここからなら10日程度で着けるだろう。十分な準備をして出立しろ」

地図をたたむとフリードは俺に手渡す。

「助かります」

「じゃあ早速俺の兵たちを紹介しよう。ついてこい」

フリードに続き部屋を出る。


フリードが向かったのは城の外、東門を抜けて馬で30分ほど走らせたところに屯所があった。なるほど、いつも練習している訓練所で合わないのはこういうところで訓練しているからか。

「お前ら、集まってくれ」

フリードが大きな声で招集をかけると騎士たちがすぐに整列を行う。よく訓練された騎士たちだ。

「このたび、王より革命軍討伐の命が下った。作戦の結構に当たってはシャルが指揮を執る」

騎士たちが皆一斉に俺をみる。なにか発言した方がいいのだろうか。

「よ、よろしく」

恥ずかしすぎる。言わなければよかったと後悔していた時、一人の騎士が敬礼する。

「シャルティエ様とお会いできるのを心待にしておりました。化け物討伐の噂はこちらまで届いております。よろしくお願い致します」

彼に続いて騎士たちが敬礼をしていく。

彼の言葉で救われた。なんとか上手くやっていけそうだ。


挨拶を終え、自室に戻る頃には日は沈みきっていた。

自室に入るとマキナが夕食を準備して待っていた。夕食は匂いからシチューだと分かった。ただ、いつもに比べると品数が少し少ない。

「いつもすまない。今日はシチューとパンか」

テーブルにつき食事を始める。なんだがシチューの具材は一口大とは言えないほど大きく食べるのに苦労した。と、マキナがなぜがもじもじと恥ずかしそうにする。

「これ、私が作ったんです。味はいかがですか?」

「あぁ、食べごたえがあっておいしいよ」

「ほんとうですか!?」

マキナが嬉しそうな顔をする。顔が近い。

「まだまだいっぱいあるのでたくさん食べてくださいね」

テーブルの影から大きな鍋がでてくる。

「これは本当にたべごたえがありそうだ」


食事を終えた俺はすぐにベッドに横になった。これは明らかに食べすぎだ。明日には出発しなければいけないというのに。

いつのまにか眠ってしまっていたようで、目覚めたら頃にはすっかり夜は更けていた。ベッドの脇には鞄ときちんと畳まれた衣類が積まれている。マキナが準備してくれたのだろう。明日、出発前にお礼を言わなくては。

「シャル…」

窓からリュカが現れる。元気がない。破壊神の力が解放されてからしばらく姿を現さなかったが、ひどくうなされているのだろう。

「リュカ!お前大丈夫なのか!?」

「心配いらない。それより明日、出発すると聞きましたよ。それで伝えたいことが」

リュカはバランスを崩しそうになる。それを受け止め、椅子まで運ぶ。

ゆっくりと椅子に腰かけたリュカはため息をついて話を続ける。

「どうしてこんなに」

「あぁ、これまでより生産量をふやしたから負担がきてるんだ。ゆっくりはしていられないからね。それよりもシャルに伝えなきゃいけないことが。大切なことだから」

リュカは力強くおれの腕をつかむ。こんなに焦っているリュカは初めて見た。

「革命軍には近づいてはいけない」

「それはできない。俺には命令が下っている。それに、俺だけ逃げるなんてできない」

リュカは笑顔で答える。

「…だよね。シャルはそう言うって分かっていたよ」

リュカは持ってきた長包みを差し出す。

「ならせめてこれを持っていって」

長包みを受け取り袋を開けると刀が入っていた。抜刀すると刀身にうっすら文字のようなものが刻まれているのがわかった。

「その刀に神の力を封印している。きっとシャルを守ってくれるはず」

神の力を宿した刀。そんな神聖なものを俺が持って良いのだろうか。何にせよリュカの忠告を聞いた方がいいことは確かだ。

「ありがとう」

「革命軍との戦闘は熾烈なものとなる。かならず生きて戻って。ぼくはシャルがいないとだめだから」

リュカの言葉は気がかりだったが、今は戦闘に向けて集中するしかない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


大聖堂地下・大会議室には大神官が集まっていた。

赤のルージュが口を開く。

「破壊神の力の持ち主はランスタッド国反乱軍にいるとの情報は正しかったようだな」

黄のジョヌが頷く。

「しかし、我が聖教騎士団のミスリルの鎧すら打ち砕くとはさすがの威力」

緑のヴェルトが続く。

「その後の足取りはつかめている。革命軍と共にテテフの基地へ向かったようだ」

青のアジュールは進言する。

「革命軍への討伐は王国騎士が向かっているようだ」

白のブランが答える。

「指揮者はシャルティエ・オーウェン」

赤のルージュは応じる。

「我らの巨人を退けた騎士か。さて、今回はどのような戦いを見せてくれるのか」

ルージュは笑みを浮かべる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌朝、いつも通り朝食をとる。

昨晩とは違い多くの品物がテーブルに並べられている。

「しばらくまともな食事をとれないでしょう?今朝は腕によりをかけて準備しました」

マキナはとびきりの笑顔だ。食べ始めると違和感を感じる。

どれを食べても同じ味がする。違う料理のはずなのに。

「ありがとう。しばらくはなにも食べなくても平気なくらいだよ」

マキナはとびきりの笑顔で食事する俺を見てくる。この視線。全部食べるまで許してくれそうにない。



油断するとすべて出してしまいそうになる。全部食べたことをまたも後悔する。

「今回の作戦は長期の作戦になると聞きました。どうかご武運を

「ありがとう」

マキナは笑顔を見せてくれる。出発しようとしたときマキナが俺の手をとり、引き留める。

「必ず、生きて帰ってきてください」

抱きついてくるマキナを受けいれる。

「帰ってくるさ。必ず」

彼女はとてもか細く、暖かかった。


城門にはすでに騎士たちが揃っていた。

「お待ちしてました、シャルティエ様。騎士20名全て揃っております」

話しかけてきたのは昨日挨拶の時に声を掛けてくれた騎士だった。

「あなたは昨日の」

「私はルーラン・アストレイです。いつも妹がお世話になっております」

妹?女性と関わることはあまりないのだが。俺がわかっていないことを察したのかルーランが言葉を続ける。

「私の妹はマキナと申します」

なんだって!?朝の出来事を思いだし恥ずかしくなる。

「あの、どうかされましたか?」

「いや!なんでもない!なんでもないから!」

大声で動揺を隠そうとしたが逆効果だったかもしれない。ルーランは疑いの目を向けてくる。

と、そこへアドルフが急いで駆けてくる。

「アドルフ!どうしてここへ」

「シャル!僕も連れていって」

「しかし」

「フリード将軍に許可はもらってる。それに僕たちはペアを組んだ仲でしょ?」

「いいではありませんか、シャルティエ様。味方は多い方が心強い」

「わかった。アドルフの同行を許そう」

「ありがとうシャル!」

アドルフは両手をあげて喜ぶ。

「お前!シャルティエ様のことをそのような」

ルーランがアドルフを注意しようとしたのを制止する。

「いいんです。ルーランさんも俺の事はシャルと呼んでください。その方がいい」

「…わかりました。ならば私のこともルーランとお呼びください」

「わかったよ、ルーラン。それじゃあ出発しよう!」

王国騎士21名を引き連れて出発する。到着は10日後、リュカが心配していたように大事が起きなければいいのだが。なんて、今から心配してもしかたない。腰に下げた刀に手を当てる。もしもの時は神の力とやらを使わせてもらう。

今はとにかく目的地へ足を進めるだけ。

いこう、テテフへ。


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