秋継②
「よおっ!やっと来たか…助手。」
「…俺はいつから、松下さんの助手になったんですか!だいたい、電話一本で呼びだされる間柄じゃないです。」
「ふ~ん、でも……来たんだ。」と言って、ニヤリと笑うと
「糸口だ。」と言って、由梨奈を俺の前に差し出した。
「えっ…?」
「お前が長年の悩んできた事を解決できる糸口!!桐谷 由梨奈嬢だ。」
はぁ?いや…由梨奈が俺が長年悩んでいた事であって…糸口と言うのは……違うぞ。
そんな思いが顔にでたのか、松下さんは
「さぁ…言え。」
「えっ?何を?」
「決まってんだろう。お前の悩みをこの由梨奈嬢にだよ。」
はぁ…何言ってんだ?!この人は…
悩みは……俺が由梨奈を…す、好きだけど、由梨奈は…俺の事をぜんぜん相手にしてくれない。
と言う事なのに、それを本人に言ったら、それは告白じゃないか。
あっ?!ぁ…あぁぁ…!!
こ、この人は、俺に今ここで、告白しろと言ってのか?!
「ようやく、言っている意味がわかったのか…じゃぁ言え。時間がないんだ。早くしろ。」
「ちょ、ちょ…松下さん!!!い、言えるわけないでしょう。」
「おいおい、今日日の若い男は、まったく▲◯▲○が付いているのか!根性無しばっかりだぜ。」
「な、何を言っているですか!由梨奈が俺が長年悩んでいた事であって…糸口と言うのは違う!」
その時…かすれたような声が
「私?私は…樹だけじゃない。私は秋継さんにとっても…悩みの種だったんだ。」
樹だけじゃない。秋継さんにとっても…悩みの種だって、由梨奈はいつまで…
「あんたさぁ~、そのネガティヴな性格どうかしろよ。秋継、お前さぁ。なんでこんな暗~い女がいいのかよ。いったいどこに惚れてんだ。」
「ま、ま、松下さん…!」
「あっ、悪りぃ。あたしが言っちゃったよ。」
「ぁ、秋継さん…が私を…」
「あああ、そうだよ。小さい頃から…好きだったんだよ。でも俺は、ゲームのことしか…話せることがなかったし、でも由梨奈はゲームがわからないから…しーんとして。」
もう…ヤケだった。どうせ、俺は…兄貴には敵わない。そりゃそうだよな。2歳しか違わなくて、容姿端麗で、頭脳明晰の兄貴を、由梨奈が俺より好きになるのは当たり前だ。
今24歳と29歳での5歳差は大きくはないが、当時は…大きかったもんな。
「秋継、おまえ…バカだったんだな。あっ…告白中、ごめんごめん。」
「松下さん!」
「叫ぶなよ。でも当時おまえ小学生だったんだろう。そんなもんじゃないのか。なぁ…由梨奈嬢。」
由梨奈は、ゆっくりと頷き
「でも…婚約した時、嫌そうだったじゃない?」
「それは由梨奈だろう!」
「私は…」と言って、黙り込んだ由梨奈の言葉を続きを松下さんが言った。
「私は、久住の家を栄えさせる為に嫁に入ったのだから、良いも悪いもなかった…ってところか?」
と言って、俺を見て
「由梨奈嬢は、久住家の人間から、物としてしか見られていないと思っていた…秋継、もちろんお前を含めてな。」
「お、俺は違う!」
「誰かに助けてもらおうと考える由梨奈嬢も…。自分でいろいろ考えるくせに、動けないお前も…。あたしから見ればどちらもふざけんな!と言いたい輩だ。」
そう言って、松下さんは由梨奈の肩に手を置き
「あんたも秋継みたいに言いな。聞いて見りゃいいじゃんか。」
「…聞いてみる?」
「あぁ…ほんとに自分のことを好きなのか、それならどんなことがあってもその気持ちに変わりがないか。」
「わ、わたし…」
「あたしはこの助手は、結構一途だと思っている。あんたの話を聞いて動揺するかもしれない、でも、それは久住家の次期当主だから、動揺するんじゃない、ただ単純にあんたを心配してだ。こいつは…そういう男だ。知ってるだろう、あんたも。」
「なん…だよ。何言ってんだよ、ふたりで…」
恐かった。何を言われるのか恐くて、震える声を張り上げた俺に
「ビビってんじゃねぇよ!!この女に惚れてるなら、もっとどーんと構えて受け止める男になれ!ほんとお前は▲◯▲○が付いているのか!」
そう言って、松下さんは手を上げ
「じゃぁ…行くから」
「えっ?」
「ええっ?この場面で離れるのか?!」
「当たり前だ。恋は自分の力で掴み取れ。」と言って、コンビニを指差すと
「あそこで、好きな女を守るために、勝負に出た男がいる。好きな女の背景はあんたらより…複雑だ。勝てるかどうかわからない、だがこのままだと女の心は…死ぬだろうな。だから、あいつは勝負に出た。結ばれなくても、好きな女の為に…女の心を、笑顔を守るために。
あんたらも、自分で歩け!失敗したって…自分の足で歩いたのなら立ち上がれる。」
松下さんが指差したコンビニの中で、婆様が、青くなって唇を噛んでいる。
兄貴…
《俺は…本気です。》
兄貴の声が、松下さんのスマホから聞こえた。
《私は、そう簡単に手を引かないわよ。》
《望むところです。》
俺は…由梨奈を見た。由梨奈も俺を見ていた。




