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キスをする5秒前~kiss.kiss.kiss~  作者: 夏野 みかん
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秋継②

「よおっ!やっと来たか…助手。」


「…俺はいつから、松下さんの助手になったんですか!だいたい、電話一本で呼びだされる間柄じゃないです。」


「ふ~ん、でも……来たんだ。」と言って、ニヤリと笑うと


「糸口だ。」と言って、由梨奈を俺の前に差し出した。


「えっ…?」


「お前が長年の悩んできた事を解決できる糸口!!桐谷 由梨奈嬢だ。」


はぁ?いや…由梨奈が俺が長年悩んでいた事であって…糸口と言うのは……違うぞ。

そんな思いが顔にでたのか、松下さんは


「さぁ…言え。」


「えっ?何を?」


「決まってんだろう。お前の悩みをこの由梨奈嬢にだよ。」


はぁ…何言ってんだ?!この人は…

悩みは……俺が由梨奈を…す、好きだけど、由梨奈は…俺の事をぜんぜん相手にしてくれない。

と言う事なのに、それを本人に言ったら、それは告白じゃないか。


あっ?!ぁ…あぁぁ…!!

こ、この人は、俺に今ここで、告白しろと言ってのか?!


「ようやく、言っている意味がわかったのか…じゃぁ言え。時間がないんだ。早くしろ。」


「ちょ、ちょ…松下さん!!!い、言えるわけないでしょう。」


「おいおい、今日日きょうびの若い男は、まったく▲◯▲○が付いているのか!根性無しばっかりだぜ。」


「な、何を言っているですか!由梨奈が俺が長年悩んでいた事であって…糸口と言うのは違う!」


その時…かすれたような声が

「私?私は…樹だけじゃない。私は秋継さんにとっても…悩みの種だったんだ。」


樹だけじゃない。秋継さんにとっても…悩みの種だって、由梨奈はいつまで…


「あんたさぁ~、そのネガティヴな性格どうかしろよ。秋継、お前さぁ。なんでこんな暗~い女がいいのかよ。いったいどこに惚れてんだ。」


「ま、ま、松下さん…!」


「あっ、悪りぃ。あたしが言っちゃったよ。」


「ぁ、秋継さん…が私を…」


「あああ、そうだよ。小さい頃から…好きだったんだよ。でも俺は、ゲームのことしか…話せることがなかったし、でも由梨奈はゲームがわからないから…しーんとして。」



もう…ヤケだった。どうせ、俺は…兄貴には敵わない。そりゃそうだよな。2歳しか違わなくて、容姿端麗で、頭脳明晰の兄貴を、由梨奈が俺より好きになるのは当たり前だ。


今24歳と29歳での5歳差は大きくはないが、当時は…大きかったもんな。



「秋継、おまえ…バカだったんだな。あっ…告白中、ごめんごめん。」


「松下さん!」


「叫ぶなよ。でも当時おまえ小学生だったんだろう。そんなもんじゃないのか。なぁ…由梨奈嬢。」


由梨奈は、ゆっくりと頷き

「でも…婚約した時、嫌そうだったじゃない?」


「それは由梨奈だろう!」


「私は…」と言って、黙り込んだ由梨奈の言葉を続きを松下さんが言った。


「私は、久住の家を栄えさせる為に嫁に入ったのだから、良いも悪いもなかった…ってところか?」

と言って、俺を見て


「由梨奈嬢は、久住家の人間から、物としてしか見られていないと思っていた…秋継、もちろんお前を含めてな。」


「お、俺は違う!」


「誰かに助けてもらおうと考える由梨奈嬢も…。自分でいろいろ考えるくせに、動けないお前も…。あたしから見ればどちらもふざけんな!と言いたい輩だ。」


そう言って、松下さんは由梨奈の肩に手を置き

「あんたも秋継みたいに言いな。聞いて見りゃいいじゃんか。」


「…聞いてみる?」


「あぁ…ほんとに自分のことを好きなのか、それならどんなことがあってもその気持ちに変わりがないか。」


「わ、わたし…」


「あたしはこの助手は、結構一途だと思っている。あんたの話を聞いて動揺するかもしれない、でも、それは久住家の次期当主だから、動揺するんじゃない、ただ単純にあんたを心配してだ。こいつは…そういう男だ。知ってるだろう、あんたも。」


「なん…だよ。何言ってんだよ、ふたりで…」


恐かった。何を言われるのか恐くて、震える声を張り上げた俺に


「ビビってんじゃねぇよ!!この女に惚れてるなら、もっとどーんと構えて受け止める男になれ!ほんとお前は▲◯▲○が付いているのか!」


そう言って、松下さんは手を上げ

「じゃぁ…行くから」


「えっ?」


「ええっ?この場面で離れるのか?!」


「当たり前だ。恋は自分の力で掴み取れ。」と言って、コンビニを指差すと


「あそこで、好きな女を守るために、勝負に出た男がいる。好きな女の背景はあんたらより…複雑だ。勝てるかどうかわからない、だがこのままだと女の心は…死ぬだろうな。だから、あいつは勝負に出た。結ばれなくても、好きな女の為に…女の心を、笑顔を守るために。


あんたらも、自分で歩け!失敗したって…自分の足で歩いたのなら立ち上がれる。」



松下さんが指差したコンビニの中で、婆様が、青くなって唇を噛んでいる。


兄貴…


《俺は…本気です。》


兄貴の声が、松下さんのスマホから聞こえた。


《私は、そう簡単に手を引かないわよ。》


《望むところです。》



俺は…由梨奈を見た。由梨奈も俺を見ていた。


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