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キスをする5秒前~kiss.kiss.kiss~  作者: 夏野 みかん
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葉月・・・ゴックンする。

「だ・か・ら、俺は心配して声をかけたのになぁ…。」


「…」私は黙って頷いた。


「だいたい、その道はこの桜の木をぐるりと囲んだ道だから、進んでもまた戻ってくるって、言おうと思ったのに…はぁ…人の親切をそうやって斜めに見るからだよ。」


この弟久住さんをチラリと見れば、嬉しそうに…いや可笑しそうに眼を細めて見ている。


くそっ…何たる失態。

フンフンと鼻息を荒くして、進んでいったら、この小憎らしい顔が、眼を輝かせて待っていたとは…付いていない。


弟久住さんは、わざとらしい微笑みをたたえ

「教えようか…広間までの道。」


うっっ…上から目線だ…悔しいけど…、ゆっくりと頷くと


「じゃぁ…《教えてください》って言えよ。」


私は黙って立ち上がり、頭を下げ歩き出した。


「おい!なんだよ。」


「やっぱり、なんかムカつくからいいです。さようなら。」


「なんだよ。それ!」


「あなたに聞くくらいなら、ここで遭難したほうが百倍もマシだと思うので、じゃぁ…さようなら。」


「はぁ…わかったよ。おまえを相手してると、疲れるから…もういい。付いて来いよ。」


「へぇ?広間に…行くんですか?」


「あぁ、隠れているとか言われて…少し、腹も立つけど…一理あるし…。」


「へぇ~」


「なんだよ。」


「高宮 葉月。」


「えっ?」


「名前ですよ。弟久住さん。」


「はぁ?!なんだそれ?!弟久住って…」


「だって、お兄さんを久住さんって、呼んでいるから同じだと、どちらの話をしているのか、わからなくなりそうなので…弟久住さん。」


「樹…って、呼んでいないのか?」


「ぁ、当たり前じゃないですか!年上の男の人を呼び捨てだなんて…」


「俺はいいぞ。秋継って呼び捨てでも…葉月。」


「嫌です!葉月って呼び捨ても嫌です!やっぱり、さようなら。」


「おまえ…。あぁ!もう…行くぞ!」


久住さんより、少し細い後ろ姿を見ながら、大きく息を吐いた。

まさか…久住さんの弟さんと知り合うとは…


久住さん…

由梨奈さんとお話できたのかなぁ。10年前の恋にちゃんと、さよならできたかなぁ。


「おい、高宮 葉月。ぼんやりしていたら置いてゆくぞ。」


「今、行きます!弟久住さん!」


チッと舌打ちが聞こえたけど…

一番解かりやすくて良いと思うんだけど…どうやらお気に召していないみたい。


いくつか上だったと思うけど、なんだか子供みたいで、少し苦手。

お坊ちゃまだからなのかなぁ、上から目線での物言いで、でもそれがなんだかバカにされてるみたいで…キツイ物言いでも、理香さんには愛を感じられるけど…この人には感じられない。


「高宮 葉月、兄貴は…。」


「えっ?」


「…兄貴は……由梨奈と話をしていたか…?」


あぁ…そうだった。この人が、由梨奈さんの…


「…まぁ、バカな事をしてくれなきゃ…どうでもいいけど…ほんとにどうでもいいけど。」


苦手なんて、言っちゃいけないよね。

お兄さんの好きだった人と結婚をするんだもの、きっと悩んで、そのイライラが人に対して尖がった物言いになっているかも。この人はこの人なりに、どうしていいのかわからなくて、ここにいたのかもしれないのに…私は…


アマちゃんを卒業しろとか…。

逃げてばかりいたって、物事は解決しないとか…。

こんなところで隠れていないで、あなたも前に足を進めるべきですとか…。


悪い事、言ったなぁ。


「今、お話しされているかも…知れません。でも久住さんは問題を片付けるために、日本に帰ってきたんです。だから…「そうか、そう言っていたのか…」」


私に最後まで言わせないで、弟久住さんはそう言って立ち止まり

「この塀を乗り越えると早いけど…高宮 葉月、どうだ。」


「いや、どうだと言われても、私はワンピースです、おまけにハイヒール。無理ですよ。」


弟久住さんは、う~んと唸ると

「でも、ここから行ったほうが、10分は早いんだけどなぁ。」と言いながら、私の顔を覗き込んできた。私は後ろへ下がりながら


「10分、遅くなっても普通の、そう普通の道でお願いします!!」


弟久住さんは返事をせず、じっと私を見て

「高宮 葉月…お前、それ本名か?」


「えっ…?!」


「どっかで…見たんだよなぁ。似たような顔…」


「はぁ?」


「…その髪の色は地毛か?」


「は、はい。」


弟久住さんは、鋭い眼をより鋭くして


「その瞳の色もか…?!」


「そうですが…。えっ…となにか?」


「…お前、ハーフか、クォーターだろう?」


思わず、ゴックンと大きな音をたてて、唾を飲み込んでしまった。




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