葉月・・ドキドキ。樹・・ムカムカ?
「いいんですか?葉月さん。」
「う、うん。」
昼勤のシフトに入った丸山君は、私をチラリと見た。
「まったく…。吉田さん…きっと昨日遊びすぎて寝坊したんですよ。あの人…もう何度もやってますからね。店長も店長です、断ると言う言葉を知らない葉月さんに、朝勤なのに!もうあがりなのに!1時間延長してだなんて!よく言えますよ。」
いやいや…私だって断ると言う言葉、知っているし、使えるから…
「ほんと…そんなだから、夜勤も断れなくて…やることになってしまうんですよ。」
「えっ?!」
「シフト表に…入ってましたよ。金曜日葉月さん…夜勤に…」
「あわあわああ…!や、やるって言ってないよ!!」
心臓の鼓動が…ドキドキと激しく打ち出した、ど、どうしょう~
そんな私を丸山君は、哀れむように見ると、大きく溜め息をついた。
「保護者の…松下さんに…」
「保護者?…理香さんが…?」
「そこじゃないですよ!今頭に入れるところは…」
1コ下の大学生の丸山君は、また溜め息をつくと…
「松下さんに言って、店長のあの姑息なやり方を、抗議してもらったほうが良いですよ。」
私の頭の中で…
理香さんに『葉月!なんで、もっと早く言わなかった。』と仁王立ちする理香さんの姿と…
店長の…うっっ…。痛ましい姿が浮かび…
丸山君に頭を小刻みに振って、腕に縋った。
「む、無理!助けて!!丸山君!」
「葉月さん~!手を離してください!俺、松下さんに殴られます!!」
うっ!!私は歩く危険物なの?!
でも…丸山くんしか…頼る人が…
「葉月さん~!!」
*****
西口の近くまで来たときだった…
グゥ~
今日は、朝から食べていなかったことを…腹の虫が教えてくれた。
「昼食会に出なくて良いなら…どこかで食べて行くか…どうせ、まともな仕事をやらせてもらえないんだから…2~3時間いなくても支障がないだろう。」
そう口にしたら、溜め息が出そうで…情けなかった。
「27の男が…腹の虫を鳴かせ、溜め息を付く姿は…超絶カッコ悪…。」
呟くように出た言葉に、薄く笑い…
なにやってんだろうなぁ…俺。あんなに気負ってアメリカから帰って来たのに…あれから二週間あまり、仕事も…プライベートもうまく行かず、彷徨うように腹を空かせて、駅構内を歩いているとは……はぁ~取り合えずなんか軽く食べて…
あっ!!!!そうだった。
駅の構内のレストラン街って…今、改装中だったんだ。力が抜けそう…くそっ…コンビニでなんか買って、会社に戻るしかないなぁ…
まさか、腹の虫をぐうぐう言わせて、あの人達に会いに行くわけにはいかないし…また、情けない姿を見られるのは、さすがに…嫌だ。
俺はほんの数秒前に通り過ぎたコンビニへと踵を返した。
自動ドアが開いた途端、男女の揉める姿が…というより、いちゃつく姿が眼に入り、
俺は、本日何度目かの溜め息をつき、一旦店を出ようとしたが…
ふと…なにか気になって、振り返り…呆然とした。
小柄なカップル…
見様によっては、確かに微笑ましいと言っても良いカップルだ。
ストライプの同じ服装…
男は黒い髪を、ワックスで固め…どうやら硬派を気取っているようだが…
それはいい。
問題は…
あの…ふわふわで茶色い、お団子頭だ!!
店内で…あの子が男と…いちゃついている?!
ムッとした。
「葉月ちゃんはまだ…子供なんだぞ。」
と呟き、横にあった物を掴むと、レジの二人の下に
「会計…」と言って、差し出した。
葉月ちゃんは、大きな瞳をかたどる長い睫を、何度も瞬かせると…
「…久住さん?」と言って、満面の笑みで俺を見た、その表情に、俺は…少し気分を良くして、黒い髪をワックスで固めた男に眼を移すと…男は微妙な顔で俺を見て…
「…これ、購入されるんですか?」と言って、俺を哀れむような眼で見た。
こいつ…なんで哀れむように俺を見てんだ…いや、この場面なら…逆だろう?!葉月ちゃんの関心を取られたんだから、俺がお前を哀れんで見る場面だろう。
なんだか、納得いかない男の表情に、俺は眉を顰め
「あぁ…」と言って、差し出した商品を見て…固まった。
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「葉月さんの知り合いって…なんか…残念な人、多いですよね。」
黒い髪をワックスで固めた男はそう言って、固まった俺の手元から商品を取ると、
ピッ!
「332円です。」と言いながら、丁寧に紙の袋に入れ、
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俺に…生理用品を差し出した。




