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俺がエルフを殺した理由~ユートピアに転生したと思ったら、この世界ちょっとダメかもしれない~  作者: フローライト


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第11話 超電導武器

「母さん、おはよう」

「あ、おはようシンメ。今ね、ちょうどスープを……あれ?私スープを作ったはずなのに、もう食べちゃった?」

「……うん。美味しかったよ」

「そう?それならよかったけど」


 キッチンに立っていた母さん——ミキ・セードリフは首を傾げている。

 ここ数年、母さんはこういうちょっとした物忘れが増えていた。

 若々しく綺麗な顔とは裏腹に、脳の老化はずいぶん進んでしまっているようだ。

 それでも母さんは、NORNの記憶補助や認知補正を使って、手料理を作ってくれる。


「今日はイオちゃんとデート……じゃないみたいね。ケレスのイベント?」

「まあ、そんなとこ。今日は帰りが遅くなると思うから、夕食は外で食べてくるよ」

「はーい。シンメ、がんばってね」

 

 母さんはそう言って、俺のポケットに『アルカ入りチョコレート』を滑り込ませてきた。

 これ、美味いんだよな。


「ありがとう、行ってくるよ」

 

 たとえ機密作戦じゃなかったとしても、心配性の母さんに本当のことは言えない。

 最悪の場合、俺の人格データをコピーしたヒューマノイドが母さんと暮らすよう手配してある。

 それでも母さんを独りにする気は更々ない。

 必ず生きて帰らないとな。


 ◇ ◇ ◇


 手配された移動用ポッドが無機質な地下施設に到着した。

 そこにはすでに4人の男女が集まっていた。

 人間が2人。エルフが2人。

 昨晩確認したプロフィール通りの人物たちだ。

 人間側は、電磁タトゥーが特徴的な、危険な雰囲気をまとう男が"ルーポ"、いかにも力自慢といった大柄な男が"アグス"。

 エルフは、神経質そうな雰囲気の女性"ケルマード"、そして指揮官のファルクスだ。

 人間とエルフ……少しぴりついた空気を感じる。

 待たせたことを詫びようか迷っている俺に、顔に幾何学模様のタトゥーを光らせた男——ルーポがニカッと笑って声をかけてきた。

 

「これで全員揃ったってわけか。あんた知ってるぜ。ケレスの選手だろ?」

「時間がないんだから無駄話はやめてちょうだい」


 俺が答えるより前に、ケルマードが口をはさむ。

 案の定、一触即発の空気だ。


「まあ待ちなさいケルマード。これから一緒にやっていく仲間なんだから、お互いに敬意を持って接してくれ」

 

 ルーポが言い返す前にファルクスが割って入る。

 やっぱりまとめ上げるのは大変そうだ。


「とはいえ時間がないのも事実だ。まずはGAIAのラボから届いた兵装の確認をしよう。まずは外骨格スーツを着てくれ」


 ファルクスが指差した壁には、それぞれの名前が書かれた扉があった。

 扉の奥は部屋になっており、大型の自動装着機が設置されている。

 NORNに案内されるがまま、服を脱いで機械の前に立つと、段階的にスーツが装着されていった。

 外骨格スーツと聞いてゴツいものを想像していたが、肌にぴったりと密着するゲル状の黒いアンダースーツに、主要な関節やバイタル部分だけを流線型の青い装甲が覆う、かなりスマートなデザインだ。

 一瞬だけ締め付けられる感覚があったが、まるで自分の皮膚がアップデートされたかのように馴染んだ。

 部屋から出て跳ねたり四肢を伸ばしたりして準備運動をこなしていると、やがて全員が着替えを終えて集まってきた。


「演習場はこっちだ。中でそれぞれの能力に適した武器を配布する」

「っしゃあ!いよいよって感じだな」

「あぁ。腕がなるぜ」


 興奮するルーポとアグスに対し、ケルマードは「やれやれ」といった冷ややかな視線を送る。

 俺はというと……表面上は冷静を装いつつも、内心は大興奮していた。

 どんな武器が俺を待っているんだろう。

 早く手に持ちたい、振り回したい!

 そんな心の声が漏れていたのか、俺の顔をちらりと見ると、ファルクスはニヤリと不敵に笑った。


 演習場に入ると、スポットライトに照らされた5つの台座と、その上に未来感溢れる武器が安置されていた。

 なかなかに憎い演出をしてくれる。

 その台座の中で、1つだけが俺の視界の中で青い光を放っていた。

 自分の武器がわかるようにNORNがそれぞれに見せているサインだろう。

 台座の前に立つと、俺用の武器が2つ用意されていた。

 

「美しいだろう?これぞGAIAの叡智が到達した究極の矛であり盾——完全不可侵の超電導武器だ」

 

 1つは日本刀のような形状の剣、もう1つは……手裏剣の中央に球体がついたような武器だ。

 刀の柄を除いて、透き通った青色をしている。

 謎の玉はともかく、刀は嬉しい。

 俺の中で眠る日本人の魂が、歓喜の叫びを上げている。

 

「なぁ、チョウデンドウ?武器って何なんだ?能書きはいいから早く使い方教えてくれよ!」

 

 ルーポは両手に鉤爪型の武器を装着し、待ち切れないという様子で説明を催促する。


「ああ、俺も早く知りたい」

 

 俺達の声に満足げな表情を見せるファルクスは、彼の武器——野太刀のような長い刀を手に持った。

 

「百聞は一見に如かず。まずは私のデモを見てくれ。ケルマード、解説は頼んだよ」

「はぁ?なんで私がそんな面倒なことを——」


 ——ゥ――ン、ゥ――ン。

 

 けたたましいアラート音と同時に、演習場の壁がスライドし、無数の銃口が出現した。

 

「はぁ、仕方ないわね。細かい理論的なことはどうせあなたたちには分からないでしょうから省くわよ。まずは武器を袖口のバッテリーに接続して、通電状態にするの」


 ファルクスが袖のデバイスを操作すると、1メートルを超える長い刀身が眩い青白色に発光した。


 ——パァーン。

 

 壁の固定砲台から発射音が響く。

 放たれた高威力の銃弾がファルクスの刀に命中した瞬間、刀の光が一層激しく輝いた。


「ハグレは人間には直接攻撃できない制約があるけれど、武器には容赦なく攻撃してくるわ。だから銃やレーザーで攻撃されても絶対に壊れない武器が必要だったの。これは室温超伝導の固体結晶素材で作られていて、受けた衝撃や熱のエネルギーを、即座に100%電気エネルギーへと変換・吸収する構造になっているわ」


 ——ガガガガガガ!

 

 容赦ない銃撃の嵐がファルクスを襲う。

 しかし、降り注ぐ銃弾を刀で受け止めても、刀身が削られるどころか、衝撃で吹き飛ばされる気配すら一切ない。

 物理法則を無視したような異様な光景だ。

 

「袖口のバッテリーが電流を制御しているから、キャパオーバーを起こすこともないわ。つまり簡単に言えば、何をされても絶対に壊れない武器ってわけ」

「なるほど、それはすげぇ」

「ああ。革命的だ……」


 こいつら絶対わかってないだろ。

 まあ、俺もわからないが……いや、壊れないことはわかった。


「そして、こちらから攻撃を当てる瞬間、バッテリーから莫大な電気エネルギーを一気に刀身へ流し、強力な磁場で閉じ込めた超出力のプラズマを展開するわ」

 

 ケルマードの言葉と同時に、ファルクスが輝く刀を一閃させた。

 頑丈な金属製の台座が、まるで豆腐でも切るかのようにスパリと両断される。

 

「「おおおーー!!」」

 

 俺たち男連中は思わず拳を突き上げて湧き上がった。

 

「全く、こんなバカばかり集めてどうするのよ……繊細な作戦だっていうのに」


 ケルマードは心の底から呆れたような顔をしている。

 よくわからなかったけど、解説ありがとうな。

 

「皆早く武器を振りたくてウズウズしている顔だな。お望み通り、早速演習に入ろうじゃないか。各自武器を持ち、NORNの指示通り操作してくれ」


 俺は超電導刀と、刃のついた謎の玉を通電させた。

 視界に既視感のあるウィンドウが表示される。

 視界共有。

 回転。

 あ、これクラゲちゃんのインタフェースと同じだ。

 なるほど、回転させた刃で遠距離攻撃ができるってことか。


「動きながらサターンを操作するのは難しいの。あなたに使いこなせるかしらね。近接用の刀と合わせて二刀流だなんて、今回ばかりはGAIAの適性判断を疑うわ」

 

 ケルマードが同じ武器——サターンをふわふわと浮かべながら声をかけてきた。


「サターン……刃を回転させていると土星のように見えるからか?」

「ええ、いいネーミングセンスでしょ?」

「はは。ケルマードが名付けたのか。まあ悪くないな」

「で、使いこなせるの?」

 

 クラゲちゃんで慣れてるとはいえ、戦闘中にどれだけ操作できるかはやってみないとわからない。

 心理的負担がかかると二重思考が鈍ったりするからな。

 とりあえず俺も動かしてみよう。

 

「うお、思ったより速いな。酔いそうだ」

「しっかりしなさいよ!これがどれだけ大事な武器かわかってるの?」

「遠距離攻撃は大事だよな……いや待てよ、ハグレの拠点はジャミングされてると聞いたが、そんな環境でもサターンは操作できるのか?」

「そう。ECM装置を壊さなければ通常の電波通信は使えない。だから空間光無線を使うわ」

「……操作者とサターンの間に光をさえぎる物があると使えないってことか」

「少しは考える頭があるようで安心したわ。演習でも光無線を使うから、しっかり軌道を確認しなさい」


 ケルマードの言葉に頷きつつ、俺はふと疑問がわいた。

 

「なあ、それなら通信の手間を省いて、サターン自体に自律型戦闘AIでも積めばいいんじゃないか? 俺たちが命がけで突入しなくても、自律サターンだけをハグレの拠点に大量に放り込めば、安全に殲滅できるだろ」

 

 だが、俺の提案にケルマードは呆れたように鼻を鳴らした。

 

「ハグレが手加減しなかったら、いくらサターンでも一瞬で破壊されるわ。言ってる意味はわかるわよね?」

「俺たちが近くにいることが使用条件ってことか」

「そう。だからあまり遠くで操作しようと思わないことね。それに自律型AIを使わない理由は、ハッキング対策もあるわ。これが奪われたら私たちは壊滅よ」


 ——ドガァン!


 凄まじい轟音と共に、演習場の床が文字通り跳ね上がった。

 体格のいいアグスが巨大な超電導ハンマーを地面に打ち付けたようだ。

 おそらく鉄製の地面が大きく窪み、亀裂が入っている。

 なんというイカれた破壊力だ。


「出力30%でこれかよ……!」


 一方ルーポは高く跳躍しすぎたらしく、天井に思い切り頭をぶつけて「ううっ……」とうずくまっていた。

 大丈夫だろうか……いろんな意味で。

 それにしても、あの天井までは優に10メートルはありそうだが、この外骨格スーツの高い機動性に早く俺も慣れておかないとマズいな 。

 

「今からこの演習場は戦場を再現した疑似空間となる。武装戦力をすべて破壊しろ。ただし、NORNが指定した味方ヒューマノイド、および識別された危険物は破壊禁止だ」

 

 四方の壁から、実弾重火器、光学レーザー、さらには捕獲用の拘束ネット兵器などが次々と迫り出してくる。

 奥からは無数のヒューマノイドや小型戦車が走り出してきた。

 

「それでは作戦開始!」

 

 ファルクスの号令に応えるように、俺たち6人は一斉に散らばった。

【NORNシステム警告:バイタルエラーを検知】


《警告:対象読者の生体ステータスをスキャンしました。重大な眼精疲労、および肩こりを検出。血流低下に伴い、このままだと次回の更新までに身体機能の低下が発生するリスクがあります》

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