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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第54話 その夜

ここまで読んでいただきありがとうございます。


第54話では、これまで積み重ねてきたものが一つの形となり、

大きなチャンスが訪れます。


音楽としての評価、環境の変化、そして新たなスタート。


そのすべてが重なった中で、

2人の関係にも大きな転機が訪れます。


静かで、でも確かに特別な一夜。


物語の中でも大切な回となっています。

変化は、突然やってきた。


「……え?」


 レイナがスマホを見つめたまま固まる。


「どうした?」


 恒一が覗き込む。


「……タイアップ」


「は?」


「アニメの……エンディングテーマ」


 数秒、沈黙が落ちる。


 現実を理解するのに、少し時間がかかった。


「……マジか」


 恒一が低く言う。


 佐倉も画面を覗き込む。


「すごい……」


 そこに書かれているのは、正式なオファー。


 人気アニメの制作側からの連絡だった。


「『そのままでいい』を使いたいって……」


 レイナの声がわずかに震える。


 夢じゃない。


 ここまで来た。



「名前、どうする?」


 佐倉が現実的に言う。


「レイナの名前は、まだ出さない方がいい」


 3人とも、すぐに理解する。


 今はまだ、“正体”は伏せるべきだ。


「……変える?」


 レイナが言う。


 少しだけ考えて、静かに口を開く。


「LUNA……とか」


 ぽつりと出た名前。


 柔らかいのに、どこか芯がある。


 夜のようで、光もある。


「……いいな」


 恒一が頷く。


「雰囲気合ってる」


「うん、いいと思う」


 佐倉も笑う。


「じゃあ、それでいこう」



 その夜。


 ささやかな乾杯をした。


「初仕事、おめでとう」


 佐倉がグラスを掲げる。


「おめでとう」


 恒一も続く。


 レイナは少し照れながら笑う。


「……ありがとう」


 グラスが軽く触れる。


 小さな音。


 でも——


 ここから何かが始まる音だった。



 時間はゆっくり流れる。


 何気ない会話。


 笑い声。


 でも、その奥には確かな充実感があった。


 やってきたことが、形になっている。


 それが何より嬉しかった。



 やがて、佐倉が時計を見る。


「……そろそろ、帰るね」


「え?」


 レイナが少し驚く。


「いいの?」


「うん」


 佐倉は少しだけ笑う。


 どこか、察したような顔で。


「今日は……大丈夫そうだし」


 軽く言う。


 深い意味は言わない。


 でも、ちゃんと伝わる。


「……そっか」


 レイナも、それ以上は聞かない。


「気をつけてね」


「うん」


 佐倉は恒一を見る。


 一瞬だけ目が合う。


 ほんの少しだけ、意味のある視線。


「じゃあね」


 ドアが閉まる。



 静かになる。


 部屋の空気が、少しだけ変わる。



 リビングに残ったのは、2人だけ。


 さっきまでとは違う沈黙。


 でも、不思議と居心地は悪くない。



「……すごいな」


 恒一が言う。


「ここまで来たな」


「うん」


 レイナは小さく頷く。


 少し間。


 言葉を探すように、ゆっくり息を吸う。



「……ね」


「ん?」


「ここまで来れたのさ」


 レイナがゆっくり言う。


「恒一がいたからだよ」


 まっすぐな目。


 逃げ場はない。



 恒一は少しだけ視線を逸らす。


「……違うだろ」


「違わない」


 即答だった。


「ずっと一緒にいてくれたじゃん」


「支えてくれたし」


「……助けてくれた」


 一つ一つ、確かめるように言う。



 レイナが、一歩近づく。


 距離が縮まる。


 ほんの少しで、触れられる距離。



「……私さ」


 声が少し震える。


 でも、止まらない。


「ちゃんと決めたから」


 恒一は何も言わない。


 ただ、聞いている。



「好き」


 その一言。


 短くて、真っ直ぐで、逃げ場のない言葉。



 時間が止まる。


 心臓の音だけが、やけに大きく聞こえる。



 恒一は目を閉じる。


 一瞬だけ。


 考える。


 全部。


 年齢。


 立場。


 未来。


 全部。



 そして——


 目を開ける。



「……わかってる」


 静かに言う。


 それだけで十分だった。



 一歩、近づく。


 距離がゼロになる。



 レイナの手が、そっと恒一の服を掴む。


 離れないように。



 恒一は、そのまま抱き寄せる。


 強くもなく、弱くもなく。


 自然に。



「……いいのかよ」


 低く、確認するように聞く。


「うん」


 迷いのない声。



 それ以上の言葉はいらなかった。



 ゆっくりと、顔を近づける。


 ほんの少しの距離。


 そして——



 夜は、静かに深くなっていった。



 朝。


 カーテンの隙間から光が差し込む。


 柔らかい光。


 静かな空間。



 レイナはゆっくり目を覚ます。


 少しだけぼんやりしたまま、隣を見る。



 恒一がいる。



 それだけで、少しだけ安心する。


 小さく笑う。



「……おはよ」


 小さな声。



 恒一もゆっくり目を開ける。


「……おはよ」



 短い会話。


 でも、昨日とは違う。


 確実に、何かが変わっている。



 レイナは少しだけ近づく。


 自然に。


 当たり前のように。



 恒一も、それを拒まない。



 そのとき。


 視界に浮かぶ。



「……1」


「幸福」



 短い言葉。



 恒一はそれを見つめる。


 少しだけ、目を細める。



「……」



 何も言わない。



 今はまだ、考えない。



 この時間だけは。



 ただ——


 この幸せを、受け入れていた。


第54話を読んでいただきありがとうございました。


今回のテーマは「受け入れる」ということです。


想いを伝える側と、受け止める側。


どちらにも覚悟が必要で、

その一歩は簡単なものではありません。


それでも、言葉にしたことで、

そして受け入れたことで、

2人の関係は確実に変わりました。


ただの支え合いではなく、

より深い結びつきへ。


一方で、恒一の中にはまだ消えない葛藤があります。


そして“幸福”という言葉。


それが意味するものが、

この先どう影響していくのか——

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