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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第53話 そのままでいい

ここまで読んでいただきありがとうございます。


第53話では、レイナの楽曲が少しずつ広がり、

確かな手応えを感じ始める回となっています。


派手な成功ではないけれど、

一歩一歩積み上げてきたものが形になり始める——


そんな“兆し”の回です。


そして同時に、

レイナの中である感情がはっきりと形になります。


仕事と感情、両方が動き出す重要な一話です。


最初の曲は、静かに広がっていった。


 タイトルは——


「夜の余白」


 完成した動画とともに投稿されたそれは、派手さはない。


 だが、確実に届いていた。


 再生数は、少しずつ伸びていく。


 コメントも増えていく。


『雰囲気いい』


『落ち着く』


『声が好き』


 爆発ではない。


 でも、ちゃんと届いている。


「……いいスタートだね」


 レイナがスマホを見ながら言う。


 恒一も横から覗き込む。


「上出来だろ」


「うん」


 自然に笑う。


 肩の力が抜けた、素直な笑顔だった。



 数日後。


 2曲目が完成する。


 タイトルは——


「そのままでいい」


 この曲は、少し違った。


 レイナ自身が強くこだわった一曲。


 録音のときから、空気が違っていた。


「……これ、出していいのかな」


 レイナがぽつりと言う。


「なんで?」


「ちょっと……近すぎる気がして」


 誰に、とは言わない。


 でも、恒一にはわかる。


「いいんじゃない」


 あえて軽く言う。


「それが歌だろ」


 レイナは少し黙って、頷く。


「……うん」



 投稿。


 最初は、いつも通り。


 ゆっくりと再生が伸びていく。


 だが——


 数時間後。


「……あれ?」


 レイナがスマホを見る。


 再生数の伸び方が明らかに違う。


 コメントの勢いも増えている。


『これやばい』


『泣いた』


『なんか刺さる』


『誰に向けてるのこれ』


 拡散が始まっていた。


「……すごい」


 レイナが小さくつぶやく。


 恒一も画面を見る。


 わかる。


 これは——当たっている。


「……来たな」


 ぽつりと呟く。


 レイナは少しだけ笑う。


「うん」


 でも、その表情は少しだけ照れていた。



 夜。


 今日は佐倉が泊まる日だった。


 3人で軽く食事をして、それぞれの部屋へ。


 レイナの部屋。


 ベッドに座りながら、スマホを見ている。


 隣には佐倉。


「……伸びてるね」


「うん……ちょっと怖いくらい」


「いいことじゃん」


 佐倉は軽く笑う。


「ちゃんと届いてるってことだし」


 レイナはスマホを見たまま、少しだけ黙る。


 指が止まる。


「……ね、佐倉さん」


「ん?」


「変なこと聞いていい?」


「いいよ」


 少し間。


 そして——


「私さ……本気なんだ」


 佐倉の手が止まる。


「……黒沢さんのこと」


「……え?」


 思わず声が出る。


 レイナは前を見たまま続ける。


「最初はさ、助けてもらってばっかで」


「すごい人だなって思ってて」


「でも……気づいたら」


 少し笑う。


「いないとダメになってた」


 佐倉は言葉を失う。


 想像はしていた。


 でもここまでとは思っていなかった。


「……マジで?」


「うん」


 迷いのない返事だった。



 少しの沈黙。


 佐倉がふっと息を吐く。


「……あの曲さ」


「え?」


「『そのままでいい』」


 レイナの肩が少しだけ動く。


「……黒沢さんのことだよね?」


 一瞬、空気が止まる。


 レイナは目を伏せる。


 そして、ゆっくり頷く。


「……うん」


 小さく、でもはっきりと。



「……やっぱりか」


 佐倉が天井を見る。


「なんとなくそんな気はしてたけど」


「……バレてた?」


「バレるって」


 即答だった。


「最近めっちゃわかりやすいもん」


「え、うそ」


「うそじゃない」


 佐倉は笑う。


「顔違うし」


「楽しそうだし」


 レイナは少しだけ照れる。


「……そっか」


「そっか、じゃないでしょ」


 少しだけ真面目な顔になる。


「で、どうすんの?」


 レイナは少しだけ考える。


 でも、すぐに答える。


「ちゃんと伝える」


 まっすぐに言う。


「逃げたくない」


 その目は、揺れていなかった。



 佐倉は少しだけ黙って、それから笑う。


「……いいじゃん」


「え?」


「レイナらしい」


 軽く肩を叩く。


「でもさ」


「うん?」


「相手、あの人だよ?」


「うん」


「めんどくさいぞ、あれ」


 レイナが吹き出す。


「わかる」


「でしょ?」


 2人で笑う。



「でもさ」


 レイナがぽつりと言う。


「それでもいいんだよね」


 佐倉は少しだけ優しく頷く。


「……うん」


「たぶん、そういうもんなんだと思う」



 その頃。


 リビング。


 恒一は一人、ソファに座っていた。


 スマホの画面には、再生数が伸び続けている曲。


「……すげぇな」


 小さくつぶやく。


 でも。


 頭の中は別のことでいっぱいだった。


 さっきの距離。


 抱きしめた感触。


 あの表情。


「……まずいな」


 苦笑する。


 完全に、意識している。


 そのとき。


 視界に浮かぶ。


「……3」


「加速」


「……?」


 短い言葉。


 意味はまだわからない。


 でも——


 何かが、一気に動き始めている気がした。


第53話を読んでいただきありがとうございました。


今回のテーマは「本気」です。


レイナの気持ちは、ここで完全に確定しました。


迷いではなく、憧れでもなく、

しっかりとした“意志”としての想い。


そして、それが作品として外に出たことで、

思わぬ反響へと繋がっていきます。


歌は嘘をつけない。


だからこそ、人の心に届く。


その強さが少し見えた回でもあります。


一方で恒一は、まだ葛藤の中にいます。


気持ちは動いている。

でも、それをどう扱うかがわからない。


この“ズレ”が、これからどうなるのか。

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