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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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41/58

第41話 崩れる前に

ここまで読んでいただきありがとうございます。


第41話では、恒一の“力”に明確な変化が現れます。


これまで見えていたのは数字だけ。


しかし今回は、そこに意味を持つ“言葉”が加わります。


より具体的に。


より危険に。


力は確実に進化しています。


そしてその変化は、

恒一を一つの選択へと導きます。


昼下がり。


 恒一はカフェの窓際に座り、ぼんやりと外を眺めていた。


 行き交う人々。


 その頭上に、時折浮かぶ数字。


 もう驚きはない。


「……慣れって怖ぇな」


 小さくつぶやく。


 数字は、確かに意味を持っている。


 それを理解することにも、慣れてきた。


 だが——


「……これ」


 さっき見えたもの。


 あれは違った。


 数字だけじゃない。


 その横に。


 “文字”があった。


⸻


 数分前。


 一人の男。


 頭上に浮かんだ表示。


 「3 遅」


 一瞬だけ。


 だが確かに見えた。


「……なんだよ、あれ」


 思い返す。


 そして。


 その直後。


 駅のアナウンス。


『人身事故の影響で、電車が遅れています』


「……遅」


 ぴたりと一致する。


「……進化、してるのか」


 小さくつぶやく。


 数字だけじゃない。


 意味が、より具体的になっている。


⸻


 スマホを見る。


 何気なく開いたSNS。


 レイナの投稿。


 今日も仕事。


 順調。


 笑顔。


「……ほんと、すげぇな」


 思わず笑う。


 そのときだった。


 画面越しに。


 ふと、違和感。


「……?」


 目を細める。


 レイナの顔。


 その周辺に。


 一瞬だけ——


 表示が浮かぶ。


 「1 崩」


⸻


「……は?」


 思わず声が漏れる。


 すぐに消える。


 だが、見間違いじゃない。


「……崩?」


 意味を考える。


 崩れる。


 何が?


 仕事か。


 体調か。


 それとも——


「……嫌な感じだな」


 胸の奥がざわつく。


 ただの予感じゃない。


 これまでの流れから考えれば。


 “何かが起きる”


⸻


 スマホを握る。


 連絡するか。


 迷う。


 これは。


 使うことになる。


 能力を。


「……どうする」


 自分に問いかける。


 レイナのため。


 そう思えばいい。


 でも。


 確信はない。


 これが本当に安全なのか。


「……くそ」


 舌打ちする。


 考えてる時間はない。


⸻


 発信。


⸻


「もしもし?」


 レイナの声。


「……今どこだ」


「え?」


「仕事終わった?」


「ちょうど終わったとこ」


「これから、レンさんと打ち合わせ」


 その一言で。


 嫌な予感が強くなる。


「……場所は」


「ホテルのラウンジ」


⸻


 “崩”


⸻


 頭の中で、文字が浮かぶ。


「……そこ、やめとけ」


「え?」


「理由はいいから」


「人多いとこ行け」


 レイナは少し黙る。


「……なに、どうしたの?」


「……なんとなくだ」


 嘘じゃない。


 でも全部じゃない。


⸻


「……わかった」


 少しだけ、真剣な声。


「気をつける」


⸻


 通話を切る。


 恒一は立ち上がる。


「……念のため行くか」


 完全には安心できない。


 体が勝手に動く。


⸻


 ホテル前。


 少し離れた場所。


 恒一は様子を見る。


 しばらくして。


 レイナが来る。


 そして。


 神代レン。


 笑顔。


 自然な会話。


 だが——


「……出てるな」


 レンの頭上。


 数字と。


 文字。


 「2 誘」


⸻


「……誘?」


 意味は明確だった。


⸻


 2人は中へ入る。


 恒一も距離を保って入る。


 視線を切らさない。


⸻


 ラウンジ。


 会話。


 穏やか。


 だが。


 徐々に。


 距離が近づく。


 レンの手が、自然にレイナに触れる。


 その流れ。


 違和感。


⸻


「……来るな」


 恒一がつぶやく。


 そのとき。


 レンが立ち上がる。


「ちょっと上、いい?」


 軽い調子。


 だが意図は明確。


⸻


 レイナは一瞬だけ迷う。


 その瞬間。


 恒一は動いた。


⸻


 スマホ。


 カメラ。


 シャッター。


 レンの手。


 距離。


 明確な“証拠”を押さえる。


⸻


「すみません」


 恒一が声をかける。


 2人が振り向く。


「……あれ、恒一さん?」


 レイナが驚く。


 レンは一瞬だけ表情を変える。


 すぐに笑顔に戻る。


「どうしたの?」


⸻


「……仕事の話なら、ここでいいでしょ」


 静かに言う。


 スマホを少しだけ見せる。


 さっきの写真。


⸻


 レンの目が、一瞬だけ細くなる。


⸻


「……なるほどね」


 小さく笑う。


「今日はやめとこうか」


 あっさり引く。


 だが。


 その目は、笑っていない。


⸻


 レイナは状況を理解しきれていない。


 ただ。


 恒一を見る。


「……助かった?」


「……まあな」


⸻


 外に出る。


 空気が軽い。


「……なんだったの?」


 レイナが聞く。


「……勘だ」


 短く答える。


 それ以上は言わない。


⸻


 レイナは少しだけ笑う。


「ありがと」


 その一言。


 それだけで——


 十分だった。


⸻


 その夜。


 恒一は部屋で座っていた。


 頭が、少し重い。


「……ん?」


 軽い違和感。


 こめかみの奥。


 ズキ、と痛む。


「……気のせいか」


 そう思おうとする。


 だが。


 ノートを開く。


 今日のことを書く。


 そして。


 ふと気づく。


 自分の手。


 震えている。


⸻


「……使いすぎか?」


 小さくつぶやく。


 あのとき。


 かなり集中した。


 無理に“読んだ”


 その結果——


⸻


 スマホが震える。


 ニュース。


『某ホテルで軽いトラブル』


 内容は小さい。


 大したことはない。


 だが。


「……ズレたか」


 ぽつりとつぶやく。


 レイナは無事。


 でも。


 何かは起きている。


⸻


 目を閉じる。


 静かな部屋。


 だが。


 確実に理解する。


⸻


「……ただじゃ済まねぇな、この力」


第41話を読んでいただきありがとうございました。


今回のテーマは「進化と代償の兆し」です。


恒一は初めて、

自分の意思でこの力を使い、誰かを守りました。


その結果、レイナは無事でした。


ですが——


本当に何も起きていなかったのか。


ほんの小さなズレ。


小さなトラブル。


そして、恒一自身に現れ始めた違和感。


この力は、確かに便利です。


しかし同時に、

何かを引き換えにしている可能性も見え始めています。

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