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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第38話 もう一つの道

ここまで読んでいただきありがとうございます。


第38話から、物語は新たな局面に入ります。


レイナが新しい環境へ進んだ一方で、

恒一もまた、自分の道を模索し始めます。


何もない状態からの再スタート。


年齢や状況を考えれば簡単ではありませんが、

それでも前に進もうとする姿を描いています。


そして今回は、

あの“力”の使い方についても触れていきます。

事務所は、静かだった。


 机も、椅子も、そのまま。


 ただ、人がいない。


 それだけで、まったく別の場所みたいに見える。


 恒一は、部屋の中央に立ったまま動かなかった。


「……終わり、か」


 小さくつぶやく。


 誰もいない空間に、声だけが残る。


 レイナも。


 佐倉も。


 もうここにはいない。


 残っているのは、自分だけだ。


 ゆっくりと椅子に座る。


 机の上に置かれた通帳を手に取る。


「……3000万」


 6億あった金。


 母のために使い、残った額。


 普通に考えれば、十分すぎる金額だ。


 だが——


「……これで終わるのもな」


 ぽつりとこぼす。


 年齢は49歳。


 若くはない。


 でも、終わるには早い気もする。


「……何やるかな」


 天井を見上げる。


 思いつくものは、いくつかある。


 だが、どれもピンと来ない。


 その中で、ひとつだけ引っかかるものがあった。


「……競馬か」


 思わず笑う。


「結局そこかよ」


 昔からやってきた。


 勝ったり、負けたり。


 でも、今は違う。


 あの“力”がある。


「……いや」


 少し考える。


「使うのか?」


 ここが問題だった。


 あの能力。


 数字が見える。


 勝つ結果が、浮かぶ。


 あれを使えば——


 簡単に当てられる。


 でも。


「……買わなければいいのか?」


 ふと浮かぶ。


 自分では買わない。


 予想だけ出す。


 それを売る。


「……それなら」


 能力を“直接使ったことにはならない”のか?


 少しだけ考える。


 グレーだ。


 かなりグレー。


 でも。


「……どうなんだろうな」


 完全にアウトなのか。


 それとも、セーフなのか。


 わからない。


 ただ——


 興味はある。


「……一回だけやってみるか」


 小さく言う。


 試すだけ。


 本気じゃない。


 そう自分に言い聞かせる。


 スマホを取り出す。


 メモを開く。


 次のレース。


 出走馬。


 頭の中で、あの感覚を思い出す。


 集中する。


 浮かぶかどうか。


 しばらく沈黙。


 そして——


「……きた」


 数字が浮かぶ。


 組み合わせ。


 はっきりと。


「……やっぱ出るか」


 苦笑する。


 これが当たるのは、もうわかっている。


 問題は——


 その後だ。


「……これ、出していいのか」


 メモを見つめる。


 指が止まる。


 その瞬間。


 頭に浮かぶのは、レイナの顔だった。


「……影響、出るか?」


 今までの流れ。


 自分にいいことが起きると——


 周りに何かが起きる。


 完全には確信していない。


 でも、感じている。


「……やめとくか」


 一瞬、そう思う。


 だが。


 もう一つの考えが出る。


「……相談するか」


 スマホを握る。


 レイナの名前。


 少しだけ迷う。


 今はもう、前みたいな距離じゃない。


 でも。


「……これくらいはいいだろ」


 小さく言う。


 発信ボタンを押す。



「もしもし」


 レイナの声。


 少しだけ遠く感じる。


「……悪い、忙しい?」


「大丈夫」


「どうしたの?」


 いつも通りの声。


 でも、どこか違う。


 環境が変わったからかもしれない。


「……ちょっと聞きたいことあってさ」


「うん」


「俺さ」


 少し間。


「競馬の予想、やろうかと思ってる」


「え?」


 少し驚いた声。


「予想?」


「そう」


「自分では買わない」


「予想だけ出す」


 説明する。


「……それで?」


「そのときさ」


 少し迷う。


 でも、言う。


「……あの力、使ったらどうなると思う?」


 沈黙。


 レイナも、すぐには答えない。


「……どういうこと?」


「だから」


「俺が得するわけじゃない」


「でも、結果は知ってる状態」


「それって……どうなんだろうなって」


 正直な疑問だった。


 しばらく沈黙。


 そして——


「……正直、わかんない」


 レイナが言う。


「でも」


 少し間。


「今までの感じだと……」


 言葉を選ぶ。


「何かしらは起きる気がする」


 はっきりとは言わない。


 でも、否定もしない。


 恒一は小さく頷く。


「……だよな」


「でも」


 レイナが続ける。


「試すのもアリだと思う」


 少し意外な言葉だった。


「え?」


「ちゃんと見ないと、わかんないし」


「ただし」


 少しだけ強くなる。


「慎重に」


「……お前に影響出るかもしれないしな」


 恒一が言う。


「うん」


 短く返す。


 でも、その声は少しだけ真剣だった。



 通話を切る。


 部屋はまた静かになる。


 手元のメモを見る。


 数字。


 結果。


 確実な未来。


「……やるか」


 小さく言う。


 これは——


 ただの予想じゃない。


 もう一つの勝負。


 そして。


 この力の、本当の意味を知るための一歩だった。


第38話を読んでいただきありがとうございました。


今回のテーマは「再出発と選択」です。


恒一は一人になり、

改めて自分にできることと向き合います。


その中で浮かんだのが、競馬という選択。


ただし、そこには一つの問題があります。


“能力をどう使うのか”


使うのか、使わないのか。


そして、それは誰に影響するのか。


まだ明確な答えはありません。


だからこそ、試すしかない。

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