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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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10/19

第10話 足りない

第10話を読んでいただきありがとうございます。


ここから、物語の流れが大きく変わります。

これまでの“当たり”や“違和感”が、現実の問題と繋がる回です。


ぜひ、その変化を感じていただけたら嬉しいです。

昼過ぎだった。


 スマホが鳴ったのは、珍しいことじゃない。


 だが、その着信音がやけに嫌な感じがした。


「……誰だ」


 画面を見る。


 知らない番号。


 少しだけ迷ってから、通話ボタンを押す。


「……もしもし」


『黒沢さんのご家族の方ですか?』


 女の声。


 落ち着いているが、どこか事務的な響き。


「……そうだけど」


『こちら○○病院です。お母様が——』



 それから先は、よく覚えていない。



 気づけば、病院にいた。


 白い壁。


 消毒の匂い。


 静かすぎる廊下。


「……」


 足が重い。


 現実感がない。


 受付で名前を伝え、案内される。



 ベッドの上に、母がいた。


 酸素マスク。


 点滴。


 目は閉じている。


「……母さん」


 声が、少しだけ震えた。


 返事はない。



「ご家族の方ですね」


 振り返ると、医者が立っていた。


 白衣。


 冷静な目。


「……はい」


「少しお話よろしいでしょうか」



 別室。


 椅子に座る。


 テーブルを挟んで、医者と向き合う。


「お母様ですが——」


 淡々とした説明。


 難しい言葉。


 専門用語。


 だが、要点だけはすぐにわかった。



「……重い、んですか」


「はい」


 短い返答。


「現状では、かなり厳しい状態です」



 頭が、真っ白になる。


「……助かるんですか」


 やっと出た言葉。



「可能性はあります」


 その一言に、少しだけ息をする。


 だが——


「ただし」


 医者が続ける。


「国内では難しい治療になります」



 嫌な予感がした。



「海外での手術が必要です」


「……」


「成功例はありますが——」


 少しだけ間を置く。


「費用が、非常に高額になります」



 心臓が、ゆっくりと嫌な音を立てる。


「……いくら、ですか」



「最低でも、三億円ほど」



 沈黙。



「……は?」


 思わず声が漏れる。


「三億……?」


「はい」


 淡々とした返答。



 頭の中で、数字が回る。


 三億。


 6億の、半分。



「……そんなの」


 言葉が出ない。


 現実感がない。



「もちろん、すぐに決断が必要というわけではありません」


 医者が続ける。


「ただ——」



「時間がありません」



 その一言で、すべてが現実になる。



 廊下に出る。


 足元が、少しふらつく。


「……三億」


 小さくつぶやく。


 6億ある。


 普通なら、ありえない金額。


 だが今は——


「……足りるのか?」



 手術費用だけじゃない。


 渡航費。


 滞在費。


 その後の治療。



「……全部使うのかよ」


 笑えなかった。



 ベンチに座る。


 頭を抱える。



 6億円。


 人生を変える金。


 何でもできる金。



 そう思っていた。



「……足りねぇじゃねぇか」



 ぽつりとこぼれる。



 そのとき。


 ふと、思い出す。



 競馬。


 数字。


 “見えた”結果。



「……」


 ゆっくりと、顔を上げる。



「……使えってことか?」



 誰に言うでもなく、つぶやく。



 6億円は、ゴールじゃない。


 ただのスタート。



 この状況を、乗り越えるための。



 ズキッ。


「……っ」


 頭に、痛み。


 さっきより、強い。



 だが、今はそんなことどうでもよかった。



「……やるしかねぇな」



 小さく、笑う。



 当てる。


 もっと。


 確実に。



 未来が見えるなら。



「……全部、取る」



 目の奥に、光が宿る。



 黒沢恒一は、初めて——


 “勝つために”力を使うことを決めた。


第10話を読んでいただきありがとうございました。


6億円という大金を手に入れても、

それでも「足りない」と思う状況。


黒沢恒一にとって、この力の意味が大きく変わる瞬間になりました。


これまでは偶然の延長だったものが、

ここからは“選択”と“覚悟”になります。


次回は、その力を本気で使う展開へ。

果たして思い通りにいくのか、それとも——


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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