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48歳、6億当たったら人生が壊れた件 〜底辺おじさんと国民的アイドルの秘密の恋〜  作者: れいじ


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第11話 もう一度

第11話を読んでいただきありがとうございます。


今回は、少し時間が経った後の物語になります。

一度すべてが落ち着いた日常の中で、

再び“何か”が動き出す——そんな回です。


静かな変化を感じていただけたら嬉しいです。

 あれから、1年が経った。


⸻


 黒沢恒一は、以前と変わらない部屋で目を覚ます。


 変わったのは、ひとつだけ。


「……静かだな」


 すべてが、落ち着いていた。


⸻


 母は助かった。


 あのあとすぐに決断し、

 6億円のほとんどを使って治療を受けさせた。


 海外での手術。


 長い入院。


 リハビリ。


 ——そして、回復。


⸻


 すべてが終わった頃には、

 手元に残った金は、3000万円ほどだった。


⸻


「……まあ、十分か」


 ぽつりとつぶやく。


 昔の自分なら、想像もできない金額。


 贅沢しなければ、しばらくは困らない。


⸻


 そして——


 あの“力”は、消えていた。


⸻


 未来が見える感覚も、

 流れを読む違和感も、

 頭に浮かぶ数字も。


⸻


 何も、ない。


⸻


「……あれは、なんだったんだろうな」


 ふと考える。


 だが、すぐにやめる。


 考えても仕方がない。


⸻


 レイナのことも——


 思い出さなくなっていた。


⸻


 忙しかったからかもしれない。


 それとも、時間が流れたからか。


⸻


 とにかく、日常は戻っていた。


⸻


 その日。


 特に理由もなく、外に出た。


 天気がよかったから。


 ただ、それだけ。


⸻


 気づけば、競馬場にいた。


⸻


「……久しぶりだな」


 人のざわめき。


 アナウンス。


 独特の空気。


⸻


 以前は、ここがすべてだった。


 勝つか、負けるか。


 それだけの場所。


⸻


 だが今は——


 少しだけ、違って見えた。


⸻


 適当に席に座る。


 レース表を見る。


 だが、何も感じない。


⸻


「……普通だな」


 苦笑する。


 以前なら、何かしらの“流れ”を感じていた。


 だが今は、本当にただの紙だ。


⸻


 それでも、馬券を少しだけ買う。


 遊び程度。


 負けてもいい額。


⸻


 レースが始まる。


 歓声。


 直線。


 結果。


⸻


 ——外れ。


⸻


「……まあ、こんなもんか」


 あっさりと受け入れる。


 悔しさは、あまりない。


⸻


 それが、少しだけ寂しかった。


⸻


「……帰るか」


 立ち上がる。


⸻


 そのときだった。


⸻


 視界の端に、映る。


⸻


 帽子。


 サングラス。


 人目を避けるような仕草。


⸻


「……」


 足が止まる。


⸻


 見間違えるはずがない。


⸻


「……マジかよ」


⸻


 如月レイナだった。


⸻


 1年前と同じ。


 いや——


 どこか、違う。


⸻


 華やかさはある。


 だが、その奥に、少しだけ影がある。


⸻


 恒一は、少しだけ迷う。


 声をかけるか。


 やめるか。


⸻


 ——関わらない方がいい。


⸻


 そう思った。


 あの頃の自分とは、もう違う。


 能力もない。


 ただの人間だ。


⸻


 だが。


⸻


 レイナが、こちらに気づく。


⸻


 目が合う。


⸻


 数秒。


⸻


「……黒沢?」


⸻


 名前を呼ばれる。


⸻


「……久しぶりだな」


⸻


 自然と、言葉が出た。


⸻


 レイナが、少しだけ驚いた顔をする。


 そして——


⸻


「……ほんとに、久しぶり」


⸻


 小さく笑う。


⸻


「元気そうだな」


「まあね」


 軽く答える。


 だが、その声には少しだけ疲れがあった。


⸻


「……お前は?」


 気づけば、聞いていた。


⸻


「私?」


 少しだけ視線を逸らす。


⸻


「……今、休んでる」


⸻


「休み?」


「うん」


 短く答える。


⸻


「活動、止めてる」


⸻


「……そうか」


⸻


 理由は聞かない。


 聞かなくても、なんとなくわかる。


⸻


 順風満帆じゃない。


 何かあった。


⸻


 沈黙。


⸻


 そのとき。


⸻


 ドクン。


⸻


「……っ」


⸻


 心臓が、大きく鳴る。


⸻


 同時に——


⸻


 頭の奥が、わずかに熱を持つ。


⸻


「……なんだ」


⸻


 懐かしい感覚。


⸻


 いや——


 忘れていた感覚。


⸻


 視界が、ほんの少しだけ揺れる。


⸻


 レース表を見る。


⸻


 その瞬間。


⸻


 “何か”が、浮かびかける。


⸻


「……っ」


⸻


 だが、はっきりしない。


⸻


 すぐに消える。


⸻


 残るのは、違和感だけ。


⸻


「……今の」


⸻


 レイナを見る。


⸻


 その瞬間。


⸻


 違和感が、少しだけ強くなる。


⸻


(……近いと、出るのか?)


⸻


 考えがよぎる。


⸻


 1年前。


 コンビニ。


 競馬場。


⸻


 全部——


⸻


(……こいつがいた)


⸻


 ゾワッとする。


⸻


「……どうしたの?」


 レイナが不思議そうに見る。


⸻


「……いや」


 首を振る。


⸻


 まだ、わからない。


⸻


 ただ一つ。


⸻


 確かなことがある。


⸻


 この感覚は——


⸻


 “戻ってきている”。


⸻


 そして——


⸻


 レイナの近くでだけ。


⸻


 静かに、何かが動き出す。


⸻


 それが何を意味するのか。


⸻


 このときの恒一は、まだ知らなかった。


第11話を読んでいただきありがとうございました。


母の命を救い、日常を取り戻した恒一。

そして、1年ぶりの再会。


消えたはずの感覚が、再び戻り始めました。


それが何を意味するのか。

そして、その中心にいるのは誰なのか。


ここから、物語はもう一度大きく動き出します。


よろしければブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いします。


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