第6話『Eランク仲間たちの反乱計画』
白峰あおいと手を組んだ翌日。
彼女は俺を、地下クラブのさらに奥――表の地図には載らない区域へと案内した。
そこは、廃棄された地下鉄のホームだった。
蛍光灯はほとんど切れており、暗がりの中に数十人の人影が集まっている。壁や柱には、スプレーで描かれた階級マークに×印が重ねられていた。
「……ここは?」
「Eランク専用のアジトよ。名前は“リベリオン”」
人影の中から、一人の男が前に出た。
年は三十代前半、無精髭に鋭い目つき。背中には古びたリュック。
腕には【Eランク】の認証タグ――それを隠そうともしない。
「新顔か。白峰、そいつが例の……?」
「ええ。真嶋蓮。昨日、A+を一撃で沈めた新人よ」
ざわめきが走る。
Eランク同士の間にも、微かな上下関係はある。だが“上位階級を倒した”という事実は、それだけで伝説に近い。
「俺は加賀。ここ“リベリオン”のまとめ役だ」
「ああ……」
加賀は俺をじっと見つめ、低い声で言った。
「……お前、何者だ?」
その問いに、俺は答えを濁した。記録改竄の力を軽々しく話すつもりはない。
代わりに、昨夜の地下クラブでの勝利だけを簡単に話す。
加賀は少し笑った。
「面白い。なら、お前も乗れ。俺たちは近々、大きなことをやる」
「大きなこと?」
「ああ――階級制度を作った〈中央管理庁〉のサーバーを、ぶっ壊す」
その言葉に、アジトの空気が一瞬張り詰めた。
Eランクの者にとって、中央管理庁は神にも等しい存在だ。生まれた瞬間にランクを決め、人生を縛り続ける巨大なシステム。その根幹に触れることは、反逆どころか“国家への挑戦”だ。
「できるのか、そんなこと」
「普通は無理だ。だが、俺たちには内部の情報屋と、突破役がいる」
加賀の視線が俺に向く。
「……お前が、その突破役だ」
理由は聞かなくてもわかった。
俺の力なら、警備記録もアクセス履歴も改竄できる。システム上、存在しない人間として中枢に潜り込むことも可能だ。
「やるかどうかは自由だ。ただし、やるなら後戻りはできねぇ」
背後で白峰あおいが、静かに頷いた。
「――どうする?」
俺は答えるまで、ほんの数秒しかかからなかった。
「……やる」
この国の不条理を根本から壊す。それが俺の誓いだ。
たとえ命を落とすとしても、この階級制度を終わらせるためなら構わない。
加賀は笑い、俺の肩を叩いた。
「いい目をしてる。歓迎するぜ、反逆者の仲間としてな」
その夜、俺は初めて――一人ではなく、仲間と共に戦う道を選んだ。




