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5.愛人確定と夫の選択

「とにかく、改めてよろしく、ホリー」


 少し笑いながら、彼は言った。


「……こちらこそよろしくお願いします。エヴァン様」


「様はいらないよ。エヴァンでいい」


「はい、エヴァン」


 私は、まだ赤い顔を手で仰ぎながら、応える。


「それでその、ホリーは、オレでいいの? 運命の番だけど、オレ、こんな見た目だし……」


 エバンのケモミミがヘニョンと垂れる。それが何とも愛らしい。


「え? とても素敵な見た目だと思いますが……」


「え?」


「頭にある獣耳(ケモミミ)は愛らしいですし、猫のような尻尾も可愛らしいです。お顔は端正で私好みですし、細身ながら鍛え抜かれた体はとてもセクシーです。特に腹筋や腕の筋肉はずっと触って……」


「ホリー、その辺でやめてくれ」


「なぜです?」


「嬉しいけど、恥ずかしいから」


 今度は、エヴァンが顔を真っ赤にして、口元を押さえている。


「そうですか」


 残念です。


「それで? スノードロップ卿からは、子供も作っていいって話だけど、いいの?」


「ふぐっ」


 思わず、紅茶を吹きそうになりました。堪えましたが。


「大丈夫か?」


「え? ええ。大丈夫です」


 そういえば、子供ができても大丈夫な相手を、お義父様にリクエストしていたんでした。

 当初は形だけのつもりだったので、義両親を安心させるために適当にそう言っただけだったのですが……。

 相手が運命の番なら、話は別、かもしれないです。彼以外の子を孕みたくはないので。


「ま、まあ、お義父様達が良いというなら……」


 良いってことですよね?


「そうか、なら、沢山子供つくろうな!」


「え? ええ!?」


 私の両手を掴み、ニコニコと嬉しそうにするエヴァン。

 流石に冗談だと思っていたのだが……。


 その後、その言葉が本当になるなんて、思いもしなかったわけです。


 ◇


 その後、私たちは身支度を整えて、改めて義両親と話し合いをすることになった。

 そこには珍しく、ウェズリー様がいます。いつ戻ってきたんでしょうか。

 釈放されたんですね。忘れていました。顔が青いのは、お疲れだから?

 エヴァンと出会う前は、あんなにウェズリー様にイラついていたのに、今は不思議と心が凪いでいる。

 愛しい人と一緒にいると、こんなにも心に余裕が生まれるのねぇ。


「揃ったな。えー、その、ホリー様は体の方は、大丈夫か?」


「はい、問題ありません」


 なんとなく気不味いが、エヴァンとアレコレは深くは追求されない。ちょっと居た堪れないですね。

 そういえば、お義父様は前当主であるウェズリー様のお祖父様に散々煮湯を飲まされたので、浮気や愛人を作るのが嫌いでした。そんな方に愛人の確保を頼むとは、我ながら考えなしでした。

 後悔はしていませんが。


 私とエヴァンは、ナチュラルにソファに隣同士で座る。なんとなく、労わってくれているのが伝わります。

 思わず、彼の顔を見ると目が合いました。二人で微笑み合います。

 ふと、視線を感じたのでその方を向くと、ウェズリー様が暗い目でじっと見ていた。

 何見てるんです?


「では、まずは報告だ。あの女は死刑が確定した」


 お義父様の話では、ウェズリー様の愛人さんは予想通り、死罪となったそうだ。刑は数日後に執行されるとか。

 まあ、状況証拠がはっきりしてたからね。


 しかし、ウェズリー様は襲撃自体には関与していなかったため、解放されたそうだ。

 もちろん、魔術ナイフを彼女に与えた事は咎められたが、あくまで愛人の護身用という理由が認められたらしい。

 侯爵家の子息であり、後継ぎ予定である事と、愛人を優先してはいたが、妻の命を、ましてや両親を害するつもりは無かったというウェズリー様の主張が認められたのだという。

 結婚をチラつかせて関係を続けていたのは悪質だが、そこを突くと同じ様な事をしている()()も罪に問われてしまうので、追求はできない。

 もちろん、厳重注意はされたらしいが。


「それは、その。ご愁傷様です?」


 ウェズリー様を見ると、俯いて暗い表情はしているが、悲しそうではない。本命の愛人が罪を犯したとはいえ、死刑が確定したのに? 不思議な方ね。 


「次にウェズリー、紹介しよう。彼はエヴァン。ホリー様の愛人であり、お前の義弟(おとうと)になる男だ」


「は? お、義弟? いや、ホリー、愛人とはどういうことだ!?」


「ええ、先日お伝えしたとおりです。子供ができても問題ない愛人ですの」


「お、お前の夫は俺だろう!?」


「ですが、ウェズリー様は私を愛する事は無いのですし、この結婚は本意ではないのですよね? なら問題はありませんね?」


「そ、それは──」


「エヴァンは、我がスノードロップ家の血も問題なく引いている。子が出来ても全く問題はない」


「そんな──」


「ええ。オレとホリーは運命の番でしたので、子供もすぐにできるでしょう」


「まあ、素晴らしいわ」


「エヴァンは冒険者でもあるからな。しかも、ランクはS級だ。魔の森を抱える我がスノードロップ侯爵領にも相応しい人材だ」


 義両親も、エヴァンを歓迎している。


「……」


「それで、ウェズリー。お前の処遇だ」


「父上……」


「このまま、形だけの夫婦としてこの邸宅(いえ)に居座るか、ホリー様と離縁するか好きな方を選べ。ああ、離縁する場合はスノードロップ家からも籍を抜く。そうすれば貴族の責務を負うこともなく平民として好きな相手とも結婚できるし、自由に生きていけるぞ? 餞別として、相応の祝い金も出してやろう。破格だろう?」


「あ、あの、俺、は……」


 そういえば、ウェズリー様は複数人の愛人を囲っていたそうですが、その資金はどこから出ていたのでしょうか?

 ウェズリー様自体は、顔がいいだけで特別な技能は無かったはず。学園での成績は特別悪いわけではなかったそうですが、だからといって資格をとったり採用試験を受けたという記録はなかったような?

 今も領地運営の手伝いすらしていませんけど……。


「ああ、最初に渡す祝い金以外の生活費の援助などはしない。自分の力で生きていくといい。良かったな。お前の望んだ自由だ」


 あ、もしかして、今でもお小遣い制ですか?


 そして、一人で生きていく力のないウェズリー様の答えは決まっているのです。


「お、俺はこのままで、離縁は、しないでくれ……。仕事も手伝う。だから……」


 ウェズリー様は私を見ます。

 手伝うではなく、本来はあなたが主導で行うべきなのですよ。跡取りなのですから。

 いや、余計なことをされて、こちらの仕事を増やされるよりはお手伝いの方がいいのかしら? 


「俺を捨てないでくれ……」


 こうして、ウェズリー様はお飾りの夫になることが決まりました。






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