46話
クロステッダと店の奥に向かうソールはあの高い杖が良く売れたなと思いその事を話題にして話しかける。クロステッダも次の日には安くしようと計画していたらしくあの額で売れた事で本当に機嫌が良さそうだった。
「流石にちょっと高いかなーっと思ったけど売れて良かったわ」
どんな人が買ったのか興味はあったがそこまで詮索する必要もないなと思っていると工房へと辿り着く。そんなに多くこの場所に来ている訳でもないがクロステッダに案内されてここに来たので職員達はソールに会釈してくるのでソールも頭を下げて返した。
クロステッダはかなり大きなテーブルがある場所にソールを案内し売る物はそこに出す様にいった。
ソールは言われた通りにミラージュハウンドのクテルが吹き込まれた剣やクロスボウの魔導具や少しガタつきのある防具を並べていく。
クロステッダはその光景をニヤニヤしながら眺め近くで見ていた職人達は歓声をを上げる。
そしてクロステッダはクテルが吹き込まれた剣を手に取りその剣を眺める。
「ほー。魔導とクテルが入った剣け……なかなかおもろいやんけ」
「鑑定しなくても分かるもの何ですか?」
「あのな……何年、魔導の仕事してるとおもってんねん」
そう言われたのでソールは改めてクロステッダの方を向き考え答えを告げる。
「そうですね。ぱっと見た感じですとお父さんに言われて店番している女の子かと」
「あたしクロステッダちゃん六才!今日はおとうさんに言われてお店の手伝いをしてるの!……ちゃうわ!おまえぶっ殺すぞ!ちゃんと成人しとるわ!……しっかしお前ら人族は見た目で判断しすぎやろ。お前と似たような歳やとおもうで」
「私、ソールちゃん十七歳☆ミ」
「死ね!お前みたいな十七歳とかおるか!」
クロステッダをからかうのもなかなか面白いなとソールは思ったがこの調子では話が進まないのでテーブルの上に置いた物は全て売るので買い取って欲しいと伝えた。
「この剣もクロスボウもええもんやけど……自分は魔術師やし使わんか」
「杖でそのクテルが入っていれば使いようはありますが……剣ですと仕方ありません。薪を割るにしてももっと良い剣がありますので」
「もっといい剣なら薪割んなって話やけどな……防具の方はっと」
慣れた手つきでクロステッダは鎧や籠手や盾といった物を調べていく。ソールから見れば魔物の攻撃や剣といった物でついた傷ぐらいしか分からないので静かにクロステッダが調べ終わるのを待った。
「けっこう痛んどるけど物はええもんやな。一昔ぐらい前の作りやけど手直したら使えるな。ゴルディーとか金もっとるシバルやったら買えるやろ。じゃあこれもウチで買い取るで?」
「お願いします。シバルとかゴルディーランクでこの店の物って買えるんですか?」
「あのな。ここはボッタクリ店とちゃうぞ。シバルとかゴルディーには安く売るんや。ほんだらそいつらが育ったら昔世話になったといってこの店で高い物買ってくれるって話やな」
「成功率はどんなものですか?」
「わりと高いで?ステイルランクもけっこう来るし常連ではないけどミスティスとかもおるしな。下位の奴も死ぬ事減るしこっちも儲かるから悪い話は少ないで。ほんで値段やけど……全部で十万セルンでどうや?消耗品ぐらいやったらおまけしたんで?」
ソールは迷宮でアイテムを拾い持って帰って売る度に思う事が一つある。それは自分が異世界人でこの世界疎いと言うのもあるが……迷宮から出た品は値段がわかりにくいのだ。
クテルにしてもある程度の値段は聞けば分かるが現物が売っていないので、どのクテルが高くどのクテルが安いとも分からない。それに加えて今回の様に武具に装着されていたりすると更に値段が複雑になるので、考えるのを止める訳ではないが……リエルやクロステッダに任せる形となってしまう事が多い。
「ん?もっと高い方がええか?」
「いえ。高いに越した事は無いですが……ここの店って収納の魔導具の手直しってやってますか?」
「やってんで。迷宮から出たんか?見してみい」
仮に騙されたら騙されたで一つの勉強にもなり生活で必要なお金は十分に足りているので、問題は無いなと考えソールは手に入れた収納の魔導具を取り出した。
「クテル入りの剣に魔導のクロスボウに収納の魔導具……自分、迷宮でも踏破したんか?…………まぁええわ。そこはこっちが気にする事ちゃうしな」
クロステッダはソールから収納の魔導具を手に取って魔力を流したり何かを入れたりして調べ始める。
少し時間をかけ調べた後にクロステッダはソールに質問する。
「疑う訳とちゃうけどこれは迷宮で出たんやんな?」
「はい。先ほどの話ですけお土砂の迷宮を踏破したのでその時の宝箱からでました。何か問題ありましたか?」
「ならええか……ええ事ないからちゃんと説明しとくわ。迷宮に潜ってたら絶対に避けられへん事なんやけどな。私は昔この収納の魔導具を見た事がある」
「迷宮の宝箱出る物は基本的に遺品と聞きますから持ち主の知り合いは絶対にいますよね・そういう場合は返却した方がいいんですか?」
「いや。迷宮で出た物は拾った者のもんやから大丈夫や。この剣とか防具かって絶対に持ち主おったけどソールのもんやしな。法律でも常識でも守られとる」
「それなら大丈夫では?と思いましたが……感情が優先されてしまうとそういう訳でもありませんしね。形見とかだとって話ですよね?」
「せや。殺して奪うのは迷宮ではちょっとムズいから奪ってから殺したら丸儲けやしな。形見ちごても希少性の高い物とかやった返せっていうアホはおるな。さて。どーしょーかなー」
腕を組みソールが持ってきた収納の魔導具を見ながらクロステッダは悩んでいた。
手直しだけして返せば話は速いが、これの元持ち主は従国士でアホとまでは言わないが馬鹿なので万が一に見られる事があれば返せとかは行ってくる者達だった。
ウォーカーと従国士では考え方に違いがあるので仕方が無いと言えば仕方ないだが……
(う~ん……こいつ絶対に世間知らずやし敵対したら容赦せんやろしな~ガスともなんか揉めたって聞いたしな~放っておいてもええけど……金のなる木は切ったらあかんしなー)
自分で考えても埒が明かないのでクロステッダはソールに質問する事にした。
「自分。これどうしたい?持っとって従国士に見られたら最悪、喧嘩になると思う」
「処分で」
「判断速いな!最後まで話聞けや!一つ目の案やけど色とか代えて使うやな。これはパッとみた感じは全然分からん様になる。けど収納の魔導具って物は買った時に店で魔力の流れとかを識別登録する。盗まれた時用やな。だから調べられたら誰かのって一発で分かる」
「それだと迷宮で出た収納の魔導具って使えなくないですか?」
「これの場合は元が従国士やから面倒なだけやけど迷宮外で盗まれる事もあるからしゃーない。二つ目の案はウチの店で似た様な性能のヤツと交換やな。こっちは本職やから識別登録とかやり直せるしソールも手放すから問題は少ないはずや」
「処分の選択肢は無いんですね?」
「勿体ないしあれば便利やから欲しい人はなんぼでもおるしな」
ローブの下に仕舞っておけばそうそう見られる物ではないが……それなりにトラブルに見舞われやすくどんな調べ方で調べられるのかも分からないので一つ目の選択は無いなとソールは判断する。
処分して迷宮に何度も潜ればすぐに買えそうだとは思えたが、迷宮が気味が悪いので続けて行く事は避けたかったので二つ目の選択肢しか無かった。
(この世界の魔術とか魔導が干渉してアイテムバッグが使えなくなる事があるかもしれませんし……そう考えると収納の魔導具は絶対に必要ですからね)
「分かりました。ではすみませんが二つ目の方でお願い出来ますか?私も収納の魔導具は必要ですね」
「おう。わかったちょっと待ってってや。これは預かっとくで」
ソールが迷宮で手に入れた物を持ってクロステッダは店の方に消えて行く。そしてしばらく待っていると先ほどの物より少し小さく白い箱を持って戻ってきた。
「容量はさっきのヤツより少ないがスキルとかから盗まれへん用にしてある新型やな。ウチの工房で作ってるやつやから使用感とか不具合とかあったら教えてな」
分かりましたと言ってそれを受け取ると先ほどの武具の代金も用意してくれいた。
特に先ほど提示された金額で問題なかったのでソールは礼を言って十万セルンを受け取った。
「十万セルンかー。まとめてそれだけ手に入ったらいっぱしの迷宮ウォーカーって昔は言われててで」
「そうなんですか?収納の魔導具にしても高いのですぐに飛びそうですが……」
「そやな。収納の魔導具買って武器防具その他諸々揃えられるからそう言われてたんやろな」
「ウォーカーってお金かかりますからね」
それから少し二人で世間話などをしていたが、クロステッダが職人から呼ばれたのでソールも店を出ようとする。
「今日はありがとうやで。どっか行くんか?」
リエルから聞いた富裕層が住む地区にある魔術の本などが売っているお店に行くと言うとクロステッダもその店を知っているとの事だった。
「あーあっこか。まー確かにあそこが一番種類多いし一番マシやな。ちょっと主人が頭おかしい気もするけど品揃えはええしな」
「気をつける事ってあります?」
「ん?無い。富裕区を堂々としとけば何も言われへんから大丈夫や」
「ありがとうございます。買い取ってもらってありがとうございます。また何かあったらお願いします」
「おう。こっちこそよろしく頼むわ!」
クロステッダに別れを告げてソールは店を出た後に富裕層が住む地区にあるという店に向かった。
富裕層が住むと思われる地区に入ると景色が一気に変わる。先ほどまで何処にでもいたウォーカー達はほとんど見なくなり、代わりに歩いている人達は豊満ボディーによく分からない金のかかってそうな服や宝石の類いを身につけている人が多かった。
道も他の地区よりはとても綺麗にされておりよく装飾の凝った魔導車が走っていた。
元の世界でいう所の貴族や富豪商人が住んでいる様な場所だな考えながらソールは店を探す。
大きな通りを抜けて進み書いて貰った知事を見て路地へ入っていく。
するとようやく目的の店だろうと思われる場所が現れた。そこにはソールの様なローブに身を包んだ魔術師が何人も見えたので店の名前などを確認するとリエルに教えってもらったお店だった。




