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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
二章 迷宮都市
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47話


 入り口には何に使うか分からない物が大量に並んでいたので少し狭く感じたが、結界の様な薄い膜を抜け店内に入ると中はとても広く魔術や魔導に関するであろう物が大量に並んでいた。


 鳥の頭の様な骨や指が七本ある手など本当に様々な物がああり知識があれば本当に楽しそうな店だったが、異世界人のソールには使い方の検討もつかないのでおとなしく魔術の本を探す。


 上を見上げると本の類いは二階にあるようだったのでソールは木の根が絡み合う様に作られた螺旋階段を上って二階へと上がった。


 こういう建築方法なのか魔術なのかは分からなかったが、二階は一階より広くその階は全て本で埋め尽くされていた。


 ご丁寧に本棚に何の魔術コーナーの様な事が書かれていたので、迷宮に関する本と雷の魔術に関する本。魔導に関する本を探し始める。


 するとちょうど近くに迷宮に関する事が書かれた場所があった。


 そこで探していると興味深い見出しで書かれた本と出会った。


 迷宮からの進化について。


 がっつり立ち読みして中身を見るのも流石に申し訳ないので少しだけ本を開きパラパラとページを捲っていく。


 マボロマから迷宮に進化する。マボロマが幼虫なら迷宮は蛹の様な物だと考える。そしてそれは羽化する……


 そこまで読んで他のページを見ても迷宮に関する事がとても丁寧に書かれていたので迷宮に関する本はこれに決定された。


 次に目に付いたの魔導の本でその歴史や製造方法などが描かれていた。ただソールは作りたい訳でも歴史を知りたい訳でも無いので魔導の種類などが描かれた本を二冊ほど手に取った。


 軽くよんだ感じ少し面白い事が書かれており魔術、魔導、クテルの関係や魔術を誰にでも扱いやすくしたのが魔導だがそうするとクテルに似てくるという事も書かれソールの知識欲を誘った。


(でも……そう言われればそうですよね?手に入りにくい事以外は魔導とクテルって似てますね。武具に入れたりする所とか似てますし、魔導を考えた人はクテルを参考にしたのかもしれませんね)


 早く宿に帰って読みたいと思いながら次は魔術が置いてある場所へと向かった。


 が……その場所はとてつもなく広く、火、炎、爆や水、霧、氷、ととても細かく分けられていて二階では収まりきらないので更に上の三階へと繋がっていた。


 金と時間ささえあるなら全部読んでみたい気もしたがとりあえずの目的は雷の魔術が乗っている本を探し店内をうろつく。


 魔術の本を見て分かった事だがそこそこ良い値がするので二階と三階にはほとんど人がおらずいたとしても迷宮でがっつり戦える強者の雰囲気を持つ物ばかりだった。


 身につけている装備もソールが来ている物と見劣りしない物も多かった。


 人が少なくて探しやすいぐらいにしかソールは考えていなかったが、富裕層が住む地区にるこの店はそういうお店なのだ。


 三階に上がり探しているとようやくソールは目的の雷の魔術が書かれた物が多く置かれた場所を見つける事ができた。


 その場所も他の場所に負けじと劣らず本が並べられており攻撃から防御、支援まで幅広く並べられていた。


 ただ先ほどまでと違うのは読んで覚えられてしまうと売れないので本は開かれない様に工夫がされており表紙に簡単にどんな魔術かという事が書かれていた。


(見て術式を覚えたら本を買う必要がありませんからね……気をつけないとこちらの世界でも部屋が本で埋まりそうですね)


 一冊一冊の値段が高いのでかなり選んで買わなければならなかったが……それを楽しみながらソールは本を選ぶ。


 まず選んだのは防御に関する本だ。今使ってるような盾を回転させ弾く魔術も十分に使えるが、マイクロシェードの様に相手の魔力に干渉し無効化する魔術を探す。


 物理を伴わない純粋な魔法なら無効化する事ができるのでソールは簡単に使っているがとても難しい魔法だった。それと同じ様な物を魔術で探すとなれば難しい物でまったく見当たらなかった。


「……けっ軽減しかない。人間の体なんてそこまで強い物ではないのに……」


「重ね掛けという物を君は知らないのか?装備に金をかけるのはかまわないが……もう少し知識をつけたまえ。魔術師とは本来そういうものだろう?」


 誰かが近くにいるのは分かっていたが……本に集中するあまり外に出てしまった言葉に返事をする者がいた事にソールは少し驚き振り返る。


 振り返るとそこにはたぶん初老の男性だと思われる者が立っていた。魔術師の様なローブに身を包み手などは見えなかったが、見えた耳は特徴的で葉の様になっており、長い髪も髪と言うよりは植物の蔓の様に見えた。


 その特徴的な姿を見ているとその者は少し不機嫌なったかの様にソールに質問する。


「何かね?それほどの物を身につけていてリーフ族は初めてと言う訳ではあるまい」


「いえ。話には聞いた事はありますが初めてですね」


「そうか。ならば君はもう少し本を読むべきだ。いくら強い装備に身を包んだとてそれを使いこなせる知恵が無ければ話にならないだろう?」


 「はい。言いたい事は分かりますが世の中は思ったよりは広くないので身近な事でも知らない事は多いものだと思います」


「ふむ。なるほど。そう言われれば確かにそうではある。確かに私もこの都市に長く住んでいるが知らない事は多い。それで?君は何処で知ってこの店に来たんだ?」


 魔法でもそうで元の世界でもそうだったが魔に関する事に関わっているお店には絶対にこんな感じの人がいるなーと思いながらソールは迷宮都市のウォーカー長であるリエルに教えてもらってここに来た事を伝えた。


 なるほどと男は頷いた。


「私の名前はファーゼル・ネルピスという。リーフ族でこの店の店主をしている」


「これはご丁寧に。私の名はソールと言います。旅のウォーカーで迷宮に興味がありこの都市によりました」


「ふむ。旅をしているというわりには世間を知らない様に思えるが?」


「そこは卵が先か鶏が先か似ていると思いますが……世間を知っているから旅をしているのではなく、世間をしらないから旅をしています」


「その考えは実に面白い。世の中の全てを知っているなら何処に行かなくてもいい。全てを知っているから見る必要もない。なるほど……流石はウォーカー長がここに来ても大丈夫だと言った人物ではあるようだ」


「ありがとうございます。ドワテラ族に知り合いはいますがリーフ族の方を見るのは初めてでしたので」


「さてその二つの種族を知った君に問題だ。リーフ族とドワテラ族。木と岩。この二つ何処が似ていると思うかね?」


 即答で偏屈なヤツが多いと言いそうになったのでソールは慌てて口を閉じて少し考える。


「動物の様に動けないとと言った所でしょうか?」


「エクセレント正解だ。それはこの二つの種族をよく表している。どちらも何らかの動きが無ければその場から動きはしない。リーフ族やドワテラ族をあまり見ないのはどちらも木や岩の様にその場から動かないからだよ」


 知り合ったドワテラ族も目の前のリーフ族もがっつり動いて自分でお金を稼いで仕事をしているのでは? と思っているとそれを読んだのか種を飛ばす植物もいれば崖を転がる岩もあるとファーゼルは言った。


「では基本的にはドワテラ族もリーフ族も自分達の国から出ないと言うことですか?」


「ああそうだ。ドワテラ族は国に留まり自分達が好きな様に鍛冶をする。リーフ族は魔物が少ない土地で植物の様に生きる。その生き方は死んだ後にも現れる。ドワテラ族は死ぬと岩や鉱石になりリーフ族は樹になる」


「なるほど……それでドワテラ族は外皮の様な鉱石がありリーフ族は葉や蔓の様な耳や髪があるんですね」


「そういう事だ。だが死後変化しないのは人ぐらいの物だ。翼人のピュテアは鳥になり獣人のワーサーグは獣になると聞く」


「……ドワテラ族は分かります。リーフ族は百歩譲って分かります。鳥や獣になっただけで死んで無いのではないでしょうか?」


「そうだな。だが仮に見た目は同じでも記憶や魂を失ってしまえば生きている言えないからだと私は思う。反論する余地は多いにあるので気になるなら論文でも書いて国に提出したまえ」


 記憶はともかく魂まで代わってしまったらそれは別人というか別物だなと納得しているとファーゼルはソールが買おうと思って積んでいた本を手に取った。


 その表紙を見たあとに一人で何度も頷きながらまたソールに話しかける。


「君は良い本を選ぶ目はあるようだな。予算とどの様な本が欲しいか言いたまえ。私が選んであげようではないか。重ね掛けの事も知らないのなこの大量にある本の中で選ぶのは難しいだろう」


 断っても良かったがリエルがこの店を紹介してくれたのと、ファーゼル自身もかなりの実力者だと言うのが魔眼を通して分かったのでソールはお言葉に甘え、予算は八万セルンで雷系等に属する。防御の魔術と支援の魔術。最後に攻撃で何かいいのがあればと頼んだ。


 攻撃に関しては電撃を浴びせる魔術を知っているがそれにアホほど魔力をぶち込めば必然的に威力もあがり無属性の魔術に回転や電撃を組み合わせる事が出来たので今の所はそれほど必要無かったのだ。


「あと、あればで良いのですが術式を描く時間を短縮するような事が書かれた物があればお願いします」


「術式破棄か。破棄と言うには破棄されたいないから私はその言葉に少し疑問を抱いているが……まあいい。その予算なら今持っている本と足しても六、七冊になるがいいか?」


「はい。大丈夫ですけど魔術の本って高いですよね」


「本とはいえ描かれた物に魔力を流してしまえば魔術が発動してしまう。魔力が流れずなおかつ魔術に反応しない紙やインクを揃えればそうなる。大昔の魔術書はお互いに反応し合い火がついたという事例もあったものだ」


 ソールがいつもの様に教えてもらった事に対してなるほどと納得している間にもファーゼルはせかせかと動き魔道書を棚から抜きパラパラと捲っては戻したり手元に置いていく。


 棚にある本は何処にあるか全て覚えているようで必要な物だけを的確に選んでいく。


 本を探すより棚を移動するのに時間がかかった所で六冊の魔道書が積まれた。


「その予算で君の強さに合わせるとこれぐらいだろう」


「装備だけは良いかも知れませんが……強くないかもしれませんよ?」


「信じるか信じないかは君に任せるが……私は魔力の揺れと言うか波の様な物が見えるのだよ。そしてそんな私が君に見えたのは大海に広がる凪の世界だった」


「……まぁそれなりに魔力の制御には自身がありますので」


「それなりと言うにはやり過ぎだがね。……それで魔術書だが防御に関する物が二点。支援に関するものが二点。攻撃に関する物が一点と君が言っていた術式破棄に関する物が一点だ。術式破棄に関しては書かれている事は少ないが良いかね?」


 問題ありませんと言ってソールは手に取って表紙に少し書かれた事を読むとそれはソールがあれば良いなと思う物ばかりだったのでソールはその本達を買う事を決意する。


 そして何処でお金を払うのかと尋ねるとファーゼルも時間があったようで一階まで一緒に着いて来た。


 そしてレジのような物で八万セルン近く払っているとまたファーゼルに話しかけられる。


「ソール君と言ったかね?ウォーカー協会に指名依頼を出しておく。私から依頼を受けてくれたまえ?」


「はい?」

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