44話
開けた宝箱の中からソールは青白く光る剣を引き抜いた。
特に重いや軽いといった感覚もなく剣などに詳しく無いソールでも良い剣だ思わせる物だった。
その剣を職員に渡して見てもらうと前回の杖と同じミスティス鋼の材質でできている物だろうと言ってシーツを敷いた床の上に並べた。
ソールも宝箱の中から次々と物を出していき職員に渡していく。六十階の宝箱から出た物は防具や弓などもあったがそれ以上に金貨や金属のインゴットが多かった。
「お金は分かるんですよ。持って無いと大変ですからね。インゴットとか持ってどうして迷宮に入るんでしょうね?迷宮がインゴットを作る訳でも無いでしょうに」
そーるの疑問に苦笑しながら職員は答える。
「インゴットも自分の資産ですからね。手元に持っておきたいんのでしょう。三~四人でパーティーを組んで二人でも収納の魔導具を持っていれば大抵の物は入りますし持って行けますからね」
「入るなら自分で持っている方が安全と言えば安全ですもんね」
「盗む系等のスキルを持っていれば取られる事もあると聞きますが上位のウォーカーになればなるほど自分で持ってたりしますね。収納の魔導具を二~三個持って使い分けてたりします。預けている人も多いですけども」
「上位になれば動くお金も大きいでしょうからいちいち預けるのも面倒なんでしょうね。では続けて蟹から出たアイテムを並べていきますね」
「ステイルワームをアスケイプゴーレムを倒したので忘れてました……ではすみませんが適当に並べててもらえますか?迷宮で出た物は全部出してもらって大丈夫です。すこし鑑定の人とか応援を呼んできますので少々おまちください」
了解しましたと返事をし職員を見送りアイテムボックスの中から迷宮で手に入れたアイテムを出していくと話した事はないが顔見知りにはなった職員達がゾロゾロと音も無く集まり始める。
そしてあっという間に全てを仕分け去って行った。
その光景を見てソールは思う。この人達がベテランで迷宮の買い取り場にいくと新人が育たないからこちらにいるのだろうと。いつもの職員さんは別だがこの場所には少し歳を重ねた人も多かったのでソールは一人で納得する。
ソールのアイテムボックスはそこまで容量が大きい物ではないので大きい物や邪魔なになりそうな物は拾わずに迷宮に捨ててくるのだが、流石に六十階まで潜るとそれなりの量にはなり鑑定してもらわないと何が何だか分からない状況になっていた。
「呼び水の杖とか回復薬の類いは分かりますが……明らかに毒っぽい物もありますしね」
何にしてもまだまだ勉強が足らないので纏まったお金が入ったら本でも買うか誰かから習うなどして勉強をしないと駄目だなと考える。
そして職員が前と同じ鑑定士の人を連れて来てくれたのでソールはお忙しい所すみませんと言って頭を下げて挨拶をし鑑定が始まった。
小さな物から鑑定が始まりプロークラブを倒した宝箱からでだクロスボウを職員は手に取る。
「これはがっつり魔導具ですね。弦も矢も魔力で作るタイプです。魔力が無ければ使えませんが矢の消費も抑えられますし矢を入れて撃つ事も可能なヤツですね。少し大きいので一昔ぐらい前のタイプかも知れませんが良い物ですよ」
「友人のアーチャーが凄い人だったのでクロスボウより弓の方が強いイメージがあるんですよね」
「特性上クロスボウは弓のように速く撃てませんから難しいですね。このタイプのクロスボウだとある程度は連射できると思いますよ?」
「私が持っても使いこなせないので売りですけどね。職員さんいります?嫌いな奴がいたら撃っていいですよ?」
「嫌いな人は多いですけど殺したい人までは…………いないので私もいらないですね」
今の間は何だったんだろうと思ったが聞かないのも一つの優しさと考えソールは他に聞きたい事があったのでそちらを聞く。
「そういえば迷宮で出る……回復薬全般なんですが色で見分けても大丈夫なんですか?」
「店で売ってる物は大丈夫です。国で統一しているのと法で守られているので安全なんですが……迷宮は絶対に鑑定してください。よくある事故の例なんですが回復薬と思って飲んだら毒薬とか普通にありますので……」
「と言う事は暗殺用の毒薬を持ち込んで迷宮で死んだとかですか?」
「そういうのは聞きませんけど……自分で回復薬の類いを作る人とか色つけを間違えたとかで本人しか分からない人が迷宮で亡くなったりとかですね。あとは極まれにですけど色づけを間違えた物を迷宮に捨てる店がいたりと……」
「あーそれで迷宮の入り口に兵士さんが立っているんですね」
「そういう事です。今の人は大丈夫ですけど希に買収されて粗悪品を迷宮に捨てに来る人がいますね……こればかりは人のやる事なので罪を重くしてもなくなりませんね。調合を間違えて劇薬になったりするとその辺に捨てる訳にもいきませんし処理にお金もかかるので」
色々あるんですねと職員と世間話をしていると鑑定は順調に進んでいく。出たお金は全てが本物だったのでソールは先にそれを鑑定の邪魔にならない様にアイテムバッグに仕舞った。
呼び水の杖や他の装備、剣や盾や斧といった物は出ていたが使えそうな物はほとんど出なかったので大部分が売りだと考えていた。
「職員さん。欲しい物って何かありますか?海藻とか出てますので持って帰ってもらってもいいですよ」
「ありがとうございますなんですけど前のもありますからねー。でも協会としては回復薬の類いは売って欲しいですね。迷宮が変化したのもありますが回復薬等はいつでも何処でも使うので」
「また余所に持っていって調べて買い取ってもらうのも面倒なので協会で売るつもりですので大丈夫ですよ。私が持っていない薬以外は売ります」
「毎回すみません……そこまで良い値で買ってる訳では無いので……」
「楽できる所は楽しないと体が持ちませんからね」
「なるほど……流石は高ランクの魔術師さんですね」
鑑定士が纏めてあった回復薬などを調べ始めたのでソールは近づき説明を聞き持っているもと持っていない物を分けていく。
その中で先ほど職員と話していた様な物が出てくる。
見た目の色は他の回復薬と同じ色だが飲むと体内が壊死する薬があった。本来は作物を荒らす害獣の薬との事だがこういうものが混ざるので鑑定は絶対に必要だと言う事が分かった。
「こういうのって買い取りってできるんですか?」
「持って行く所にもって行けば買い取ってもらえますけど……協会だと処分ですね」
「持っていて慌てている時に飲んだら悲惨なので処分お願いしていいですか?」
了解ですと言って職員は廃棄様と大きく書かれた収納の魔導具を取り出してその中に先ほどの毒薬を入れていく。
他にそんな感じの毒薬等はなく筋力を増強したり一時的に魔力を増幅させたりと少し珍しい薬なども出たのでそういう物はソールのアイテムバッグの中へと仕舞われた。
装備等も目立って凄い物は魔導クロスボウとまだ鑑定してない青白く光る剣ぐらいで盾や鎧といった物はシバルランクが使う程度の物だった。
「宝箱から出る装備は良い物というイメージがあるんですけどそうでも無いんですね」
「迷宮からすれば人の装備の価値は分かりませんからね。というか魔術師さん忘れているかもしれませんが皆さんは踏破が目的ではないですよ。富を求めてクテルを探しに来てるんですよ」
「そう言えばそんなのありましたね……全く出ないので忘れてました」
「これだけウォーカーの方々が迷宮に潜って月に一個出るか出ないかぐらいですからねーそんなもんです」
職員に言われるまで本当に忘れていたなーと考えているとようやく青白く光る剣の鑑定が始まったのでソールと職員は息を飲んで見守った。
そしてすぐに鑑定の結果がでると鑑定士は紙に詳細を書き込みソールに渡し説明する。
「使い手は選ぶと思いますが中々に良い剣です。材質はステイル鋼とミスティス鋼の合金で出来ていて幻影の魔導が組み込まれています。幻影の魔導が組み込まれた剣と言うのは攻撃する際に本物刀身より速く偽の刃を見せたり遅く見せたりする事ができます」
「がっつり技能頼りの剣ですね」
「はい。それと更に面白いのがこの剣にはミラージュハウンドのクテルが組み込まれていますので偽物の刀身がかなり増える使用になっています」
クテル入りの剣が出たという事に周りで話を聞いていた他の職員も驚き歓声を上げる。
「おおー凄いですね。クテルを外すことは出来ないですけどクテルがつけられた装備が出るのも凄いですね」
その剣を鑑定から受け取りソールが魔力を流すと本物の刀身より少し先に偽物の刀身が現れ更に後ろにいくつかの偽の刃がソールの動きに追従する。とても面白い動きをする剣だが幻惑で作られた刃で怪我をする訳では無かったので攻撃判定などは無かった。
「杖だったら使いようもあったでしょうに……これは売りですね」
「あれですね。魔術師さんが剣士だったら逆の事を言う感じですね」
その剣やクロスボウも他の装備も売るので買い取ってもらえるかと尋ねたが修理の必要もあったりするのでクロステッダの店で売った方が速くて楽という事になった。
そして鑑定もほとんどが終わりようやくソールが欲しかった物が現れた。それは少し型の古いタイプで入る容量も少なめだったが収納の魔導具だった。
中の物は全て迷宮に奪われていたが壊れてもおらず魔力を流せばすぐに使える小箱のタイプだった。
「おーやっと欲しかった物が出ました」
「魔術師さんすでに持っている様ですけどいくつあっても便利はいいですからね。良かったです。これで全ての鑑定は終わりましたね」
ソールは鑑定士に礼を頭を下げて礼を言う。そして売る物は先ほどのから決めていたので他の職員がそれらを運んで行く。
「では魔術師さん。お金の方を用意します。あとついでにウォーカーブレスレットを渡してもらえますか?」
「いいですけど何に使うんですか?」
「流石にシバルランクだと不便だと思うので元のランクに戻して起きます。プロークラブを合計二体討伐。ウォーカーの救助。迷宮の踏破となると下げられてるランクを戻しても怒られないレベルですしね。それに協会にも色々と売ってくれているので文句は出ないでしょう」
「いえ。私はシバルランクのウォーカーですよ?」
またまたーそのご冗談が好きですね!と機嫌良く笑いしばらくお待ちくださいと言って眼鏡をかけた職員は奥へと消えていた。
ブレスレットを見れば嘘か本当か分かるしだろうし、まぁいいかと考えながらクロステッダの店で売る装備をアイテムバッグに入れていく。収納の魔導具も使えるとの事だったがこれもクロステッダに見てももらおうと考えてバッグに仕舞った。
ソファーに座って職員さんが中々戻ってこないなーとなり三十分が過ぎ一時間近くになった所でようやく戻ってきた。
「すみません!探しても見つかりません!このブレスレットはシバルランクの物で本物ですよね!?」
「ですから私はシバルランクのウォーカーです」
「いやいやいや……どこの世界に数回潜っただけでソロで迷宮を踏破する魔術師がいるんですか……ミスティスとかオルティアの所業ですよ?」
「ですからここにいます」
この職員さんの名は知らないが妙にソールと仲良くなったので色々と感じ取った様で、もう一度お待ちくださいと言って奥へと消えて行き、次はすぐに戻って来て大きな声を上げた。
「魔術師さん!ソールさんと言いますか!?本当にシバルランク!?」
「そうです。私の名前はソールと言います。約半年前にウォーカーになった魔術師ですよ」




