43話
ソールと職員は変化した土砂の迷宮の魔物や地形などをチェックする。
前からそこにいる魔物などは地図に記載されているので名前は分かっているのだが、新しく出現し始めた魔物などはソールには分からないので職員に聞きながらメモをしていく。
「けっこう魔物の種類が増えてますね……あぁー……私が知らないのまでいる」
「そういう時ってどうするんですか?」
「協会のデータベースに魔物のデータがあるのでそこで調べますね。ごくごく希に新種というか進化して乗っていないのもいるのでその時はウォーカーさんに現地調査してもらいます。スキルを持った一匹物とかだと調べてもいない時もあるので、こういう魔物がいたぞって記録だけが残ってますね」
迷宮に魔物の種類が増えはしたが元からいる魔物達と脅威度もさほど変わらなかったので、職員はホッと胸をなで下ろす。だがそれも三十階までの話だった。
三十階の湖の主が陸地に上がり、湖の水位が下がり水辺に大量の魔物がいるのを見て絶句し口の横から珈琲が垂れ始める。
「職員さん。珈琲が垂れてますよ」
その言葉で我に返り職員はゴシゴシを口元を拭いた。
「すっすみません……あまりの光景に吐きそうで……魔術師さん。ここって休憩できそうでしたか?」
「できなくは無いと思いますけど休憩してる人はいませんでしたね。普通に水辺にいた山椒魚みたいな魔物が入り口付近にもいましたので」
「まじかー本当にまじかー……今まではこの階層は魔物が水から出てこなかったので休憩階層だったんですよ。それで助かるウォーカーの方々も多かったので……それとその魔物ですが魔術師さんなら問題ないですけど物理攻撃すると体内の酸袋が裂けて武器が溶けるので注意してください。名前はドドロサンショウですね。鋼鉄ぐらいなら一匹で使い物にならなくなりますよ。もっと凶悪な酸攻撃してくるトカゲもいるんですが……」
アスケイプゴーレムと一緒に出てきたミミズを思い出すが……あれはどう見てもトカゲではないのでたぶん別の魔物だろうとソールは思った。
この映像を映す魔導具は一時停止の機能も着いている様で新しく現れた魔物の記録をつけていく。
「このプロークラブは倒したんですか?」
「倒しましたよ。陸地に上がっていたのでお宝も回収しました。魔導具みたいなクロスボウっぽいのとかお金も出たので後で鑑定お願いします」
「わっかりました。腕が鳴りますね!」
職員は腕を曲げて力こぶを作りまた映像の確認に入り三十階層代を丁寧にチェックする。
そしてもうすぐ四十階に入ろうとした所で職員はふとした疑問が浮かんだ。
「これ……キャッキャしながら見てますけど……普通に依頼として出される迷宮調査ですよね?」
「そうなんですか?私は迷宮調査の依頼を受けた事はないので何ともいえませんが」
「本当にすみません……ここまでしてもらえるなら依頼として出しておけば良かったのですが……」
「問題無いですよ。美味しい珈琲も入れてもらってますし、自分でも珈琲飲みますし時間があればその辺でも飲みますが、今の所は迷宮都市で一番美味しいのはこの珈琲なので」
「そうですか?そういってもらえると調子に乗りますし協会としてもありがたいので助かります」
「当分は迷宮都市にいるのでまた美味しい珈琲を入れてくれればそれでいいですよ」
「わっかりました。次はもっと美味しいお菓子も用意しておきます!……と言うか魔術師さんは何階まで行ったんですか?……と聞こうと思いましたが!ネタバレを聞いてもつまらないですからね!お楽しみは取って起きます!」
一人で何か納得した様なので聞かれれば答えるが聞かれなかったので知らない魔物がいればその特性などを聞きつつ続きを見ていった。
四十階代、五十階代と見て行き最後の六十階で一旦停止が入った。
「……魔術師さん。がっつり潜りましたね」
「はい。がっつり潜りました。迷宮から帰還する魔導具も買って散財したので……」
「あーあーあーあれですか……あれはくっそ高いですからね。王城都市とか聖域都市に比べたらまだマシですけども……」
「私は必要経費で割り切るのであまり気にはなりません。装備だけはいっちょ前に整っていますからそこにお金はかからないですから他のウォーカーよりは楽ですからね」
「高いねんボケェ!とかよく言われるので……そう言ってもらえるなら助かります」
これは魔導具作ってる連中からお金もらってる事を知っているなと悟ったが、この職員の給料や協会の維持費なども余裕を持って管理しないと駄目だろうし、言っても言わなくて良いことならソールは知らない振りをする異にした。
「あっでも帰還用の魔導具を買ったって事は帰って来たってことですよね?ネタバレにちゃっいましたね」
それを使ったとは一言もソールは言ってはいないがその方が後で面白そうだったので言わないでおき六十階へと映像は進む。
そこに映された。アスケイプゴーレムと大きなミミズに職員は大きな声を上げた。
「こっこいつです!さっき私が言っていたトカゲがこいつです!」
「え?どっからどう見てもミミズにしか見えませんが?手とか眼とかありませんよ?」
「こいつの名前はステイルワームと言います!」
「ワームですからミミズですよね?トカゲとは?」
「昔はミミズと思われていたんですよ!最近ですトカゲの仲間を分かったのは。それでほとんど土の中にいるので眼は退化して見えません。体の外皮は手が体を守る様に進化してこんな感じになっているんですよ!」
「魔物も住んでいる所の地域に合わせて進化するんですね」
「そうですねー。下手したらスキルを覚える分、魔物の方が進化する速度は速いかも知れません。魔術師さんは暗闇でも目が見える様になったネズミの魔物の話を知っていますか?」
「丘都市で聞きました。そういえばあれも進化といえば進化ですね」
「そうです。一匹だけならスキルで済むですが生まれてくる子孫はほとんど暗闇でも見えるので進化ですね。その辺の洞窟とかにいっぱいいますよ。そのネズミが弱いので助かっていますけどね」
「なるほど」
「で話は逸れましたが……このトカゲことステイルワームですね。こいつはステイル鋼を好んで食べるトカゲです」
このステイルワームが出現する地域にはステイル鋼の元になるステイル鉱石などが良く取れる地域が多い。魔物ではあるが鉱山や鉱脈の近くに住み着くのでこいつを見かけると地域が潤う事が多い。
固い岩盤を突き進み固い鉱石等も問題無く食べる程の強靱な体を持っており並大抵の攻撃では倒す事は無理だったりもする。
ただ弱点も多くめが見えない代わりに音や匂いとても敏感でステイルワームが近くにいる時に大きな音や凄まじい悪臭を放つ物を置けばその地域からいなくなったりもする。
戦闘をする際に気をつけないといけないことは音で全てを聞き分けると言っても問題が無い程に耳が良く人の心音くらいなら簡単に聞き分けるので動かなかったから言って位置がバレない訳でも無い。
そして食べた鉱石の吸収をよくする為にドドロサンショウなどを好んで食べ体内に酸をため込み鉱石を溶かして外皮を強化していく。
「このステイルワームから吐き出される圧縮された強酸の威力は凄まじく岩でも簡単に切り裂きます。ウォーカー方々は酸の矢と言っているんですよ」
「ふっふっふ。いかに音より速い矢とて雷光の前には遅いものですよ」
「それ格好いいですね」
「そう言ってくれると思って調子にのりました」
「いやいや。ここまで映像に収めてくれているならもっと調子に乗ってくれて……と言うか……ステイルワームと戦ったんですか!?」
ガタッ!と驚き立ち上がる職員にソールは説明する。
最初はアスケイプゴーレムと戦っていたが途中からステイルワームが乱入して来て二対一の状況になったと。
その話を聞いて良く生きていましたねとホッとしなが職員はソファーに座り直す。
「アスケイプゴーレムだけなら……まだ何とかなる人も多かったんですが、ステイルワームも混ざってくると迷宮を攻略する人がかなり減りますね……難易度が上がっていますから一度、コアを破壊したいところですね。魔術師さんも無事で良かったです」
ここがチャンスとソールはぐっと親指を立ててコアは破壊しましたよ。と言った後にアイテムバッグの中から持って帰ってきた宝箱をソファーの横に置いた。
大きな声を上げて職員が驚くかと思ったが魂が抜けたように静かになりその眼は何も映していなかった。
そしてようやく意識が戻った様で注意深くその宝箱を観察する。
「マジですか?」
「マジですね」
「絶対にこの人はくっそ強いだろうと思っていましたけど……まじか!?ステイルワームとアスケイプゴーレムを同時に相手にししたんですか!?」
「ちゃんと連携してくるなら逃げましたけど檻で囲って一対一の状況さえ作ってしまえば、何とでもなりますよ」
「この人初見で対策作ってるよ……というか攻略してる……。まぁ迷宮にいる魔物は連携としないので……魔夜の迷宮にウルフマンって魔物がいるんですが迷宮内にいるのは大した事は無いんですが外にいるのは脅威度が二ランクぐらい上がります」
「それでステイルワームと戦って疑問に思ったんですが体内で作られた液体とか溜めた物とかは迷宮内だと減らないんですか?ステイルワームの酸が無くなるのか試しましたが引っ切りなしにぶっ放してきたので」
「まじかー本当によく生きてましたね……そこが連携はできないけど迷宮魔物の強みなんですよ。そういう体内で作られたり魔力を使う物は打ち続ける事が可能なんです。ですからウルフマンの様に迷宮で弱体化する物もいればステイルワームの様に強化される魔物います。天然のステイルワームとか五発も撃てないと聞きます」
「魔物については勉強しておかないと痛い目を見そうですね……」
「迷宮と外では本当に違いますからねー。皆さんが魔術師さんの様に慎重であってくれればいいんですけどね。……というかよくコアを破壊して宝箱を持って帰ってこられましたね。土砂の迷宮は宝箱を開けると土砂崩れが起きてコアが飲まれます。逆にコアを破壊しても土砂崩れが起きて宝箱が飲み込まれます。ですから性悪迷宮なんですよ」
「なるほど……やはりそうでしたか。自分が迷宮ならそういう設計にしようと思っていたので宝箱ごと持って帰って正解でしたね」
「……それを言われると性悪迷宮って言った事を謝らないといけなくなりますが?」
「気にしないでください。ではさっさと宝箱を開けてみましょう」
「えっっと……こういう攻略法を見つけた事にお礼を言えばいいいのか……その前にですね。宝箱を開けるのが迷宮の醍醐味というか名誉な事なのに私が一緒にいてもいいんですか?」
「いいですよ。美味しい珈琲とお菓子のお礼です。十分に対価になってますし」
「私の珈琲ってそこまで名誉な事だったんですね……」
「私にはここまで美味しく入れる事はできないの、その人でできない事を与える事は十分に凄いと思いますけどね?」
「ありがとうございます。……ではお言葉に甘えてここにいますね」
どうぞどうぞと言ってからソールがゆっくりと持ち帰った宝箱を開ける。
そこには青白く光る剣を筆頭に様々なアイテムが詰め込まれそれを見た二人の心を彩った。




