42話
夕方に起きたソールは大きく背伸びをする。丸一日何も食べて無かった事を思い出し顔を荒い身だしなみを整えてから食堂へと向かった。
食堂へ辿り着き周りを見渡すと迷宮に潜る前にガスケットと喧嘩し破壊された物などは綺麗に修復されていた。
傭われている従業員に今日のオススメを注文しソールは椅子に座り食事が運ばれてくるのを待った。
少し待っていると夕食はすぐに運ばれてきた。
今日の夕食は一角牛のスジ肉シチューと歯ごたえがあるパンに肉を挟んだ物とサラダだった。
「近くに都市の近くに一角牛の群れが来たみたいでウォーカーの皆さんが総出で捕まえて来てくれたんですよ」
「なるほど。荒くれ者も多いと聞きますが皆さん社会奉仕してるんですね」
「迷宮ばっかり潜ってるとたまに嫌になるそうですよ。あと酒のアテが欲しいとかなんとか言ってました。その一角牛は野生なので肉とかスジとか張っていますけど柔らかくなるまで煮込んであるので美味しいですよ。ごゆっくりどうぞー」
従業員に礼をいってからシチューを食べて見ると本当にスジが張っているのかと疑問に思うほど柔らかく味付けも元の世界には無い様な味付けでとても美味しかった。
流石は本日のオススメと舌鼓を打ちつつ料理を食べているとソールに気がついたラッツがやって来る。
昨日の軽食の礼をソールが言うと食堂の修繕費をで使ったお金の残りを持って来たとの事だったが盛大にため息をつかれた。
「ソール……お前な。どこであれだけ狩れば金が余るんだよ。修繕費で使わせてもらったがそれでも三万セルンは余裕で残ってるぞ」
「あっちこっちで魔物を討伐してましたからね。欲しい調理器具とかあったらそのお金で買っても大丈夫ですよ」
「客の金で買えるか!見た目からしてどこぞのボンボンかと思ったが……ソールはちゃんとウォーカーやってるんだな」
「そうでもないですよ。世間知らずのボンボンです」
「はっ!ぬかせ。それで宿の方は延長するのか?お前ずっとここにいるからたまには代えてもいと思うが?お前なら高級店でも余裕だろ」
「出て行けと言うなら行きますどご飯も美味しいので行く理由もないですね。こういう宿でしか手に入らない情報ってラッツさんが思っているより重要な物が多いんですよ。そういう訳で延長が可能ならとりあえず1カ月ほどお願いします」
俺には分からんなとラッツは頭を掻き延長分を差し引いたお金をソールに渡し食堂から出て行こうとする。そしてふと気になってソールの方を見ると他のウォーカー達と飲んだり情報交換そしている姿が目にとまった。
見た目からしてウォーカーと連んでいるのは変なのだが……何故かその場にソールは馴染みあまり違和感は無い様に思えた。
(……まぁよう分からんが凄い奴と言う事は分かった)
受付の掃除や料理の下処理などが残っていたのでラッツは少し笑いながらその場を後にする。
ソールも食事を食べ終わり宿で知り合ったウォーカー達と世間話をした後に拾ったブレスレットをガニッシュに渡す為に医療院へと向かう。
医療院に着いて医療師にガニッシュの面会を尋ねるともう退院したと教えてもらったのでソールは礼を言って医療院を後にする。
流石にこの広い街の中でガニッシュを探すのは大変かつ面倒なのでウォーカー協会に行って会えなかったら協会の職員さんに頼もうとおもい次はウォーカー協会へと向かった。
いつも行く素材の買い取り場は人が少ない……ほぼいないのでとても快適だが教会の正面玄関から入ると人がかなり多いのでソールはすぐにでも来た事を後悔する。
どこの協会でもパーティーの募集をしているサロンの様な場所があると教えてもらった事があったのでそこにガニッシュがいなかったら諦めて買い取り場に向かおうと考えそこに向かった。
サロンに辿り着くと中央入口よりは人は少なかった。
その場所にはパーティーを探すウォーカーで溢れかえっていた。
(一人で潜るより絶対に安全ですからね。パーティーは組むでしょう)
ソール自身もパーティーを組む事も視野に入れているが魔法と魔術のが違い過ぎて仲間になった者に説明するも大変だし、命をかけているのに説明しないのもどうかと思うので今の所はパーティーに入るのに戸惑っていた。
(ティアさんと採取に行くぐらいがちょうど良いですね。もう少し魔術を戦闘で使える様になっらた入るかもしれませんが……今の所は問題なしですしね)
ソールをパーティーに勧誘してくる者を丁寧に断ったり避けたりして進んで行くとようやくガニッシュとヘレセスを発見する。
二人とも怪我は完治し元気そうに新しいパーティーメンバーの面接をしていた。
たぶんゴルディーランクのウォーカーだと思われる人の面接が終わるとようやくソールに気がついた様でソールが軽く手を上げると二人も似たように手を上げた。
「ソールか。どうした?パーティーに入りたいのか?ウチは全然かまわないが」
「ありがとうございます。その時が来たらよろしくお願いしますなんですが……今日は別の用事ですね」
そう言ってからソールはアイテムバッグの中から三つのステイルランクのウォーカーブレスレットを取り出し机の上に置いた。
「これは……まさか」
「私では確認のしようが無いので仲間の物かどうかは分かりません。迷宮に潜ってお二方が倒れた辺りを通ったので拾ってきました」
嘘をつくならもう少しまともな嘘をつけとガニッシュが笑いヘレセスは真面目な表情で自身ののウォーカーブレスレットを取り出し机の上に置いてあるブレスレット近づけると計五つのブレスレットは同じ色に光りパーティーメンバーの物であると証明された。
「……また一つ借りができたな」
「返せとは言いませんし忘れても気にしませんが……気になるなら困った事が起きたら助けてくれればと思います」
「そういう奴に限って困る事って無いんだよな。お前は困る事ってあるのか?」
「常に生きる事に困ってます」
ソールとガニッシュが冗談を言い合い笑いっているとヘレセスがソールの手を握った。
「ソールさんと言いましたか……この間は挨拶もろくにせずに申し訳ない事をした。……仲間を……仲間を連れて帰ってくれて本当にありがとう」
「どういたしまして……仲間が亡くなった辛さは私にもよく分かるので」
「それでソールさん。貴方が良ければ本当に私達のパーティーに入りませんか?」
いきなりの勧誘にソールは戸惑うがヘレセスの真剣な瞳に真面目に答える。
「誘ってくれてありがとうございます。正直な所いつかはパーティーに入ろうかとは考えています。ですが今は私の中でですが時期では無いと考えているので申し訳ないですが断らせて頂きます」
ヘレセスは少し目を瞑って考えた後にゆっくりと手を離し分かりましたと頭を下げた。
「ソールさん。貴方ならいつでも歓迎しますので気が向いたら来てください」
「ありがとうございます。いつか機会があればその時はよろしくお願いします」
ここでのやる事はやったのでソールは二人に病み上がりなのに無理をしない様に言ってから素材の買い取り場へと向かった。
「振られたな」
「ああ。だが良かったのかも知れん。手を握ってなんとなくだが彼女の強さが見えた」
「ほう?どんなもんだ?」
「俺達では話にもならないな。彼女の足を引っ張るだけだな」
「なるほどな。まぁ先輩としても負けてられないしもっと上をめざすか」
「ああ。戻って来た仲間の為にもな」
ガニッシュとへレセスの眼には新たな闘志が宿り戻って来た仲間のブレスレットに約束を交わした。
◆◆◆
いつもの様に魔物素材の買い取り場に行くと今日は珍しく一人だけウォーカーが素材を売りに来ていて他の職員が対応していた。
いつもの眼鏡をかけた職員さんを探すと今日テーブルの上を拭いたり水を絞ったりしていた。
そしてソールに気がつくとバケツなどを片付けてからやって来た。
「いらっしゃいませ。魔術師さん。今日は何にしますか?新しい珈琲を仕入れたんですよ」
「じゃあそれでお願いします。迷宮に潜っていたのでウォーカーブレスレットの取れ高は最高ですよ。買い取りもけっこうあります」
「ありがとうございます!じゃあ先に珈琲でも飲みながらゆっくり新種の魔物チェックをしましょう。魔術師さんはそこのソファーにでも座っててください。準備しますので」
な仲良くなった職員は奥へと消えていったのでソールは言われた通りに近くにあったソファーに座った。
先によく自身の上半身を隠す様な大きな機材を持てるなとソール思わせる魔導具を運んでくる。そしてその後に気分良く珈琲を入れながら茶菓子などを用意し始める。
普段からよく飲んでいるのかその手際はソールより上手くとても美味しそうに見えた。
「職員さんは上手ですね」
「そうですか?と言いたい所ですが昔は喫茶店とかカフェとかの仕事がやってみたかったのでよく勉強してたんですよ。こっちの仕事がたぶん天職だったので協会で働いていますけどね」
暇そうな買い取り場を見渡すがこの職員が仕事ができないからここにいるという訳では無さそうだったので何かの理由があるんだろうなっとソールは考え余計な事は聞かない様にした。
そして持って来た大きな魔導具を操作し始める。
「この魔導具はウォーカーブレスレットに記録した映像を拡大したりできる優れものなんですよ。これで見ればこの協会システムに繋がっているので情報が共有できるんですよ」
「変な映像とか記録されてたらどうするんですか?」
「そう言うのを確認するチームのいますのでバッチリですね。それで魔術師さん。すみませんけどウォーカーブレスレットだしてもらえますか?ここに設置するので」
分かりましたと返事をしてソールは銀色に輝くウォーカーブレスレットを職員に渡した。
銀色のブレスレットを受け取った職員は不思議そうな顔でソールとブレスレットを何度も何度も視線を動かす。
そして何度かその辺にあった布でブレスレットを拭くが綺麗な艶が出ただけで銀色には変わりなかった。
そしてようやく答えに辿り着いた様で一人でポンと手を叩き納得する。
「あーこれはあれですね。国とかの付き合いが面倒くさくなってブレスレットを破壊しましたね?たまーにいるんですよステイルの上位とかミスティスクラスになってくると国から指名依頼が入って壊してランク落とす人が」
「いえ。壊した事は確かにありますけど私はシバルランクですよ?」
「またまた~。どこの世界にソロで土砂の迷宮に潜ってプロークラブ撃破して三十階代でステイルランクのウォーカー二人を救助して帰って来るシバルランクがいるんですか~。もう魔術師さんったら冗談がお好きで」
きちんと説明した方が良いのは間違いないが説明しない方が絶対に面白いだろうと考え、その辺りは適当に言葉を濁した。
笑顔のまま職員さんは魔導具にブレスレットをセットして茶菓子と珈琲を持ち、二人で上映会が始まった。




