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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
二章 迷宮都市
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28話


 ガスケットが修理した魔導車は問題無く街道を進み二回目の夜を迎え、二人で周りを警戒しながら野営の準備を進める。


 迂闊に元の世界から持って来た物を出そう物ならガスケットに興味を持たれどこから来たんだとなっても困るのでランプ等は出さなかった。


 そして準備が終わり夕食になると……見た目通りというかイメージ通りにガスケットは酒が好きだった様で収納の魔導具から小さい樽を取り出し酒を飲み始める。


 小さい樽と言っても一般人には飲みきれない量だったが……


 酒を飲みいい具合になったガスケットにソールは話しかける。


「迷宮都市まで後どのくらいですか?」


「そうだなー。遅くとも昼過ぎには着く。魔導車次第だがな」


「なるほど。ありがとうございます」


「それで?ソールは何しに迷宮都市に行くんだ?お前の装備なら行く必要もないだろ。迷宮からでるアイテムなら買えるだろうし。迷宮を踏破したって名声でもほしいのか?それとも富か?」


「両方手に入れた事はありますが……碌でもなかったので迷宮都市に行くのは只の興味ですね。私が知っている迷宮やダンジョンとは別物だったので一度見に行って見ようかといった所です。旅を兼ねてますのでボチボチ歩いてますが」


「なるほどな。土地が変われば迷宮も変わるからな。儂の故郷にも迷宮があったがそこは一階から溶岩に飲まれた迷宮だったから誰も入れなかったんだ。こっちに来てから迷宮は人が入れる物と知って驚いたのを覚えてる。ソールが見た迷宮はどんなのだった?」


「そうですね。一番記憶に残ってるのは入る度に地形が変わる迷宮ですね。魔物が魔物を倒すとレベル……進化したりするんですよ」


 そいつはおっかない迷宮だと笑いまた酒を飲みソールのジョッキも用意して今度は二人で飲み始める。


 夜も深くなってくると魔物も襲ってくるが都市の近くと言う事もあり強い魔物などは現れなくなっていた。


 剣に付着した魔物の体液を飛ばし鞘にしまうとガスケットの眼はソールの薪割り丸をじっと見つめる。


「ソーール。その剣を見せてくれ」


「嫌です」


「即答かよ!何でだよ!」


「魔術師は魔術をみればどんな人か分かります。剣士は剣技を見れば流派や生き方まで分かると聞きます。ならば鍛冶師が剣をみれば? 材質やどこで作られたか分かるかも知れません。隠すつもりはあまり無いですが余計な情報を相手に渡すのは好きではありませんので」


「分かるから見るんだけどよ!減るもんじゃねーんだから見せてくれても良かろうが。一緒に酒飲んだ仲だろ!」


「人族は付き合いで酒を飲んだりしますよ。ドワテラ族は違うので?」


「ドワテラ族の体の八割は酒できてるんだよ!そんな酒を分けるって事は命を分けるって事なんだよ!」


「それ絶対に今考えたのでは?」


「ちっ……バレたか。剣を見たいのもあるが鞘を止める金具が緩んでるから見てやろうっていってるんだぞ。親切だ親切。大事な剣なんだろう?大事にしてやれ」


「……なぜ大事だと思ったんですか?」


「杖の扱いはけっこう雑なのに剣を鞘にしまう時は丁寧だからな」


 良く見ているなーと目の前の酒飲みに感心し腰にぶら下げた鞘に触ると確かに少しだけ金具が緩んでいた。


 強敵と戦闘になりこの剣を無くせば二度と手に入る物ではないので色々なものを天秤にかけ最終的には剣の方が大事だと判断し目の前の酔っ払いにソールは剣を手渡した。


 ありがとよと笑いながら剣を受け取るが鞘からその剣を抜いた瞬間に一気に酔いが覚めガスケットの顔つきが変わる。


 一言も話さずに様々な角度から剣を観察し少し満足したのソールに話しかける。


「何か斬っていいか?」


「いいですよ。薪割り丸なので薪ぐらいにして下さい。縦に切ると石ごと斬るので横でお願いします」


 分かったと言って薪を置き横に薙ぐとソールが斬った時と同じ様にほぼ抵抗なく薪は斬られた。


 その切れ味にガスケットは更に薪割り丸に興味を持ったようで襲ってくる魔物を放置してソールに任せ観察を続ける。


「ソール。お前さんはこの剣が何でできてるか知ってるのか?」


「さぁ?ペダニウム異界合金とかじゃないですか?自分で作った物ならまだしも頂いた物なので何でできているかまでは分かりませんね」


「それもそうか。一つ忠告だが絶対に鍛冶関係の奴にこの剣を見せるなよ。できれば戦闘でも使うな。儂は長いこと色んな武器や鉱石それこそ合金やインゴットも見てきたが……こんな材質の剣は見たこともねぇ」


 異世界の作られた剣なのでそんな気はしていたとソールは言わずに頷く」


「この剣が欲しい奴なんていくらでもいるはずだ。儂も見せてくれとは頼んだ口だが……できるだけ見せるなよ。それが分かってるから何処にでもあるような剣に仕立ててあるのか……」


「薪割り丸と言うぐらいですからね。薪を割るのには超絶便利です。節があろうが割れますからね」


「収納の魔導具に仕舞っておけよとは思うが使われてこその武器だしな……よっぽど調整して欲しい時は俺の店に持ってこい余所には持っていくなよ」


「たまにそういう優しい言葉をかけて中身を入れ替える奴がいるので注意しているつもりです」


「あのな……そういう事やる奴も確かにいるがするか!この剣と同じぐらい物を用意しようとおもったらいくらかかるんだよ。それにその前にお前が殺しに来るだろうが」


「なるほど作ろうと思えばできると」


「切れ味だけなら理論上は可能だ。切れ味だけならな。まぁそれはいいか」


 そしてまたしばらく薪割り丸を眺めた後に収納の魔導具から工具を取り出し緩んだ鞘の金具などの調整を慣れた手つきでおこなった。


 それは思った以上にすぐに終わった。調整を終えた剣を受け取り身につけると長さも調整してくれた様で違和感なく装着することができた。


「ありがとうございます……と礼を言うとインバーツさんならいい物見せてもらった礼だ。気にすんなとか言いそうですね」


「お前な……確かに言おうとしたが。なんで分かるんだよ」


「そういう人っぽいですし。でも本当にありがとうございました」


「おう。そう思うんなら杖の方も大事に使ってやれよ」


「杖は自作で自分みたいな物ですから多少はいいかと」


 そう言ってまた酒を飲み出したのでソールは一人で辺りを警戒し剣の調整のお礼がてらに魔物を討伐した。


 ソールを信用しているのか剛気なのかは分からないがいびきをかき寝始めたのでソールは夜が明けるまで火の番をする。


 そして夜が明けて朝食をとりまた魔導車は走り出す。


 ◆◆◆


 山を越え悪路を進んで行くと整備された石畳の大きな街道へと出た。


 その頃には夕方になっていたが街道には行商やウォーカー達がかなりの数が往き来しており都市の活発さが垣間見えた。


 大きな橋を渡り門塀がいない門を通るとようやく迷宮都市にたどり着いた。


「門兵とか門番はいないんですね」


「まぁな。この大陸の中で一番治安が悪いのが迷宮都市って噂があるぐらいだからな。お上品に調べたりはせんな。一応は兵士とか従国士はいるから街中で問題起こせばすぐに飛んで来るぞ」


「なるほど誰でもウェルカムな感じですね」


「そういうこった。治安は悪いかもしれんが悪いなりにもルールはある。他の都市と同じ様にしておけば問題はないな。それでソールはどうするだ?お前の素材を預かってるし、護衛の代金も払いたいが……」


「そうですね。今日は遅いので私も宿を探したいので明日か明後日にでも取りに行っていいですか?」


「わかった。町の中央までこのまま行こう。街から北に行けば金持ちがすむ地域だ。そこは用がないならいく必要はない住宅街みたいなものだしな。東に行けば宿などある中央に近いほど高いが安全だ。この町の特色だが中央から離れるほど治安が悪くなる」


 魔導車で送ってもらいながら話を聞くと中央から南は武具やアイテムなど様々な物を売っている場所でこの町の商業地区にあたりガスケットがっている工房もそこにあるとのことだった。


 そして西に行けば迷宮都市と言われる所以の迷宮が三つありそこには様々な種族が富や名声を求め毎日大量にいるとの事でそこにこの町のウォーカー協会もあるとのことだった。


 かんあんな説明が終わった所で町の中央にたどり着くそこにはとても大きな木があり何百年も前からこの町を見ているとの事だった。そしてそこでロールは降りる。


「ありがとうございます。インバーツさんのお店は何という所でしょう?」


「この南に行く道を行けばインバーツ工房とかいたデカい看板がある。そこに来てくれればいい。素材だが儂が持ってる分は買い取っておこうか?」


「はい。捨てるつもり物もありましたので買い叩かれても文句は言いませんのでよろしくお願いします。相場も知りませんので」


「わかったわかった。じゃあ明日でも明後日でも適当な時に来てくれ」


 よろしくお願いしますと頭をさげてソールはガスケットと別れ南に向かって走る魔導車を少し見送った。そして自身も宿を探す為に東に向かって歩き始める。


 東の道を入るとすぐに大きな宿が目に止まる。宿の中に入って聞いて見ると恐ろしく値段が高く元の世界でいう貴族とかが泊まりそうな雰囲気を醸し出していた。ただ高いだけあって頼めば買い取りの商人などを呼んでくれたり迷宮で出た装備等の鑑定もしてくれるとの事だった。


 そういう高い宿も嫌いな訳はないが……ソール個人としては美味しいご飯が出て寝れれば良く贅沢を言えば一階で喧嘩してるような奴がいるような宿が好きだったのでそういう宿を探すことにする。


 中央から離れると治安が悪くなるとの事だったので高級な宿が並ぶ場所を少し歩くと大衆宿様な場所が顔を出し始めた。


 周りを見ると迷宮帰りであろうウォーカー達が歩いていたり情報収集にはぴったりの場所だったのでソールは一軒目の宿に入って話を聞くが……この店が建ってるあたりは中級店と呼ばれよほど迷宮で稼いでる奴以外はこの辺りに泊まるとの事でその宿は空いてなかった。


「そうですか。ありがとうございます」


「中級店だと防犯もしかりしてるし飯もでるからな。無理に下級店に泊まって何か盗まれたりするなら短くても高級店に泊まって迷宮で稼いだ方がいいぞ。その方が体も休まるしな」


「ご忠告ありがとうございます。もうしばらく中級店で探して見ようと思います」


 礼を言って宿をでて三軒、四軒と探すが何処も人気の様でなかなか空いてる宿は見つからなかった。そして二桁に突入したところで入った宿で若い女とこの店の主人であろう男が少し言い合いをしていた。


「ちょっと高いからもう少し安くして欲しいんだけど」


「嫌なら余所に行ってくれ。ウチも生活がかかっているんだ安くする理由もない」


 そんな話をしていると主人であろう男性がソールに気づき先に話していた女を無視して話しかける。


「いらっしゃい」


「泊まる場所を探しているんですが空いていますか?迷宮にいく予定なので長期になると思いますが」


「ああ。一部屋あいてるよ。だけど迷宮に潜ってる間も料金は発生するぞ。十日分借りて七日迷宮に潜っても十日分の料金をもらうがいいか?」


「問題ありませんのでそれでお願いできま……」


ソールが言い終わる前に先に話していた女が大きな声を上げてその話を遮る。


「ちょっと!なに勝手に話を進めてるのよ!この宿は私が借りようと思ってたのよ」


「そうですか?すみません」


「いや。こいつは値切ってばかりだから放っておいていいぞ」


「駄目です!いま決めました!この宿は私が借ります!」


 その時点でソールの心はこいつは面倒くさい奴だと判断し関わるの止める答えに行き着いた。


「分かりました。ではご主人。説明までしてもらってお手数かけましたが別の宿を探そうと思います」


「あー……分かった。なんかすまねぇな」


「いえ。私もご愁傷様と思いますので、ではまた」


「どう言う意味よ!」


「ああ。迷宮に潜っるウォーカーは死ぬ奴も多いし逃げる奴もいるさっきまで埋まってた店もすぐに開く事があるから下級店には泊まらん様にな」


「ありがとうございますと店主に礼をいいソールに何かを言ってる女を無視してソールは他の宿を探し始める。


 中級店はもうほとんど埋まっていたので忠告通りに下級店は無視して高級店に向かおうとすると始めに顔を出した中級店の店主が店の前でソールを探していた。


「お?さっきの魔術師さんだな。宿はあったか?」


「いえ。中級店は全滅ですね……下級店は行くなと教えてもらったので高級店に少しだけ泊まる計画です」


「じゃあ朗報だ。ウチに泊まってたウォーカーが亡くなったとパーティー仲間が知らせに来てくれた。掃除も終わったしウチに泊まるかい?」


 人が亡くなった事を喜ぶ訳ではないが沸いて出た幸運に感謝しソールはその宿に泊まる事を決めた。 

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