27話
少し荒れた道を進み。道中で襲ってきた魔物を蹴散らし、トンボの様な魔物に上手くやれば乗れるのでは? と考えて乗ると深い谷で落とされたりして余計な事を色々したせいでソールが迷宮都市につくと考えていた予定の日は遙かに過ぎていた。
食糧などはかなり余裕があり魔物強さも特に問題がないので回復薬などの消費もしないので時間がかかっているだけで順調そうに思えたが困った問題も出てくる。
それはトンボ型のの魔物に乗ったせで本来の地域を大きく外れたので出現する魔物が丘都市でかった図鑑に乗っていない物がいると言う事だった。全部が全部乗っていないと言う訳では無いが思った以上に多くの魔物が乗っていないので倒した際に現れる素材の価値が分からないのが一番の問題だった。
ソールが持つアイテムバックはいくらでも入るという訳でも無いのでいらない物は捨てなければいけないのだが、記載されていない魔物の素材はどれが高価でどれがゴミなのかが分からないのである。
「ゲーターの足とか鎌とか甲殻はかさばるので捨ててもいいと思いますが……新しい素材はどれに価値があるのかが分かりません知識って大事ですね」
大きな物はその辺りにすて羽や目玉や牙といったかさばらない物をアイテムバッグの中に詰めて行く。普段から整理しておけば問題無かったがソールはその辺りが少しずぼらなので自業自得と言えば自業自得だった。
ようやくいらない物の片付けが終わる。谷を登り見晴らしが良い所で地図を確認すると何とか自分の位置を確認できた。
確認のしかたは合っていた様で街道に向かって歩くとちゃんと街道がありソールをほっとさせる。
相変わらず道は悪く、街道は殆ど使われていない様だったがまだ新しいと思われる魔導車の轍が残っていた。
ただソールにはその轍がどちらに向いて走って行ったなどは分からなかったので気にせずに迷宮都市に向かって歩きはじめてきどな所で野営の準備を始める。
落とされた谷に比べればこの辺りの街道は魔物も弱いので気持ち楽に準備を進める。
夕食も食べ終わりこの世界に来る時にもらったランプに明かりを灯して警戒しながら本を読んでいるとかなり遠くにたき火であろう灯りを見つけた。
明るい時にみたと思うその場所は崖がありその下には川があったような気がしたのでソールは地図を確認する。
もう夜なので灰色に染まり暗くなっていたので大まかな位置しか分からなかったが、灯りがポツンと灯っている位置はどう見ても崖の下に思えた。
魔物が蔓延る地域で気持ち良く眠れる訳も無く起きていても本を読むか魔術の勉強ぐらいなので片付けてからその灯りがある方向に向かってソールは歩き始める。
地図で確認した灯りが見えるその場所は今いる街道の先だったので夜道を進んで行く。
一時間半も歩くとようやく灯りが見えたであろう位置の真上に来ていた。
ランプで街道を照らし辺りを確認すると大きな穴と魔導車の轍を発見するが……その轍は崖の下へと繋がっていた。
下がどうなっているかはその位置からでは確認できなったのでソールはそこから声を大きくして下にいるであろう者に話しかけた。
「こちらは旅のウォーカーだ!助けは必要か!」
下にいる者は命の危機では無かったようで野太い男の声が帰って来る。
「ああ!助けてくれ!魔物に襲われて魔導車共々落とされた!怪我はねえが魔物を捌きながらじゃ修理もできん!報酬は後で払うから頼めるか!」
「わかった!」
全てを信じる訳ではないが……騙して人を襲うような輩だとラッキーだと考えソールは崖を下って行く。
思った以上の高さがありよくこの高さで無事だったなと感心しているとようやく崖の下にたどり着く。
下には素人ソールが見ても直らないだろうと思われる魔導車と崖に穴を掘って細かな部品などを見ているソールの肩ぐらいの身長で筋肉量が凄い男がいた。
「おお。来てくれたか……話し方から剣士かその辺と思ったが魔術師か?」
「緊急の時は大きな声で分かりやすくがモットーなので。それで大丈夫ですか?」
「ああ。儂はドワテラ族だから人間よりは頑丈だから大丈夫だ。問題は魔導車だな」
そう言って立ち上がり正面を向いた男の手は大きく髪も立派な髭も一本一本がとても太く石の様に固そうに思えた。そしてもっとも特徴的だったのは腕や手の甲に石というか鉱石のような物が皮膚から出ており首回りも急所を保護する様に鉱石が現れていた。
そんなドワテラ族と名乗った男を不思議そうにソールが眺めていると、男はドワテラ族を見るのは初めてか? と尋ねた。
「はい。似た様な種族を見た事はありますが……鉱石のような物が体から出ているのが珍しくて。不快にしたのなら謝罪します」
「かまわんぞ。始めてドワテラ族を見る奴はだいたいそんな感じの反応だしな」
「ありがとうございます。その鉱石?と言うか石みたいなのは痛くないんですか?」
「ああ。そう見えるかも知れんが……人間でいう髪や爪に近い。体の一部だから特に傷みがあるわけでも邪魔になる訳でもない。儂らのご先祖さまが火口付近を好んで住んでたらしく熱い物とかが多かったから体を守る様にこうなったんだとよ」
「なるほど。そうでしたか」
「儂からすりゃ……人間の癖にドワテラ族みてーに額に宝石をつけてるお前さんが珍しいがな?」
「これですか?若気の至りでつけたら外れなくなったのでお気になさらずに」
「がははは!嘘を言うにしても面白い方がいいわな。お前さん名は?儂はガスケット・インバーツだ。適当に好きな様に呼んでくれ。迷宮都市で魔導具の技師をやってる鍛冶もやってるがな」
「これはご丁寧にソールです。旅をしながら知見を広めている魔術師もどきです」
ソールの答えにガスケットは自慢の髭を触りながら少し考え再度質問する。
「ソールか……姓は?」
「そうですね。ソール・ラックレディとかでどうでしょう?今考えたので必要かどうかは分かりませんが」
「なるほどな。じゃあ意味ねーな」
「そういう事です。意味はありません」
何が面白かったのかは分からなかったが二人はお互いに大きな声で笑いあった。
お互い笑うのに満足し話を聞くと迷宮都市から少し離れた所に鉱石の採取などに来ていて帰る時に落ちたとの事だった。
「直りさえすりゃ担いでも上がれるが……人が集中してやってる時に限って魔物が襲ってきやがるから直る物も直らね」
「分かりました。安くしておきますので魔導車が直るまで護衛しますので作業してもらって大丈夫ですよ」
「分かった。川や崖から魔物が来るから気をつけろよ。よっぽどの時は言ってくれ。それなりには戦える」
ソールが分かりましたと返事をするとガスケットは自分で掘ったと思われる穴に戻って行き石材で作ったと思われるテーブルの上で器用に工具を使い壊れた部品の修理を始めた。
魔導具技師の仕事がどういった技で魔導具を修理するのかとても興味があり観察したかったがソールの雷の触角に様々な魔物が引っかかる。
護衛を言う形で依頼を受けたので遊んでいる訳にも行かないのでソールは仕事を始め様々な魔物を倒していく。
ソールを谷に落としたトンボの様な魔物やそれの幼虫であろうヤゴの様な魔物やガスケットをここに落とした張本人であろうミミズの様な魔物など思った以上の数の魔物が襲ってきた。
ただそこまで強いと言うわけでも無くヘルゲーターと同じぐらいか少し強い程度だったのでソールは淡々と処理をする。
ガスケットの集中力も凄まじく一度作業に没頭してしまえば戦闘音程度ではその手を止めずに動かし続けた。
ようやく辺りが明るくなり始める頃にはガスケットもかなりの部品を修理が終わっていた。
ガスケットが修理した部品を魔導車に組み込み魔力を流すと上手くいった様で魔導車はゆっくりと動き始めその頃には太陽も顔を出し朝を迎えた。
「よし。ソール終わったぞ……ってけっこう倒したな」
朝になり襲ってくる魔物が減ったのでソールは倒した魔物の素材を整理する。
「魔物が多かったでしたがインバーツさんよく無事でしたね」
「このぐらいじゃ相手にもならん。もっと大変な場所とか採取に行くからな。それで?素材を分けてるみたいだが……どういう基準で分けてるんだ?」
「もうすぐ収納の魔導具がいっぱいなのでどれが高価か分からないので勘で分けてます」
捨てる方はどちらかとガスケットが尋ねるとソールが右を指さしたので大きくため息をついた後に高価な物も入ってると言いながら頭を掻く。
「そんな事言われても素人なのでどうしようも無いかと」
「いや……あんだけ魔物と戦って無傷のトーシローが何処の世界にいるんだよ」
「目の前にいるとしか言えませんね。魔導車に問題は無さそうですか?」
「ああ。速度はそこまで出せないが……お前さんに護衛してもらいながらなら迷宮都市まで帰られるだろう。そこまで護衛を頼めるか?」
「分かりました。断っても良いのですが……ここまで来ればお付き合いしましょう」
「分かった。代わりと言っちゃなんだがその素材は俺が持ってる収納の魔導具に入れといてやるよ」
ありがとうございますとソールが頭を下げるとガスケットは素材に近づき箱の様な物を構え魔力を流すと吸い込まれる様に素材は姿を消した。そして出した工具等を片付けると出発の準備が整った。
この辺りは河原で岩もゴツゴツとしておりどうやっても魔導車では走る事は無理だったのでどうするんだろうとソールが考えているとガスケットは道中の護衛は任せたぞ。と言って軽々と自分より遙かに大きい魔導車を担いだ。
この河原沿いをしばらく進めば斜面が緩くなる所があるとの事なのでそこから街道に上がるとの事だった。
「分かりました。重たく無いんですか?軽い訳はないと思いますが」
「ん?これぐらいなら軽いな。もっと重い剣とか扱ったりするしな。お前さんが夜中に使ってたあの杖の方が重たいだろうに」
「なーんで見ただけで分かるんですかね。いいですけども。では先を歩いてもらえますか?襲ってくる物がいたら倒しつつ後ろから付いていきますので」
「わかった。疲れたら言ってくれ」
「それは私の台詞では?」
「違いねーや」
場所によってはガスケットの足は地面にめり込むが普段の歩く速度と変わらない速さで進んで行く。
魔力の流れは確認できなかったので純粋な筋力と身体能力のみで行動しているガスケットにさすがのソールも少し驚き辺りを警戒しながら後を追った。
襲って来る魔物を倒し一時間も歩く頃にはガスケットが言った様に緩やかな斜面があった。
魔導車を担いでいたが相も変わらずにガスケットの速度は落ちず緩い坂を上るように斜面を登った。
「よほどキツい時は言って下さい。変わりますので」
「おう。ありがとよ。まぁでもこの状況なら担いでる方が楽だな。儂は護衛にはむかん」
そんな話をしながら斜面を登り切りしばらく平坦な道を歩くとようやく街道が顔をだした。
ガスケットはよっこらせのかけ声と供に担いでいた魔導車を降ろす。そしてすこし魔導車を調べたると担いだ事で何処かが壊れたという事も無かったので魔導車に乗り込んだ。
「普通の魔導車の半分ぐらいしか速度が出ないと思うから普段は振り切れる奴でも追い着くから護衛は任せたぞ」
「分かりました。よほどの時は言いますのでその時は止まってもらえればと思います」
分かったとガスケットが返事をしソールが屋根に上ると魔導車はゆっくりと迷宮都市に向かって走り出した。




