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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
二章 迷宮都市
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26話


 王城都市へ向かうディアナ、ティア、ロトナや護衛のウォーカーのレオルド達を見送った後にソールもトーバやベスパといったお世話に人達に別れを告げる。


「おう。ソール。気が向いたらまた戻って来い」


「はい。トーバさんも元気で。迷宮都市に飽きたら王城都市に向かうのでかなり先になると思いますがまた会いましょう」


「ソール。次に会ったら覚悟しておきなよ」


「はい。鬼腹筋のベスパさんもお元気で。料理美味しかったのでそちら方面を伸ばす方がいいと思いますよ?」


「ぬかせ。私は負けず嫌いなんだよ」


 それは知っていますと笑いソールは迷宮都市の方角に向かう大型の魔導車に乗り込む。


 世話になった人に頭を下げるとちょうど魔導車は走り出したので小さく手を振って別れをつげた。


 街道を走り、丘を登り、他の魔導車やウォーカー達とすれ違う。魔導車の速度は速い。


 ソールは普段から走り込んでいた景色との違いを楽しんでいると前方に大きな分かれ道が現れた。


 片方はきちんと整備され綺麗な道だたがもう一つはもうあまり使われていない様で凹凸が激しく水たまりなどもあるような道だった。


 その分かれ道に差し掛かると運転していたウォーカーはトーバから聞いていた様でそこで止まりソールに話しかける。


「こっちの悪路の行けば村の方に回って迷宮都市に行けるぞ。と言うか迷宮都市に行くならこのまま直通で行って方が良くないか?俺達もお前みたいな強いのがいると助かるんだが……」


「迷宮がきになるだけで急いで行くほどの事でもありませんからね。皆さんなら大丈夫ですよお強いので。それと少し聞きたいのですが街道が綺麗なのってどうしてですか?夜には物とか出るのに破壊されてませんし」


「ああ。橋とかは壊されるが今乗ってるような大型の魔導車には整地する様な魔導が組み込んであるからな。走ってれば道が綺麗なる。だからそっちの悪路は使われなくって長い道だからそんな感じだ。途中から他の道と合流するから綺麗になるけどな」


「なるほど。お答え頂きありがとうございました。皆さんもお気をつけて」


「ああ。お前もな。俺達も迷宮都市が目的地だから生きてればまたな」


 はいと言って手を振ってソールは悪路へウォーカー達は綺麗な街道を進み始めた。


 少し進むと坂道に入る。最初は緩やかだったが段々と山の様にキツくなり登り切る頃には辺りを一望できるほどの場所だった。


 その丘の上から見下ろすとかなり遠くだったが魔導車がみえたり行商が見えたりもした。その方向は先ほど分かれた街道の方角で魔物の姿もほとんど見えず安全そうだった。


 逆に自分が選んだ道の方を眺めると大きなトカゲがいたり巨大なトンボが空を飛んでいた。


 少し休憩した後にソールは丘を下って行く。


 丘を下り終えた頃には太陽は沈みゆっくりと黒に近い灰色の夜になっていく。


 その辺に倒れている木を薪割り丸で適度な大きさの薪にする。並の剣ならすぐに傷み研ぎなどに出さなければならないが薪割り丸と名付けられた名剣は名前の如く何の抵抗も無く木を切っていく。


「下にある石まで切れるってどういう事なんでしょうね?」


 切れた岩をテーブル代わりになれた手つきで野営の準備を進める。


 たき火の準備をし、肉を焼き、スープを温め、遠くから聞こえる獣の遠吠えに耳を傾ける。


 もとの世界で学園を卒業しすぐに冒険者になり慣れない手つきで野営した事などを思いだして少し楽しくなる。


「過ぎれば良い思い出でですね。テントが燃えた事もありましたしあの時はどうしようかと思いましたね」


 この世界に来る前に気づいた様に私は旅をしたりするのが好きなんだと再認識する。


 そして気分良く夕食を食べた後はこれからがメインイベントだと言わんばかりに索敵範囲内に大量の魔物が引っかかる。


「動物とかだと狩りすぎると生態に影響があったりしますが魔物はあまり関係ないと本には書かれていたので気にせず倒しますか」


 軽く背伸びをし杖を構え大量の魔物達に向かって歩き始める。


 人のいない丘陵地の夜に雷が何度も発生する。


 ようやくソールが仮眠を取れたのは夜が明ける少し前だった。


 時には休憩し、たまにすれ違うウォーカー達と情報交換をし、訓練がてらに急斜面を駆け上がったり、魔物の巣に向かって斜面から大岩を落としたりして九回ほど夜が顔を出した頃には街道がまた綺麗になり始める。


 目をこらしてその先を見ると丘都市に比べれば小さいが村にしては大きい集落があった。


 村を囲う様に石材と何かを混ぜた物で城壁が立てられ村の外には丘都市と同じ様に作物を作る畑や牛に似た生き物やそれぐらい大きい蛙が草を食べたりしていた。


「牛っぽいは放牧だと思うんですけど……蛙は何でしょうね?牛っぽいのより大きいですし食用の可能性もありますが……保有魔力はけっこう大きいですよね」


 流石は知らない世界と思いながら村に近づくとそれなりに交通量は多いようで入り口で少し

 待たされる。


 そして門兵と思われる人に身分を確認されたので身につけていたウォーカーブレスレットをみせた。


「シバルランクのウォーカーかどうしてこの村に?」


「この村に用事があった訳ではありませんが旅をしていて迷宮都市に行こうと考えています。その道中にこの村があったのでよりました」


「なるほどな。直通の魔導車もあるだろうに」


「生きる事にそんなに急いで無いのでボチボチ行こうかと新しい発見もよくありますし」


「例えば?」


 そう尋ねられたのでソールは先ほどみた大きな蛙を指さす。すると兵士は納得した様に頷き蛙について教えてくれた。


 その蛙はこの辺りを好んで住み、昔からこの村と供にあった生き物だ。この村の人間はその蛙をムラモリガエルと呼び昔から慕っていた。


 こちらから何もしなければ昼間は眠たそうにしていて夜になればこの辺りに出現する魔物を食べてくれる動物だ。


「魔物を倒せるとか地味に凄いですね」


「夜になるともっとデカいのが下の川から出てくるぞ。ヘルゲーターとか食ってた所は見た事あるな。そんな感じで村とお互いに共生してるからちょっかいかけるなよ」


「わかりました。この村ってどこか寝泊まりできる所はありますか?」


「あるには宿街あるが……そこまでデカくないから埋まってるかも知れないな。宿も少ないこの道をまっすぐ行って右だ」


 ありがとうございますと礼を行ってソールは村の中に入っていく。ただ村といっても道は舗装され家なども大きく綺麗で村というには街に近いイメージだった。


 そんな村の中を門兵に教えてもらった道を進んで行くと宿が並ぶ通りがあった。


 三、四軒ほどあったので何処かに泊まれるだろうと思い一軒一軒回って見たがどれも全て埋まっておりソールが泊まれる場所は一軒もなかった。


 ただそんな事はよくある事なのでソールは特に気にせず村の噴水の近くに座りお土産で売っていたムラモリガエル饅頭の十六個入りを一人で食べ始める。


 ここで泊まれないならまた野営するのもありだなと考えていると小さな兄弟がソールの饅頭をみていた。


 食べますか?と声をかけると兄弟は頷いたので七個ほど残った饅頭を箱ごと二人に渡す。


 七個なので小さな子供二人で分けるのは難しいかなと考えていると兄が三つとり弟に四つ渡した。


 その兄の行動に満足しソールが頷いていると食べ終わった兄弟は礼をいって去って行った。


 いい物も見られたので少し噴水の近くでくつろいでいると初老の男性が現れ近くには先ほどの兄弟が立っていた。


 話を聞くと兄弟はその孫でもらった物のお礼をいいに来たとの事だったので礼を受け取り少し話をする。


 その男はこの村の村長との事でソールの姿を上から下まで何度か視線を往復させた後に頼み事をする。


「あんたはウォーカーなんだろ?良かったら討伐の依頼を受けてくれないか?」


 お金に困っている訳ではないがいくらあっても困る物ではないのでソールは条件を提示する。


「一晩泊まれる所と夕食付きを依頼料に乗せてくれるなら受けましょう」


「ウチの家なら部屋は余ってるからかせるが内容も聞いていないのにいいのかい?」


「いい物も見れて気分も良いですからいいですよ。報酬と内容は?」


「報酬は千五百セルンで。討伐する魔物は川辺に住み着いたケインペルエスだ。報酬が少し安くて通ったウォーカー達は受けてくれない。村にいるウォーカー達は数日遠出でいないんだ」


「まぁ……ウォーカーも命がけですからね。川辺からカエルも上がってくると聞きましたので近いですか?」


「ああ。四半時も歩かなくてもつく。今の時間なら見える所にいると思うから見ておくなら案内するが?」


「お願いします」


 幼い兄弟を家に帰らせ、村長が先に歩きソールは後をついていく。村の畑を抜け斜面を下ると川の流れる音が聞こえる。


 そして河原にでて川沿いを歩いて行くと魚を平べったくして手足をつけたカエルの数倍大きな魔物が昼寝をしていた。


 今倒せばいいのではと思って村長に尋ねると水から上がるとその鱗はとても固く並の攻撃では傷一つ着かないとの事。


 かと言って夜になると魔物の本領発揮なので並のウォーカーでは討伐は難しいとの事だった。


「無理を言って悪いができるだけ早く討伐を頼む。ケインペルエスはこの辺にはいない魔物だたがどこからから流れて来てムラモリガエルを食うんだ。今の所俺達村人に害はないが蛙たちが減っていくのが可哀想でな。この村ができた頃から蛙とは供にあるからな。できるならこれからも仲良くしたい」


「そういう関係っていいですよね。わかりました。すぐに討伐するのでお待ちを」


 すみませんがお任せしますとと言って村長が頭を下げて振り返り村に戻ろうとするとソールの声が届く。


「ライトニングシェル」


 凄まじい光と音が背後から発せられたので村長が慌てて振り返る。


 村長終わりましたよ。と、何の事かわからなかったがケインペルエスがいた所を見ると頭部と胴体が切り離されゆっくりと崩壊し始めた。


 崩れていくケインペルエスを呆気に取られながら最後まで眺めると尻尾が素材として残った。


「素材はどうしますか?いらないと言うなら貰いますけど」


 その言葉で村長はようやく我に返り言葉を絞り出す。


「ああっ……大丈夫です。安い報酬なのでウォーカーさんが使ってください」


 ありがとうございますと言ってソールは石の上を上手く飛んで渡りケインペルエスの尻尾を回収しアイテムバッグに仕舞った。


 そして村に戻る道中で自分達の脅威が去った事を悟ったのか少しずつ蛙が川原に現れ始め日向ぼっこを始めた。


「ウォーカーさん……ありがとうございました」


「はい。どういたしまして」


 そしてその日は村長の家に泊まり豪華なご馳走でもてなされ、久しぶりのお風呂で体の疲れを癒やした。


 ただよく眠れたかと言うとそういう訳でも無く……田舎あるあるの蛙の大合唱でソールの睡眠は邪魔された。


「いやまぁ……そこまで寝なくても問題は無いんですけど……宿が少ない理由はこれもあるんでしょうね」


 そして朝を迎え食料などを村長から貰いソールは迷宮都市に向けて歩き始めた。

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