25話
ロトナとの昼食を楽しみ宿に戻るとティアとベスパが打ち合っている様で木と木がぶつかり合うような音が聞こえた。
その音に釣られるに様にソールはそちらに向かって歩いて行く。
曲がり角をまがった所で思ったとおりティアの特訓でベスパと木剣で打ち合いをしていた。そしてその近くにはは姉のディアナも今日はウォーカー協会の仕事が休みのようで座って二人を見守っていた。
現れたそーるに気がつくと軽く手を振って頭を下げた。
ソールはディアナに近づき挨拶をする。
「ディアナさんこんにちは」
「こんにちは。ソールさんに用事が合ってきたんですけど何処に行ってたんですか?」
「はい。公園で本を読んでいたらロトナさんがやって来たので少し話をした後に一緒にお昼ご飯に行って来ました」
「ソールさんってロトナと仲いいですよね?」
敵対しない限り他人とは割と似た様な距離だとは思っていたがディアナにそう言われ少しロトなの事を考える。
「言われて気づきましたが……見た目では無く雰囲気というかその辺りが私の親友に少し似ているからかもしれませんね。でもティアさんとディアナさんとも仲いいと思いますよ?」
「そうですか?私はソールさんとご飯食べに行ったこと無いですけどね。ティアはよく自慢してきますけども!」
そう言われれば言った無かったと思いだす。ティアとは走り込みに行って帰って来るとほとんど夕方なのでウォーカー協会にいって達成を報告に行った後に一緒に食事を取る。そこで反省会や世間話をして帰宅が基本的な流れだったのでディアナとは機会が無かったので露骨に話の流れを変える。
「ロトナさんから聞きましたけど。ディアナさんも王城都市に行くそうですが……ティアさんも一緒に行くんですか?」
「はい。ここに比べて王城都市の周辺と迷宮は魔物が強いのでウォーカーを続けるならここに残って腕を磨いた方がいいと思って話をしたんですが……一緒に来るの一点張りなので連れて行く事にしました。どちらも危険なのは変わらないので目が届く方がいいかなっと思ったので」
「それでいいと思いますよ。シバルランクまで上がったとはティアさんはまだまだ子供だと思うので」
「あれぐらい年頃って子供扱いしすぎても駄目ですし難しい所です」
ソールとディアナがそんな話をしながら戦っている二人をを眺めているとティアがベスパの木剣を上に弾き絶好のチャンスが生まれた。
普段の走り込みが生きているのかはわからなかったがベスパに始めて生まれた隙にティアが踏み込み勢いそのままに腹にめがけて突きを入れる。
ソールもおおっと声を出しその突きが決まると確信する。
だがベスパも元とはいえステイルランクのウォーカー。シバルランクになったばかりの新人のウォーカーの攻撃に当たるなどプライドが許さなかった。
その場にいた誰もが予想できなかった動きで体を捻って攻撃を躱し、反撃の一撃をティアの脳天に叩き込み決着した。
頭を抑えうめき声を上げるティアと肩に木剣を担ぎ難しい顔をしているベスパにソールは拍手を贈る。
「ベスパさんが油断していた訳では無いと思いますので今回はティアさんの勝ちですね」
ティアもディアナも何の事か分かっていなかったのでベスパがため息をつき二人が見える様に自分のエプロンを見せた。
そこには何かが擦れた痕があった。
躱されたと思われていたティアの突きは格上のベスパを捉えていたのだった。
「舐めてた訳じゃないが……今回はティアの勝ちだね。一発入れたら勝ちって決めてあったからね」
「……じゃあ最後はどうして殴られたんですか!?普通に痛いんですけど!」
「ん?それはむかつくから……じゃ無くて勝ったと思って油断していると痛い目をみるって事を教えてやる為だよ」
納得いかない様な顔をしながらティアは立ち上がりベスパに礼を言って姉とソールがいる場所に戻ってくる。
ティアにソールが労いの言葉をかけようとするとベスパがソールに向けて木剣を構えた。
「よし!ソール今日こそその顔面に一発入れる私と戦いな」
「えー……別にいいですけど晩ご飯奢ってもらいますよ?」
「いいだろう!あんたに負けたままだと鬼蜂の名が廃るからね」
「あーそんなんでしたね。鬼腹筋かと思ってましたよ」
冒険者にしろウォーカーにしろこんな感じの戦闘民族はどこにでもいるなと思いながらソールはゆっくりと移動する。
位置が決まった所でベスパに一つ忠告する。
「ベスパさん。辺りだとティアさんやディアナさんが巻き込まれるかもしれません」
わかったと返事を位置を確認する為にベスパが振り向くとまた気の抜けた声と供に腹部に凄まじい衝撃が走った。
余りの衝撃にベスパが崩れ落ちるとそこにはソールが立っていた。
「ベスパさん……元ウォーカーなんですから前と同じ攻撃を喰らうのはどうかと思いますよ?」
「おっお前な……」
「卑怯とは言わせませんよ。魔物相手によーいドンで戦う人はいないでしょう?そういう訳で晩ご飯よろしくお願いします」
加減はしたつもりだったが思った以上にいい所に入った様でベスパは意識を失い、ティアとディアナは盗賊でも見るような目でソールを見る。
「ソール先生!卑怯ですよ!」
「ソールさん……私もそう思います……」
二人の批判など無視しても良かったがソール自身の名誉の為に反論する。
「あのですね。ベスパさん相手にまともにやって勝てる訳無いでしょうに」
「だったらなおさら自分を磨いてくださいよ!先生」
「と言うよりも……私は名誉の為に戦った訳ではありません。勝たなければならないから勝っただけですよ?ではティアさんに聞きます。貴方が負けた時にディアナさんが死ぬとなればどんな方法を使っても勝ちたいですよね?」
「……はい」
「そういう事です。名誉の為に死ぬと言うなら格好はいいですが……勝たなければ駄目な所で負けるのは話になりません。例え泥水を被ろうが罵倒されようが勝って守っての命です。それは覚えておいてくださいね」
「なっなるほど!だから先生は私にそれを教える為にわざと卑怯なてを使ったんですね!」
「なんでもいい方に考えるのは貴女の良い所ですが違います。私は楽して勝ちたいから楽したんです」
「先生どっちですか!」
「人には二面性があると知っておきましょう。真面目な私。嘘を言う私。それはどちらも私ですがどちらの私に重点を置くかはティアさん次第と言う事です」
ソールの言葉にティアはう~んと腕を組み考え始める。
「楽しなくても勝てるって事ですよねソールさん?私達の目の前にいたのにどんな攻撃したか私にはわかりませんでしたし……」
「その辺りはディアナさんのご想像にお任せします。めっちゃ強い訳でも無いですが言うほど弱くはありませんよ」
「その辺りは私も妹も身をもって経験しているのでわかってますが……いやまぁいいんですけど……」
小さくため息をつくディアナを笑い気絶しているベスパを宿のソファーの上に寝かせる。もう少しすれば目覚める雰囲気があったので三人は用事も無かったので宿の中で話始める。
「そうそう!ソール先生!お姉ちゃんから聞いていると思いますけど私達は王城都市に行くので先生も生きませんか!」
「いつかは行くと思いますが……今はいいですね。迷宮にとても興味が湧いていますので迷宮都市に行ってみたいので」
「私もいこうと思ってますけど王城都市にも迷宮はありますよ!先生一緒に行きましょう。教えてもらいたい事もまだまだあるので!」
「そう言ってもらえるのはありがたい事ですが……次にティアさんとあった時に何処まで成長しているのかを見たいので止めておきます。ティアさんも一度私から離れることで見える事もあると思いますからね」
どうしてもソールと一緒にいたいティアが駄々をこねようとするがディアナが頭を撫でながら優しく諭す。
「ティアもこれからまだまだ強くなるし、ソールさんも迷宮都市で色んな事を経験してくると思うのだから次に会う時にどれだけ二人が成長できてるかを見せ合うの。ティアは少し危なっかしいけどソールさんは強いからまた会える日を楽しみにしましょう」
「ううっ……わかった。ソール先生!こんどあった時は覚悟しててください!」
「ティア……それは色々と間違ってるからね」
そんな姉妹を微笑ましい眼差しで見つめた後に優しく二人の頭をソールは撫でる。
◆◆◆
それから少し日が流れディアナ達が王城都市に向かいその護衛にレオルド達や更に高位のステイルランクのウォーカーが護衛に着く事が決まりソールが安心しているとウォーカー長のトーバから呼び出しがかかった。
ウォーカー協会に属していなかったらお前が来いの一言でも言えるのだが組織という物に属しているのでそういう訳にも行かないので協会の執務室に向かった。
「ソールです。帰ります」
「駄目だ。入れ」
こんなくだらない冗談を何度言っても怒らないトーバは人間ができているんだなっとソールは感心し元の世界の騎士団長の事を少し思いだした。
『雷帝のソール!この私に喧嘩を売っているのか!!』
『おぅいえ~』
(今、思えば……真面目な話してる時にあんなことを言われたら普通はキレますね)そんなことを考えながら執務室の扉を開けて中へと入る。
いつもの様に座る様に言われソファーに座るとドバードバーっと適当に粉末や砂糖や湯を入れた珈琲を出されトーバも座る。
「これはこれで個人的にはいい味出してるのでいいのですが……淹れ方を覚えてみては?」
「他人に淹れてもらった方が美味いからそんな面倒な事はせん。それで話だが……ソールお前は迷宮都市に行くらしいな」
「聞かれたら答えているので何処でその情報を!?とは言いません。ディアナさん達を見送ったらぼちぼち行こうかなっと思っています」
「そうか……迷宮都市のウォーカー長とは顔なじみだからな。紹介状の一つでも書いてやろうか?」
「トーバさんが私の事をどう思っているかわからないので止めておきます。何も知らないで行くのも一つの楽しみですし」
「お前は見た目以外はウォーカー気質だよな。自分で色々調べてる様だが何か聞きたい事はあるか?」
「そうですね……ではここから遠回りでもいいので迷宮都市までの人が少ないルートを教えてもらえますか?」
「おう。任せろ」
何故か嬉しそうにトーバは地図を開きここから迷宮都市のルートを書き込んでいく。ソールの強さがあれば野営も可能なので、道中に村がある事などを伝えつつ出現する魔物なども伝える。
全てのかきこみが終わるとソールはトーバに感謝を伝えて質問する。今日はどうして呼んだのかと言うことを。
この程度の用事なら誰かにたのめば良い事だったのでソールはそれが疑問だった。
トーバは少し難しい顔をした後に頭を掻いてから答えた。
「お前にはちゃんと礼を言って無かったと思ってな」
「ん?何をですか?」
「ああ。ディアナとティアを助けてくれた事だ」
「聞いたと思いますが?」
「いや……あいつらの親がウォーカーだったって言うのは知ってるか?」
「はい」
「なら話は速い。あいつらの親と俺はよくパーティーを組んでてな。死んだ両親に変わって礼を言っておこうと思ってな。二人を助けてくれてありがとう」
若い時のディアナがウォーカー協会で働けたのも悪い人間に財産を持って行かれなかったのも子供だった二人が二人で生きていけたのも目の前の人のお陰だったのかとソールは答えを見つけた。
「なるほど……トーバお父さんも大変でしたね。あの二人がまっすぐなのも貴方のお陰ですね」
そんな事を言われると思って無かったトーバは珈琲を吹き出し盛大にむせる。
「おっお前は何を言ってるんだよ!」
「そのまんまの意味ですよ」
顔を赤くしたままトーバは用は終わったからと言って速く帰れと言わんばかりにソールを追い払おうとする。
「そんな照れなくともいいですよ」
「照れてない!用事は終わったからささっと帰れ!俺はクイーンゲーター探したりで忙しいんだよ!」
普段なら絶対に余計な事は言わないが……少し気分がいいのと目の前の人なら大丈夫だろうと思いソールは答える。
「一つ仕事を減らしましょう。そのクイーンゲーターなら私が倒しましたよ。嘘を言っているかどうかの判断はトーバさんに任せます。では失礼します」
その態度にトーバは呆気に取られるが長年の経験上、嘘を言っている訳も無くそれを実行できる実力をソールは持っていたのでクイーンゲーターの捜索の打ち切りを決意する。
「これで嘘だったら殴る」
大きくため息をつきいつも使っている椅子に座るトーバの顔は笑っていた。
そしてまた日が流れディアナ達は王城都市に向かいソールも迷宮都市に向かう日がやって来た。




