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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
二章 迷宮都市
24/48

24話


「護衛ですか。どちらまで?」


「王城都市までだな。元々俺達は王城都市をメインで活動していたからメンバーの再加入も考えて一度戻ろうかと考えてる。ソールは?」


「私が知っているダンジョンというか迷宮に違いがあったので講義を受けていました」


「なるほどな。俺達もよく行くが……中々に危険な場所だな。俺の使ってる戦斧も迷宮で出た物なんだ」


「なるほど。聞きたい事は山ほどありますが……頭でっかちになりそうなので迷宮に行ってから勉強しようと思います。


「って事はこの都市から出て行くのか?行き先は?」


「はい。迷宮都市に行ってみようと考えています。迷宮初心者にオススメな都市ってありますか?」


「ソールは魔術師だし迷宮都市でいいかもな。あそこは三つほど迷宮があるから割と楽なのもあれば高難易度もあるし落とすアイテムも色々でる。王城都市の迷宮は甲冑や近距離の武器がよく出る場所だから魔術師が行っても面白くはないな」


 しばらくそんなやり取りをしているとダガフがレオルドにそろそろ時間だと言ったので二人はソール達と別れてウォーカー協会へと向かった。


 ソールも特に用事は無かったがここにいてもベスパの邪魔になると思って立ち上がった。


 朝食の礼を言って外に出ようとすると何かを思いだしたようでベスパが手を叩きソールを呼び止める。


「そうそう。迷宮にいくなら滅多に出る事がない物があったりするからそれも楽しみにするといいよ。実際にそれ狙いで潜る奴も多いからね」


「流石にそれは気になるんですが……」


「行ってからのお楽しみだね。迷宮で死んだら駄目っていう所と同じ所もあるから行くなら気を付けて行ってきな」


 その事を尋ねようとするが掃除の邪魔と追い出されたのでソールは仕方なく公園の方に向かう。


 今日はティアの訓練も休みと言う事もありソール自身の走り込みも休みだった。


 ベンチに座り偽装アイテムバッグから本を取り出し読んでいると朝も早いのに顔馴染みになった子供達に囲まれる。


 蝶々作って!犬作って!等と公園で本を読みながら魔術の練習でリクエストに応えていると仲良くなったのだが……今日もいつもの様に平和だった。


 ソール自身も子供が嫌いな訳でも無く子供から学ぶ事も多いので無属性の魔術で色々作って本人も遊び始める。


 子供達も魔術でできた鳥や犬や怪獣を追いかけて何処かで行くので騒がしいのはソールが公園に来た時ぐらいだった。


 魔術を使ったりナイアの魔術を見て分かったが事がある。それは魔術にも魔法と同じ無詠唱の様な物が存在する。


 今現在ソールが使う魔術は宙に形を書かないと発動しない。だがオプキュティアと戦った時にナイアが使った魔術は完成した形をすぐに出し即座に魔術を発動させていた。それはソールにはまだできない事だった。


 それを見た事で気づいた事もある。やはり魔術は魔法に比べて威力はあるが一呼吸遅い事だった。


 魔法は無詠唱→発動で素早く発動できるが、魔術は術式を出す→展開→発動だったのだ。ナイアがしなかっただけでもっと早く発動できるかも知れないがオプキュティアの様な高速で戦闘を行う者にとってはその一呼吸が大問題だ。


(まぁ……そのデメリットを消す為のパーティーだと思いますが……)


 魔導具は値段が高いので今の所は後回しと考え魔術をどう今の魔法主体の戦闘に組み込むかが今後の課題になりそうだった。


 本を読むのを止め背伸びをするとソールの顔に影がかかる。


「おはようございますソールさん。今日も子供達に大人気ですね」


「ロトナさんおはようございます。私が人気なのか魔術が人気なのかは難しい所ですね」


 それは難しい所ですねと冗談を言って笑い公園の入り口で買った二つの珈琲の内一つをソールに手渡した。


 ソールは礼を言ってその珈琲を受け取り二人は話し始める。


 そしてしばらく話した後にロトナが少し真面目な顔つきになりソールに話し始める。


「私、王城都市に行く事になったんですよ」


「えっ?丘都市から追放されたのですか?」


 その台詞がくる事がわかっていたのかロトナはクスクスと笑う。


「ふふっディアナが言ってました。ソールさんに話すとたぶんそういう事を言うだろうって」


「私の思考を先読みするとは……流石はディアナさんと言う事ですか。どうしてまた王城都市にトーバさんのセクハラが嫌になったとかですか?」


「実はそうなのです。では無くて。後でディアナからも聞くと思いますが王城都市のウォーカー協会がかなり忙しいとの事なので引き抜きですね。この都市が嫌いな訳ではありませんがせっかくのチャンスなので行ってみようと思っています」


「なるほど。いいと思いますよ。協会の仕事は詳しくは知りませせんが二人なら優秀ですしやっていけると思います。何をするにしても簡単な事はありませんからね。私ももう少ししたらこの都市から離れてまずは迷宮都市に行ってみようと考えていますので」


 ソールはベスパと話した似たような話をロトナとも話し盛り上がる。そしてベスパが何か言いかけていたような事があったのでロトナに心当たりは無いかと尋ねた。


 するとそれは思った以上に重要な事だったらしくロトナはすぐに答えた。


「たぶんですけどそれはクテルの事だと思います」


「食って寝る?」


「それは休日の私ですね」


 冗談を言える仲になった事を笑い。何処かでその言葉を聞いたなとソールは思い出そうとするが聞いた方が速いのでロトナの説明に耳を傾ける。


 クテルという物は迷宮に出現する魔物を討伐する事で本当にごくごく希に出現する魔物の命を形にした物だ。


 炎を纏った魔物がいる。それがクテルとなり武具に吹き込めば武器であれば炎の刃となり敵を切り裂き弓に纏えば炎の矢を放つ。防具に吹き込めば炎を纏う鎧や盾となる。


 迷宮に出現する全ての物は全てクテルになる可能性がある。ただ本当に出現確率は迷宮任せだ。十年迷宮に潜り続けたベテランが一度も手にした事が無いなど本当にざらにある。かと言って迷宮デビューした新人のウォーカーが手に入れたなんて話もざらにあるのだ。


 そしてその全てのクテルに需要があり値段は恐ろしい価値を生み餌として人間を迷宮に呼び込む。


「武器とかも迷宮で出るのに……凄まじいですね。どんな効果があるんですか?」


「そうですねー。ヘルゲーターとかのクテルなら穴を掘るのが速くなる効果がついていますね。建築系の方々とかが欲しがっていますよ。オプキュティアのクテルだと確か風の制御とかの効果なので風の魔術とか魔導の威力があがったり扱いやすくなりますね」


 その話を聞いてクテルを見た事はないが魔石の様な物だと想像する。だが話を聞いている内に似ているだけで別物でクテルの方がつけた場合の性能上昇は凄まじかった。


 ただ注意しないといけないのはクテルを武具に吹き込むとその武具は吹き込んだ数だけ強くなる反面脆くなる。


 同じ鉄でできた剣があり片方に何かのクテルを吹き込み斬り合うとクテルを入れた剣が確実に負ける。そして魔物と同じ様に崩れ去りクテルも剣も二度と直る事はない。


 そして最も注意しないといけないのは……


「人も迷宮で死ぬとクテルになるんです」


「え?人もですか?」


「はい。でも全員が全員という訳ではないのです。私やソールさんの様な【スキル持ち】が迷宮で死ぬとそのスキルが残りクテルになります。普通のクテルと違うのでブラッドクテルと呼ばれています。色もクテルは白っぽい色ですがブラッドクテルは黒に近い赤色です」


「ではそれも武具に吹き込むのですか?」


「いえ。ブラッドクテルは人に使います。スキルは人に宿る物なのでブラッドクテルとして残り他人が継承します。ただクテルはクテルなので人によっては寿命が少し縮んだりします」


 ソールは点と点が繋がる感覚を覚える。


 自分の様にデメリットがあるスキルもあるがロトナの様に便利なスキルもある。


 探せば確実に戦闘で使える様な強力なスキルもあるはずなのにスキルを持っているであろう人達は率先して調べようとはしない。


 経済的な理由等もあるだろうが……わかれば簡単な事だった。それは奪われるからである。


 迷宮でブラッドクテルになりスキルを奪われるならそこに連れ込んで殺せば強力なスキルが手に入るなら碌でもない奴なら必ずそうする。


 しかも迷宮は人の全てを捕食する。そんな所で殺せば死体など残りはしないので証拠など残ったりはしない。


「そういう事でしたか。スキルを調べない人が多いと聞くのは……」


「悲しい話ですがそういう事です。皆が皆人に優しい訳ではないんです。あと悪い使い方ばかりでなくスキルを子供や孫に継承させたい時は迷宮を使う方もいるそうです。噂ですけど聖域都市にはスキルを奪うスキルがあるのでそれは長い間継承されてるとの事ですよ」


「まぁ……スキルの話を聞いた時に絶対あるとは思いましたがあるんですね。あれですよ。そこで悪用されて善人からスキル奪ってもみ消すパターンですね」


「ソールさんならそういうって気がしました。聖域都市は他国になるので詳しくはわかりませんがちゃんと使われているらしいですよ。誰かにスキル渡したい時は継承の儀と行ってそのスキルを持った最高司祭が責任を持って取り扱うとの事です」


「私の友人のローちゃんならわかると思いますが……黒い噂が好きなのでそういうの知りませんか?」


 ソールにいきなりローちゃんと呼ばれ少し戸惑うがすぐに笑い答えた。


「噂では無いですけれどソーちゃんは奴隷市場に行ったことありますか?」


「ありますよ。あそこって死刑が宣告された奴隷とかの方が値段が高いんですよね……まさか」


「はい。そのまさかです。奴隷市場で極悪人が高いのはそういう事です。人ばかり狙ってる人は対人のスキルを持っている事がとても多いのです。そしてその人達から対人関係のスキルを取るという事です。ある程度の罪ならこの国は寛容なので人生をやり直す為に国も奴隷保護の法律もあります。が……まぁ魔物よりたちの悪い人には……」


「でもスキル持ってないもしくは知らない極悪人も高いのは?」


「お薬や新しい魔導具の礎に……」


 ソールがどうして奴隷市場で極悪人が高いのを知っているのかというと、人に迷惑かけまくって魔物よりたちの悪い奴なら元の世界から持って来た物で人体実験してもいいよね? という考えだった。


 ただ本当に値段が高くオプキュティアの素材や餌箱から出た素材の分け前では足りないほどだったのですぐに諦めた訳だが……


「高いのには訳もありまして……先に歩かせて迷宮の罠を発見させたり色々用途はあるようです。奴隷商の方々も厳重にしないと逃げられたら大変だからお金がかかると言ってました」


「流石に逃げられたら奴隷商の人達もお咎め無しと言う訳にはいかないでしょうしね」


「そういう事です。そういう訳でソールさんも迷宮都市に行くなら気をつけてくださいね」


「わかりました。ロトナさんも王城都市で頑張ってください。迷宮都市が落ち着いたらそちらにも行ってみたいので」


 そんな話をしていると正午をしらせる鐘の音が公園に鳴り響いた。


 今日ははロトナが休みだった事もあり先ほどの話の感謝を込めて食事に誘いその時間を楽しんだ。

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