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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
一章 新世界
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十八話

 いつもの様に走り込みを終え宿に戻って来るとティアとベスパの稽古もちょうど終わった様で四つん這いに近い状態でティアの顔面が地面に埋まりうめき声を上げていた。


「今日の訓練はここまでだ。ラットマンと言えども魔物だ。気を抜くんじゃないよ!」


「……討伐の依頼を受ける日にいつもより稽古がキツいとか新手の虐めでしょうか?」


 ベスパが宿に戻っていきティアの疑問に答える者はいなくなったので変わりにソールがティアの手を引いて起こし答える。


「顔見知りが死んで嬉しいと言う事はないのでティアさんに強くなってもらいたいのでは?」


「そうだとありがたいんですが……ベスパさん木剣まで持って来て割とガチですよ!おたまの時より重さも速さも違い過ぎる!」


 思ったよりは元気だったのでこのまま放っておこうかと考えたが、ティアの体をよく見るとそこら中に痣や切り傷があったので偽装アイテムバッグの中から特製茶を取りだし飲ませる。


 体力が回復すると同時に痣や切り傷といった物がすぐに回復しいつもの事だがティアは不思議そうな顔をする。


「ありがとうございますなっですけど……この飲み物をお茶と言って良いんでしょうか……味はお茶なんですがどちらかと言うと回復薬なのでは?」


「怪我が治る代わりに寿命が一年縮むお茶です」


「ほんとうですか!?」


「嘘です。はい。もしも時の為に持って行くとよいと思います」


 ソールは水筒に入った特製茶をティアに渡す。ティアもそれが何かは謎だったが効き目は自分が一番知っているので礼を言って受け取った。


「ではソール先生。行って来ますのでまた明日の朝に会いましょう」


「はい。怪我などした場合は走り込みは休みにしますので気をつけて行って連携等を学んでください」


 分かりましたと元気よく返事をしティアはウォーカー協会へと向かった。


 ソールも手を振り見送った後で汗を流す為に宿へと入るとベスパが店の中で素振りをしていた。


「ソールは着いていかないのかい?」


「はい。職も違いますし同レベルぐらいでパーティーを組むなら良い機会かと思うので。私もずっとこの都市にいる訳でも無いので人付き合いも慣れておいた方がいいと思います」


「まぁ。ソールと討伐に行ってもレベルが違い過ぎてティアは学ぶことってあんまり無いだろうしそれでいいか」


「私はブロンランクのウォーカーですよ?」


「寝言は寝てから言え。どうだい体も温まってきたから私と一戦やらないか?」


「勝っても私にメリットが無いですが?」


「じゃあ晩飯奢ってやるよ。一発でも入れたらあんたの勝ちでどうだい?」


「分かりました。と言うか後ろにお客さんいますよ?」


 ベスパが謝りながら後ろを向くがそこには誰もおらずに気の抜けた「ソールニー」と言うかけ声と供にベスパの腹部に強烈な衝撃が走りその場で崩れ落ちる。


「私の勝ちなので今日の夕飯は楽しみにしておきます」


「ソール……あんた、覚えておきなよ」


 軽く手を振りながら二階に上がっていくソールをベスパは恨めしい顔で見つめた。


 不意打ちを受けたと言えばそうだが……元とはいえ中級ステイルランクウォーカーの自分が一撃で沈められた事に衝撃を覚える。


 確かに油断はしていたがゴルディーランクやステイルランクの攻撃ならいくら不意打ちといえど反応できる自信があった。


 だがソールの攻撃は振り返るより速く……いや瞬きよりも速かった。気がついた時にはソールの攻撃を食らっており自分はうずくまっていた。


「まぁ強いとは思っていたがここまでとはね……だが腹立つからあいつが何処かに行くまでに一発殴る」


 痛みが引き冷静になった所で元ウォーカーの血に火がつきソールの顔面に一発入れるを目標にベスパの特訓も始まった。


 汗を流したので一階で朝食を取ろうと思ったが木剣が風を切る音が聞こえ始めたのでソールは裏口から出て市場で適当に朝食を食べて協会の資料室へと向かった。


 その道中で今日は怪鳥オプキュティアを見ていないと言う事を思いだしディアナかロトナを見かけたら伝えようと考えていると協会にたどり着く。


 中に入ると何故かそわそわしているディアナと窓拭きをしているロトがいたのでソールはロトナの方に話しかける。


「ロトナさん。おはようございます。ディアナさんが落ち着かない様子ですが男でもできましたか?」


「悲しい事に私もディアナもそういう話は無いですねー。妹のティアちゃんが依頼を受けてる日はいつもあんな感じですよ?ソールさんと採取に行ってる時は大丈夫でしたけど」


「なるほど。私も気にはなりますね……妹なら尚のことでしょう。それで話は変わりますが今日も走り込みに行ったんですが……オプキュティアは飛んでませんでした」


 ロトナはお疲れ様ですと笑った後に昨日の午前中に討伐の依頼が張り出されゴルディーランクのウォーカー達がパーティーを組んでオプキュティア討伐に向かったとの事だった。


「ソールさんとティアちゃんが映像を収めてくれていたので巣を作って卵を産んでる可能性が大きくなったんですよ。卵を産むと喉に餌をためて巣に持ち帰る習性があるので」


「役に立ててよかったです。ゴルディーランクの強さは分かりませんがオプキュティアはクイーンゲーター並に強そうでしたが大丈夫そうですか?」


「はい。と言い切れる依頼は無いのですが……経験も実績もあるウォーカーがパーティーを組んで行っているので大丈夫だとは思います」


「なるほど。ウォーカー達を信頼するのも大事ですしこちらからは言う事はありませんね」


「そういう事です。ソールさんは今日も資料室ですか?」


「はい。スキルの事も分かってきたので歴史とか地理を見てみようかと思ってます。迷宮に関しては大雑把な資料しか無かったので」


「この近くに迷宮は無いですからねー。ウォーカーの人に聞くのが一番いいと思います。私も行った事がないので詳しくは知りませんし……あっ!でも迷宮に行くとアイテムとか武器を落とすんですよ」


 その話を聞いて入る度に地形が代わり倒れると持ち物を全てロストして白い生き物に蹴り飛ばされる映像がフラッシュバックするがそれは絶対にないなと首をふる。


 少ない情報で考えるなら迷宮で命を落としたウォーカーの持ち物を魔物が使いそれを倒すと手に入ると言う事なんだろうと一人納得する。


 そして少し世間話をした後にそわそわしているディアナにも声をかけてからソールは資料室でまた本を読み漁る。


 自分で言っていた様にこの丘都市の地理や歴史を学びもう少し言葉や文字になれて来たら迷宮都市や迷宮がある都市に行ってみようと決めた。そしてもう少しで鐘が鳴り資料室が閉まるというタイミングで神妙な面持ちでロトナがやってきた。


 何かを言いたげだったのでソールが優しく問いかけるとゆっくりと話し始める。


「討伐に戸惑っているだけなのかも知れませんが……ティアちゃん達がまだ戻って来てないんですよ……沼地まで距離はありますが夜を跨ぐ様な依頼はブロン、シバルランクでは受けさせんので少し時間がかかりすぎかと思いまして」


「なるほど……変に悩んで手遅れになったら流石に悲しいので少し見に行きます。ロトナさん。すみません地図をお願いします」


 相談に来ただけだったが行動の速さに驚きロトナはかなり戸惑った。


「いっいえ。意見を聞きに来ただけですしもうすぐ夜なのでソールさんも危ないので……」


「黒い月の日でも無いですし問題ありません。何も無かったらなかったでそれに越した事はないので笑い話ですよ。その時はティアさんの訓練がキツくなるだけの話ですし……ディアナさんは何と?」


「かなり気になっているようですがこの時間は忙しいので……地図を準備しますね」


 資料室のから大きな地図を取り出しロトナはテーブルの上に広げ現在地と沼地の位置、それとティア達が依頼を受けたラットマンがいる洞窟の位置を指さして説明する。


「魔導車で二時間半ほど走った場所にあります。洞窟はキノコや苔といった物が取れる浅めの洞窟でしたがラットマンが住み着き始めたのでその為の討伐でした。多少は拡張されているかも知れませんが浅い洞窟です」


「分かりました。さっそく行ってきます」


「ディアナ達を助けた時もそうですが……ソールさんはどうしてそこまでして頂けるんですか?」


「嫌いな奴なら放置しますし敵なら殺しますが……なんでもかんでも自己責任で片づけるの少し寂しいですし。私も色んな人に助けられて生きていますから出来る範囲なら動きますよ。ディアナさんもティアさんもそれこそロトナさんもいい人ですからね」


 自分の名前が入ってるとは思わず少し驚いているとソールが窓を開けそこに足をかける。


「少し行儀は悪いですが……緊急なのでご勘弁をでは行ってきます……エレクトロ・アクセル」


 激しい発光と供にソールの姿が消え、ロトナに見えた次の光景は遠くの屋根の上を雷が走っていた。


 日が落ち少し暗くなり始めるが沼地まで道のりはほぼ一本だったので迷うこと無く、街道沿いを突き進む。


 その道中でヘルゲーターといった魔物と接敵するが雷を纏っているソールの敵ではなく触れた瞬間に凄まじい電圧が流れボロボロと崩れ去った。


 都市を出て三十分を少々すぎた所で目的の沼地にたどり着く、そしてそこから五分もしないうちに目的の洞窟が顔を出した。


 だがそこでの戦闘は終わっていた様でソールの索敵範囲内に何も写らず全てのラットマンは倒されていた様だった。


 ソールは足を止め辺りを見渡す。近くに魔物などはいなかった。ただ洞窟の入り口周辺には戦った後があり足跡や大きなネズミの足跡などが残っていた。


 これでは拉致が明かないと考え詳細な情報は読み取れないが雷の触角の索敵範囲を広げる。すると何かの塊に生き物が集まっていた。


 ソールはすぐにその場所に向かう。そしてその道中でウォーカーブレスレットが赤く点滅し始めた。


 この点滅の仕方はウォーカーが救難の信号を発した時の物であった。


 救難の信号が出ている場所と生き物が群がっていた場所は同じ場所だった。


 そこにはティア達が乗ってきたと思われる魔導車が転がり破壊され近くには鳥を思わせる大きな足跡があった。


少しでも面白いとか続きが気になると思ったらブックマークや評価の方もよろしくお願いいたします。

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