十一話
最近どこかでその言葉を聞いた様な気はしたが思い出せなかったのでソールは素直にロトナに質問する。
「すみません。スキルとはどういった物でしょう?」
「そうですね。どう説明していいか……人が持つ神様からもらえる物ですね。大昔は加護とか呼ばれていましたが……メリット以上にデメリットもあったりするのでスキルと呼ばれる様になりました」
ソールはその話を聞いた上で考え相談したのは失敗したなと判断する。
そのスキルとかいう物のせいで雷系以外の魔術が使えないなら今まではどうだったんだとなるからだ。
そのまま少し考えているとロトナが勘違いした様で勝手に話し始める。
「その感じですと前は使えてたのに今は使えないって感じですよね。スキルって先天的な物が多いですけど環境にも作用されるので後天的な物もあるらしいので。ソールさんが他の魔術が使えないのはそう言った物かも知れません」
「なるほど……」
「ちなみにスキルを持ってる人って本当に少なく千人とかに二千人に一人の割合なのでもってない人の方が多かったりします」
「どういう物か調べる方法ってあるんですか?」
「ありますよ。王城都市や聖域都市に言って神殿とか大聖堂で診てもらえますね。スキルは神様の贈り物との事なのでそういう神聖な場所で調べてもらえます」
「ん?と言う事はそこまで行かないと調べられないならそこまで重要な物ではないんですか?」
「そうですね。辺境とかに住んでる人ならなおさらです。ソールさんの様に特定の魔術しか使えなくても魔導がありますからね。ぶっちゃけると私もスキル持ちですが全く関係のない仕事をしてますしね」
「差し支えなかったらどんなのか教えてもらえますか?」
「大丈夫ですよ。実家が家具とか作る工房だったのが原因だとおもうのですが、『ネジ回し』ってスキルです。こうネジを回していくと組み立てる物のベストな位置が分かるんですよ。私が椅子とか机を組み立てるとガタが全く出ませんよ」
「えっと……働く場所間違ってませんか?」
「だからそういう物です。スキルを持ってるからと言ってスキルに人生を引っ張られる訳でも無いですし、持ってれば人生のおまけ程度の物ですね。私はウォーカー協会で仕事をしたかったので。だからソールさんも魔術を使えなくなったからと言って悲観するものでもありませんよ」
流石のソールも嘘をついている事に少し心を痛めるが本当の事を話す訳にもいかないので心の中でロトナに頭を下げた。
「王城都市や聖域都市に用事があればついでに行って調べて貰えばいい訳ですね」
「それでいいと思いますよ。何人か持ってそうな人はウォーカーでもいますけど本人達は調べる気もないようです」
「便利な物もありそうですが……私と似た様なスキル?って聞いた事ありますか?」
「確か……記録に残っていたのは剣の祝福とか嵐の祝福ですね。剣の祝福はソールさんのによく似てて魔術が全く使えない変わりに近接武器の切れ味が増し身体能力が上がったそうですよ。嵐の祝福も似た様な物で風の魔術以外は全て使えなないが威力や発動速度が上がったとかそんな感じです」
「と言う事は……私にもその辺りのスキルとか言うのがあるのかも知れませんね」
「そうですね。スキルの中でも珍しいのでユニークスキルと呼ばれる事もあります」
「当事者の私からしたら何がおもろいねんってスキルですが……」
しばらく公園でスキルの事を話しているとロトナから驚愕の事実が告げられる。それはスキルの事などが書かれた本などはウォーカー協会の図書室においてありウォーカーになる事で無料で閲覧できるという物だった。
その本は一般人でも見られるのかと尋ねるが流石に無理との事だった。
「それは悩みますね……」
「ソールさんはむちゃくちゃ強そうなのでなってもいいと思いますけど……逆にならない理由は?」
「依頼を受けてあちこち行くのはいいのですが……この辺は魔物も多いみたいですから殺すだけの依頼はしんどくなった感じですかね。そんな為に魔法……魔術を覚えた訳でもありませんし。後は慣れない場所なので国の管理下に入るのが少し抵抗あります」
「なるほど……ウォーカーの皆さんは血の気が多いですから気にしない方も多いですよ。今日も朝から協会で喧嘩してましたし」
「武器を抜かない喧嘩ならありですよ。煽ってやってください」
「流石にそれは……と言うかソールさんって何というか私達の様な受付嬢やウォーカーの人達に理解ありますよね?」
「似た様な事をしてましたからね。パーティー組んで魔物倒したりよい思い出です」
空を見ながら冒険者だった頃の自分を思い出すとやっぱり自分はそういうのが向いてるのだろうと一人納得する。
一人で頷き納得するソールを見てロトナが笑っているとお昼休みも終わりに近づいた。
ロトナが立ち上がりソールに頭を下げて協会に戻ろうとしたのでソールも一緒に着いて行くことにする。
練習がてらに書いた魔術を消して子供達に手を振ってから二人は協会へと向かう。
「ソールさんってもしかして滅茶苦茶魔力多いですか?先ほど出した魔術もなかなか消えないですしかなりの量を描いてましたが……」
「そうですね。一般の魔術師に比べるとかなり多いと思いますが……」
「思いますが?」
「内緒ですよ?」
その仕草が面白かったのかロトナは内緒ですねと言って笑った。
協会に着くまでにまだ距離があったので発見した剣や動物の形になった魔術の事を尋ねると、魔術の形態とは少し異なる所はあるが無属性の魔術と言う事で統一され中級魔術の本に載っているとの事だった。
魔導にも応用されているようで刃先がない柄だけを持ってる剣士がいたらそれは魔導術で剣等を出現させて戦う者達だと教えてくれた。
ロトナに礼を言い世間話などをしているとウォーカー協会に着いた。
ウォーカー協会につくとソールは本当に目立つようで様々な格好をしたウォーカーの視線を集めていた中にはいつの間にか知り合いになったウォーカーもいてソールは軽く手を振る。
そんな事をしながらウォーカー協会の受付に行くとちょうどディアナがいて一緒に現れたソールと同僚のロトナを何とも言えない表情で見ていた。
そんなディアナにソールは変なポース取りながら「ちゃろー」と挨拶をするととても疲れた様に肩を落とした。
「こんにちはソールさん。今日はどうしたんですか?……と言うかどうしてロトナと一緒にいるんですか?」
「内緒です。ねーロトナさん」
「はい。内緒ですねーソールさん」
この二人は変な所で馬が合うと本能的に感じたディアナは何が内緒なのかは気にはなるがとりあえず無視して仕事に集中する事にする。
そしてソールとロトナはお互いに手を振って別れロトナは自分の持ち場にソールは空いていたディアナの受付に行く。
「改めてましてこんにちは。ディアナさん」
「はい。ソールさん。こんにちは。今日はどういったご用件でしょうか?」
ディアナのその笑顔が本物か仕事用の笑顔かは分からなかったので聞こうと考えたが聞いた所で答えてくれそうになかったので早速本題に入る。
「ディアナさん。ウォーカーになろうと思うのですがどうやったなれますか?」
「えっ?ソールさん。うさんくさいとか間接的にも国の下につくのは嫌と言ってませんでしたか?」
「そうなんですが……金欠なのと協会の資料を読みたいのが理由ですね。迷宮も気になりますし」
「なるほど。確かに迷宮はウォーカーじゃないと手続き面倒くさいですし一般だと税が重たいですからね」
どういうことやねんとソールは思うがウォーカーになって協会の資料を読めば色々と分かるだろうと考え、そういう事ですと自信満々に知ったかぶりをする。
「分かりました。では準備をしますのでしばらくお待ちください。と言ってもそんな大層な事はないのですけれどね」
ディアナは受付から立ち上がり奥の部屋に向かって小走りで駆けていく。そしてすぐに戻って来ると手には見慣れない紙のような物と魔術の字が書かれたペンを持っていた。
そして頭をさげて定位置に戻りソールに字は書けるかと質問する。
「かけますが……元の国の字でも大丈夫ですか?」
「はい。翻訳眼鏡で見ると翻訳されてみえるので問題ありません。でも字を見れば何処の国出身とかは分かるのでそれが気になるのでしたらこの国の文字で書く方がいいかもしれません」
「なるほど……じゃあまだこの国の文字は書けません」
「分かりました。代筆で書いても問題ありませんので私が書いてもよろしいでしょうか?」
ソールからすればありがたい申し出だったので、ディアナに礼を言って代筆してもらう事になった。
書かれる事はそう多くはなく名前と職業と登録した協会ぐらいで職業に魔術師と書けば得意な属性を書くぐらいだった。
年齢は書かないかと尋ねると嘘を書く人も多いし魔力の循環によって年齢以上に若く見える人もいるので最近書く項目がなくなったとの事。
「得意な魔術が雷って格好いいですね。…………すみません。ダサい魔術があるとかではないんです。申し訳ありません」
「ディアナさん。私は何も言ってませんが?」
「すみません……新人の頃にうっかり今みたいな事を言って受付越しに怒鳴られた記憶が……」
「世知辛いですね」
辛い記憶を思いだしたのか少し気分が重いままディアナは書類を書き終える。そしてソールの方に向けて書類を渡し翻訳眼鏡で間違いが無いかの確認を頼んだ。
何度も見直して間違いが無いのを確認するとその紙に魔力を流して欲しいとソールに頼んだ。
「全力でですか?」
「絶対に止めてください。爆発しますよ……しませんけど。少量というか魔導具に火を灯す程度ですね」
少し研究者というか、こうしたらどうなるのだろうか? と気になったら試したい気質のソールだったので強めに魔力を長そうかと考えたが真面目に爆発すると困るので言われた通りに魔力を流す。
すると書かれた用紙は小さく輝き形を変え、ソールの手首に丁度合うブレスレットに形を変えた。
「これでウォーカー登録は終了となりますので次は説明に入りますね」
その光景がもの珍しくソールはそのブレスレットを取り外し光に当てたり見たり振ったり握ったりしてみた。
「珍しいですか?」
「はい。とても」
「その腕輪は身についてもいいですし収納していても問題ありません。素材の買い取りや身分を証明する必要な時に出していただければ問題ありません。後は妹から聞いていたと思いますがウォーカーにはランクがありその色に合わせた色になります」
「ん?私は銅色なんですが……見習いからでは?」
「登録の際に職員が認めていると見習いは免除されます。ソールさんの場合は私と妹の前で四匹のヘルゲーターを討伐していますし、持ち込み場にもヘルゲーターの素材などを持ち込んでいるのでブロンランクからで大丈夫です。正直もっと上のランクでもいい気もしますが規定ですので」
「なるほど……こういう時はタイミング的に、なんで俺達が見習いなのにそいつはいきなりブロンんなんだよ!ってからんで来そうな輩がいそうなのにいませんね」
「いや、まぁ……ランクが上がればあったりもするんですけど、見習いの頃からそんな事して職員やウォーカーの先輩に目をつけられると、この業界やっていけませんから見習いブロンランクでそんな人は滅多にいませんよ」
滅多にいないと言う事はたまにはいるんだなーとソールは思いながらブレスレットを曲げたりにぎったりして強度を調べたりしているとディアナから注意が入る。
「それとソールさん気をつけてください。簡単には壊れない材質でその証明書はできていますが、壊すとどのランクからでももう一度ブロンランクになり、二回目以降の登録は500セルン頂きます」
「ん?高位になってから壊れても難易度の高い依頼を受ければすぐ上がるので降格の意味ってあるんですか?」
「そうですけど……一応は個人証明になりますし、よほどの時以外はすぐには受けさせない様にしています。後、シバルからゴルディーに上がる人はギリギリの人も多いのでまた上げるのが大変だったりしますからね。大事にしてください」
なるほどと頷きながらも曲げたり捻ったりするソールが気になるのかディアナも言わなくても良いことを言う。
「まぁ……ソールさんがいくら凄い魔術師でも魔術を使わずに破壊するのは不可能ですよ。防具にも使われる材料ですからね」
「ふんすっ!」
バキッ!!
人によっては心地良い破壊音が鳴り響き辺りが静まりかえる。
しばらくの間、辺りが静寂に包まれるがそれを破ったのはディアナだった。
「ソールさん!? どうしていきなり壊すんですか!!」
「いえ。ディアナさんが煽るから……」
「煽ってませんよ!」
しばらくそんなやり取りをした後に二人はロトナに仲裁され、もう一度ウォーカー登録をやり直した。
次回の更新は月曜日の朝になると思います。日曜日は作者もお休みです。




