十二話
破壊されたウォーカー証明書の再発行を終えるとディアナは受付から立ち上がり、ソールを連れて協会建物の中央より少し端にあたる場所へと向かった。
そこには多くのウォーカー達が集まっており情報を共有した世間話などをしていた。その中心には大きく光る半透明の球体が浮いておりウォーカー達が自分達の証明であるブレスレットを球体に向けると光の線が伸びていた。
ディアナに言われソールも同じ様にブレスレットえお向けると球体から一本の光の線が伸びる。
しばらく待っていると光の線が消える。
「それで準備はウォーカーとしての準備は完了です。ソールさん。ブレスレットに手を触れてもらえますか?」
言われた通りに軽く手を触れるとブレスレットから光があふれソールの目の前に半透明で文字が書かれた物が出現する。
それはブレスレットから出ている様で動きに追従し触ろうとすると簡単にすり抜けた。
「すり抜けずに触れるか触れないかでぐらいかで、立てや横に指をずらすと写っている文字や絵が切り替わります」
言われた通りにやってみると画面を切り替えると、討伐、採取、護衛、救援、等といった依頼と思われる物が次々に表示される。
「そこに写っているのが依頼ですね。そのページにある右上のソールさんのランクの色と同じ色に触れてもらえますか?」
頷き言われた通りに銅色の丸い部分に指先を持っていくと今までみていた画面が少し切り替わり依頼が厳選された。
「今の様に触れると適正ランクが表示されて割と安全に受ける事が可能になります。自分のランクより高い物も受ける事は可能ですが……ブロンだとゴルディーまでですね。ゴルディーになると上はどこまでも受けられます」
「なるほど。受けて失敗したらどうするんですか?続くと降格とかですか?」
「いえ。そういうのは無いですね。基本的に駆除や討伐で上位を選び失敗すると帰って来れません。護衛は対象の人や依頼主が断るので成立しません。採取も危険な所にいくので討伐、駆除と同じなので……」
「あまり背伸びをする人は少ない感じなんですね」
「はい。ウォーカーの先輩にも聞くでしょうし魔物の危険性を知ってウォーカーになる人も多いですから……まぁ年に数人はブロンランクでゴルディーランクを受けて帰ってこない人もいますが……」
人の話をまったく聞いていないのかディアナの話をフリと捉えたのかは分からないが、さっそくソールはミスティスランクの依頼を見始め、ドラゴンの調査、討伐という依頼を選ぼうとするが画面に適正ランクではありませんと表示され不可能だった。
「……ソールさん。人の話を聞いてましたか?」
「はい。聞いていましたので受理されないか試しただけですよ」
「はぁ……今のような感じで依頼を受注できます。受けるのはどこでもできますが、依頼の完了手続きはウォーカー協会の受付に来てください。あと、ヘルゲーターの様な危険性が高い駆除対象は倒せば駆除報酬が出ますのでそのブレスレットに倒した映像を納めてください」
ブレスレットにはめ込まれている水晶の部分を対象に向けて触れると景色などを取り込めるとの事だった。
試しにディアナを写したり部屋の中を映して動かしたりすると撮った物が確認できた。
「……使い方を知るのは良いことだと思いますが私を写す必要ってあったんですか?」
「え?ブルトンのウォーカー協会自慢の看板受付嬢を納めておこうかと」
その言葉に気を良くしたのか少し気分が良くなったディアナとそれを見てこの人チョロいなと思ったソールのやりとりは続く。
「あと重要なのはそのブレスレットに写した映像は達成の時などに確認するのでご注意ください」
「ご愁傷さまです」
「別に景色とったりとか見慣れない魔物を写したりとか助かりますしありがたいんですが……プライベートなのは魔導具店で売ってる物を使って写してくださいって話です」
「なるほど……腹立つ職員がいて虫とか嫌いだったら調査という項目で大量に映してくればいいんですね」
「……正直、私も嫌いな人だったら応援しますけど仲の良い人だと辛いのでやめてください。というかソールさん変に応用きかせてきますよね。見るのも初めてっぽいのに」
「それが私のイキる道ですから」
「意味が分かりません……ついでですけれど調査という依頼の時は生き物とかの映像を映して持って帰るのが主な内容になります」
「別に倒してしまってもかまわんのだろう?」
「ダメですよ!希少生物の生態調査とかもあるんです。そんな事いっていると受けたい時に受けられませんよ!素行不良で!」
冒険者の時にはこんな面白い受付嬢はいなかったなと昔を思い出しソールは少し微笑む。
そんなソールを不思議に思いながらもディアナの丁寧な説明は続いた。
「後は……依頼が写っている近くに特殊というのがあるのが分かりますか?それは迷宮に関する依頼になります。この都市には迷宮はないので迷宮が近くにある都市に行ってから話を聞いた方がわかりやすいかもしれません」
「なるほど……近くだとどの辺にあるんですか?」
「王城都市と迷宮都市が有名です。距離も似たようなもので魔導車で五日から六日といった所ですね。行くなら黒い月の夜を避けるように日程をくんでくださいね」
「別の都市に行くのにそれだけ距離があると難儀ですね。この国の主な移動は陸のみですか?」
「基本的に陸路ですね。場所によっては運河も使いますね。海が本当に危険なので大きい川のみです。空もありあります。大鳥や飛龍で人や荷物を運ぶ渡りと言う人達もいますね。ですがかなり高額になるのでよほどお金がある人しか空路は選びません」
「なるほど……これだけ魔術、魔導が発達してるのに空飛ぶ船とか転移の魔術はないんですか?」
「ありますよ。船単体で飛びませんが浮かせた船を大きな鳥や竜がひっぱったりします。この辺は僻地なのであんまりみないですけどね。あと転移ですが国の偉い人達は使っていると聞きます。魔物が多いので移動は本当に危険ですからね。あと製造コストが恐ろしい値段らしく量産は無理らしいですよ」
「ありがとうございます」
「ん?でも空船を知らないとなるとソールさんってどこから来たんですか?海を渡ったのは嘘といっていましたし?」
「美女には謎が多いと言いますから内緒です」
「いやまぁ……私からみても綺麗な人だとは思いますけど……自分で言いますか?」
「はい。自信を持つのは良いことですし謙虚すぎるのも私の事を好きだと言ってくれた人に失礼ですからね」
それが本音か自分をからかっているのかが分からなかったディアナはまたため息をつき、他に説明を忘れていないかを考える。
説明し忘れていることがなかったので最後に重要な事を話し始める。
「ソールさん。最後に一番重要な事になりますのでもう一度ブレスレットを見てもらえますか?」
頷き時計を見るようにソールはブレスレットを見る。
「その中心にある水晶を押すと救難信号が発生します。そこまで距離は長くないですが近くにいる他の冒険者に知らせます。魔物に襲われて動けない時や遭難した時は迷わずに強く押してください」
「分かりました!」
ポチーッ!
言われた通りにブレスレットに着いていた水晶を強く押し込むとソール達を中心に周りにいたウォーカー達のブレスレットが赤く強く点滅し始める。
そこら中で赤く光るブレスレットにこの世界の危険な仕事をする人達は守られているなと感動していると我に返ったディアナが大きな声を上げる。
「ソールさん!どうして貴女も妹と同じ事をするんですか!!」
仲間がいたことを喜び周りを見るとよくある事のようで苦笑しながらウォーカー達は赤く光るブレスレットを止めていた。
「人生という荒波に飲まれて航路を見失いこの世界に遭難したので」
「…………分かりました。次回から説明す時はまず先に救難の事を教える様にします!」
少しだけこめかみに血管が現れ周りのウォーカー達に謝るディアナにソールも同じ様に頭を下げた。
これからまだ仕事は残っているのに疲れた顔をしたディアナはこれで説明は終わりになりますので他に説明はないのかと尋ねた。
パーティーを組んだ場合の事なども少し気にはなったが、使う魔法系統が違うので迂闊に組むと少し面倒な事になりそうなので組む事があればその時に聞けばいう判断になった。
「すみません。忘れてました。依頼の更新をする時はここに来ていただかないと駄目なのでお願いします。人によりますが週に一度の方が多いですね。依頼は基本的に早い者勝ちなのでその辺りもよろしくお願いします」
丁寧に教えてくれたディアナに礼を言う。そして資料室の場所を尋ねると案内しますよと言ってくれたので再度礼を言って世間話をしながら二人で向かった。
「ウォーカーの登録はどうでしたか?」
「思ったより技術が進んでいました。もっと貼り付けられた依頼票をむしり取って、受付に持って行って今日の依頼はこれだ!的なのかと思っていましたよ」
「ソールさん……いつの時代の人ですか。私が生まれた頃もわりと今と似た様な体制だったと聞きますよ」
「ふふふ。時を渡って来ましたからね」
「あーはいはい。ここですね。ソールさんここが資料室です。貸し出しはできませんが中で読む分にはどれを読んで頂いてかまいません。注意する事は大事に読んでくださいというぐらいですね」
「意味も無く不用意に壊したりはしませんよ」
「よくその言葉が言えましたね……ウォーカー協会はずっとやってますが資料室は鐘がなると閉館なのでよろしくお願いします」
わかりました。忙しいのにありがとうございますと礼を言ってドアノブに手をかけて資料室に入ろうとしたタイミングで協会内のベルがなりアナウンスが流れる。
「ウォーカー協会職員のディアナ・トルマがいましたら直ちに執務室までいらしてください。その際に近くに、妹のティア・トルマさん並びにソールさんが近くにいらしたら一緒に来てください」
今の声は同僚のロトナだと考えながらディアナがソールの方に振り向くと我関せずという感じで資料室に入り扉を閉めようとしていた。
とっさにディアナは足をかけソールが資料室に入るのを阻止する。
「……ソールさん。聞いていましたよね?」
「すみません。今日の私の耳は休日ですので……都合の悪い事は聞こえません」
「駄目ですよ!何を言っているんですか!行きますよ。明らかに私の近くにいるじゃないですか!」
「いえ。別に近いと言っても物理的な距離だとは言っていません。私はまだディアナさんと知り合って間もないので貴女と私の心の距離は遠いですよ」
「じゃあ!今すぐ仲良くなりましょう!さぁ行きますよ!ソールさん!」
「きゃっ!ディアナさんのエッチ!」
そんなやり取りをした後にソールもようやく諦めた様で仕方なくディアナの後を歩き執務室へと向かう。
「はぁ……今日は何か疲れました。と言うか何で呼ばれたのでしょうね?協会で呼び出される事ってそんなに無いはずですが?」
「そうですね……追放されるのじゃないですかね?」
「されませんよ!」
大きくため息をつき疲れているディアナと廊下を進むと少し前に来た部屋の扉が目の前に現れた。その扉をノックすると入ってくれと返事が返って来た。
ディアナが失礼しますと言って中に入るとそこには前と同じ様にウォーカー長のトーバが待っていた。




