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俺はクラスで人気のあの子と島に漂着していた  作者: レトラ
第一章

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02話:人気者の女の子

 彼女はあまりの驚きにその場に座り込んでしまった。俺が大声を上げたからだ。当然だ。最初はただの幻覚だと思っていた相手が、いきなり背後で話しかけてくるなんて、誰が予想できるだろう。


「驚かせたよ、晴人《はると》くん……」


「…あっ、ごめん…」


 俺はすぐに立ち上がり、彼女を支えて起こした。彼女の顔を見た瞬間、俺は気づいた。彼女は俺のクラスで「女神」と呼ばれている人だった。頭もよくて、容姿も美しくて、みんなが憧れていた。


 彼女は――風香南《ふうかみなみ》。


 俺は手を差し伸べた。


「ご、ごめん、驚かせちゃって……ふ……風香さん……」


「い、いえ、私のほうこそ驚かせちゃってごめんね、晴人くん……」


 彼女は俺の手を取り、ゆっくりと立ち上がった。立ち上がると、二人の間に気まずい沈黙が流れた。俺がちらりと彼女を見ると、その時初めて気づいた。彼女が着ているのは、出かける前のブラジャーにロングスカートだけだった。


「ん?」


 俺は反射的に上着を脱いだ。彼女の姿を見ていると、変な気持ちになるのが嫌だったから。俺の服は、気を失っている間に日に焼けて、すっかり乾いていた。


「え、えっ……? ま、待って……」


 俺が目の前で服を脱ぎ始めたので、彼女は驚いた。俺はそのまま背を向け、彼女のそばへ歩み寄った。


「黙ってくれ」


 彼女の肩が少し震えているのが見えた。きっと寒いんだ。このまま風邪をひいたり熱を出したりさせたくない。


 俺は彼女の腕に手を添え、自分の上着を渡した。


「あ、あの……ふ……風香……さん。こ、これ、使ってください。俺の服、少し汚れてるけど……せめて体にかけてください」


 俺は目をそらしたまま、上着を彼女の手のひらに載せた。


 顔が真っ赤になっているだろう。そんな顔を見られたくなかった。だって、きっと彼女は俺のことを、こんな状況で女の体を見ようとしている変態だと思うだろうから。


「はっ……? わ、わかった……」


 彼女は上着を受け取ると、ゆっくりと羽織ってくれた。


 しばらくして、また沈黙が戻ってきた。風香さんは木の幹にもたれ、暮れていく海を眺めている。俺は膝を抱えて座った。何をすればいいか分からなかったし、自分も少し寒いのを隠すためでもあった。まあ、俺は大丈夫だろう。


 ふと思った。いつか政府の捜索隊に見つけてもらえるだろうか?


 見つからなかったらどうしよう。何か目印を……そうだ、砂浜に大きく「助けて」と書けば、見つかる確率が上がる。明日の朝、そうしよう。


 だけれど、それよりも今は食べ物と飲み水だ。これがなければ、生きていけない。


 その時、風香さんが小さな声で、囁くように俺を呼んだ。


「晴人くん……晴人くん……」


 俺が振り向くと、彼女は俺の腕にそっと手を添えていた。


「は、はい、何ですか? 風香さん?」


「あ、あの……わ、私……私……お願い、したいことが……」


 彼女の頬が赤く染まり、膝も手も少し震えている。


「何をお願いしたいんですか?」


 言い出しにくそうに、唇をもごもごさせている。


「つ、ついてきて……その……」


「その……?」


 嫌な予感がした。


 やっぱり。


「しょ、小用……」


「はあ…?」


 おい、マジで?


「う、うん……」


 彼女が小さく頷くと、俺の心臓がどきりと鳴った。


「ど、どうしよう……暗いのが怖いの。だから一緒にいてほしい。その……夜の暗闇に慣れてないし、男の人とも本当は慣れてなくて……。でも、真っ暗で……だからあたし……ああっ……あああ……!!」


『おいおい、話すのが速すぎてよく分からないよ、風香さん!』


「お、落ち着いて、ふ…風香さん。い、いいよ、そばにいるよ。も、もちろん、覗いたりしないから」


「そ、それって……つまり、覗きたいってことなの⁉」


「…はあ? 本当だよ、嘘なんか言わない!」


「で、でも……クラスメイトなのになのよ⁉」


「そんなの全然関係ないよ! それより早く!」


「は、はいぃ……!!」


 彼女は立ち上がると、奥の方へ歩いていく。俺もついていく。頼られているし、ここに知っているのは俺だけだから。彼女は時々、後ろから俺の方をちらりと見る。


「み、見ないでくれる……の? 本当に?」


 お願いだから、俺をそんな変態みたいに思わないでくれ。


「もちろんだ。俺はそんなに簡単に女性の体を見て反応するような男じゃない」


 あんな男、俺もああなりたい!


「約束……してくれる?」


「は、はい! 約束します!」


 彼女はまた前を向いて歩き出し、やがて茂みの中へ入っていく。体を隠せるくらいの茂みだ。


「晴人くん……そ、そこで待っててくれる?」


 真っ赤な顔で、彼女がそう言った。俺は何も言わず、大きな木の幹のそばへ歩いていった。風香さんの気配や声が、俺の方へ届かないように。

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