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第5話 なんか死んだことになってる


 騒がしい病室に駆け付けた医師と看護師は、すっかり元気になった俺を見てにこやかな笑顔で退院をおススメしてきた。

 

 「はい。ご退院おめでとうございます。それでは冒険者免許証をご提示ください。」


 ぼうけんしゃめんきょしょう??

 受付にて白衣のナースさんは、俺の知らない物を要求してきた。

 免許証と言えば運転しか知らない俺が首を傾げると、ナースの方はハッとしたように手を叩く。


 「そうでしたね! 冒険ですべて落としてしまったのですね! では照会を行いますのでお名前と生年月日を教えていただけますか?」

 「は、はい。えーと…不死川輪音《しなずがわ・りんね》、1986年の2月23日です」

 「……1986年?」


 ナースさんは俺の体を半目になって怪訝そうに見つめる。

 そりゃそうだ。2035年だとすると、俺は49歳のしっかりおじさんだからな。20くらいにしか見えないんだからそりゃ疑うよな。

 

 「あぁ、若く見えるのは、たぶん能力のせいで」

 「は、はぁ……今お調べしますのでお待ちください」


 聞かれてもないのに言い訳をする俺に、ナースさんは困惑しながら端末を操作する。

 少しして、その顔が困惑に満ちる。


 「……少々お待ちください」

 

 ナースは立ち上がると奥の部屋に引っ込む。

 少しして、眼鏡をかけたスーツの男性が先ほどのナースと共に戻ってくると、ややこわばった顔で端末を操作し始める。


 「…不死川様…冒険免許証データがありません。というよりも……死亡扱いとなっております」

 「…まぁ、実際モンスターの腹の中で30年?経ってるので」

 「……本当にご本人ですか??」

 「本人ですよ?」

 

 困ったように顔を合わせるスーツ男性とナース。

 

 「申し訳ありませんが、 現時点で、あなたを生存している冒険者としてこちらが認めることが出来ません。」 

 「えぇ……」

 「早急に免許証発行をしていただいてください。これは法的に決まっているものです。でなければ警察を呼ぶことに…」

 「エッ!?…わ、分かりました!!行きますから!」


 端末らしきものを耳に当ててけん制してきたナースを見て俺は足早に去ろうとする。

 

 「お待ちください!」

 「だから行くって!」

 「保険適用外なので診断および治療費が10万9600円となります!」

 「たっっっか!?」

 

 そんなお金ないぞ!!いや銀行で降ろせば…待て、死亡扱いされるなら口座も凍結してるのでは?

 思考を巡らせる俺に、後ろで待っていたエルが可愛らしいお財布を取り出す。


 「すみません!私が払います!デビットカード使えますか?」

 「えっ!エルさん!?」

 「同じパーティーなんですから、助け合うのは当然です!」 

 「でもかなり高額だぞ?」

 「リンネさんが映っている配信がかなり伸びがいいので!むしろ感謝させてほしいくらいなんですから気にしないでください! 貯金で全然何とかなります!」


 天使オブ天使なの? いい子過ぎる。この子だけは不幸にしてはいけない…。


 「……なにからなにまでありがとう…この借りは必ず百倍以上で返すよ」


 エルは俺の言葉に花が咲いたような笑顔を見せた。

 そうだな。俺たちは同じ……

 ん?

 エルが笑顔で会計をするなか、俺と剣崎が一瞬顔を見合わせる。


 「「同じパーティー???」」

 

 阿津羅豪真に復讐がしたい俺としては願ってもないことだが、約1名、すごく嫌そうな顔をしているんですが。

 そんな俺たちの心境を知らない天使は、割って入ると先を歩く。


 「それじゃあ、リンネさんの冒険免許証を発行に行きましょう!」

 「こっから近いのか?」

 「はい!冒険者本部まで巡回バスで10分ほどです!」





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