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ネコを拾ったら魔族になったったオハナシ 〜ネコと一緒のスローライフ〜  作者: とんじる


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32.カッツ、商都をあとにする

 それから20日ほどグレイスガルドで稼いだ。俺たちは主に討伐の依頼をこなして過ごした。正直、D級の依頼の魔物は苦戦するまでもなく、俺たちは目標の金額を稼ぎつつ割とのんびり過ごしていた。ガストンさんから呼び出しがあったのは、ほぼ資金が貯まった頃だった。


「ガストンさん、いい話ですか?悪い話ですか?」


「そう警戒するなよ、いい話だよ。薬師ギルドから謝礼が届いた」


「へー、こないだの件でですかね」


「お前が助けた2人、薬師ギルドの幹部の関係者らしくてな。薬師ギルドとしても礼もしないでそのままってのは、面子に関わるって話だ。お前が受け取らないと面倒だから、気持ちよく受け取ってくれ」


「こないだ、ゲルトーからは直接礼を言われましたよ」


「個人ではなく、薬師ギルドとして礼をしときたいらしい。薬師ギルドの中でも色々あったらしくてな」


「くれるものなら貰いますけど、色々って。今回の件は冒険者ギルドの一員として動いた面もありますからね。こないだのC級パーティやガストンさんも貰うんなら、俺もありがたく受け取りますよ」


 少し意地悪ないい方になっただろうか。ただ、目立つことや妬まれるようなことは避けたい。まぁ、元いた世界ならコンプライアンスがどうこう……で話にもならないだろうが。


「カッツよ……俺を困らせんでくれ。もちろん、俺やアイツらにも受け取る権利はあるかもしれん。だが、ゴブリンキングを倒したのはお前だし、ゴブリンの大部分を倒したのはネクロスだ。この話は公になっている。薬師ギルドはきちんと礼をしたってのを知らしめたいってのもあるからな。」


 森から帰ってから冒険者ギルドや俺たちの宿の食堂兼酒場でも、ネクロスさんを中心とした俺たちは前よりも注目されていた。俺たちの働きが噂になったのだった。なんとなくだが、一目置かれるというのだろうか。チラチラ視線を感じることが増えた。


「向こうにも拘りがあるんですね。ガストンさんに任せますよ。C級パーティへの配分もお任せできるなら受け取ります。」


 ガストンさんは、ホッとした顔だ。俺だってガストンさんを困らせたくない。ストレスが溜まる中間管理職……まるで、元の世界と変わらない。


「ガストンさん、さっきの薬師ギルドで色々あったってのは?」


「あぁ、派閥争いさ。逃げ帰った3人、森に入って一本道をまっすぐ薬草の群生地まで行こうとしたって証言をしたろ?あの3人は薬師ギルドの中でも新興勢力的なグループに属していてな。皆でドリマール蜂を追って森で迷いゴブリンの襲撃を受けた。ここまではしょうがない。だが、仲間を置いて逃げて、しかも、嘘の証言で惑わせたってのがまずかった。最も状況的に逸れた2人はゴブリンに襲われて死んだと思い込んでたらしいから、結果、嘘をついた形になった」


 確かにはじめから事実を知っていれば、薬師ギルドも冒険者ギルドも連携して動けた。ゲルトー達も何日間は森を逃げ回っていたらしいから、なんとか洞窟に逃げ込み、最終的にゴブリンに捕まることもなかったかもしれない。残りの3人の人命軽視は間違いない。


「薬師ギルドの守旧派は街のみんなに見せつけたいのさ。きちんとしてるところをな。ギルド内の新興勢力の力も削がれるだろうしな。カッツ、じゃあ、任せてくれるな」


 俺はよろしく頼むと言って、宿に帰った。


◇


 数日後、大金が手に入る。宝くじに当たるというのは、こんな気分なのだろうか。


 俺が貰った金は3分割にすることにした。1つ目は、これからの旅の資金に。2つ目はノクト村に送り、村の復興資金に。3つ目はガストンさんに預けて孤児院への定期的な援助に充てて貰うことにした。ジョリは感激して泣いていたし、ゴブリンの殆どを退治したネクロスさんは、上等な葡萄酒を一本買ってくれたらそれでいいらしい。


 お金は予想より大分多く、正直びっくりした。さらに、冒険者ギルドに行くと薬師ギルドの偉い人がいて、多くのギルドメンバーを前に丁寧に礼を言ってくれた。森ではあんなに頼りになったC級パーティが、緊張してたのがおもしろかった。最もC級パーティは冒険者ギルドからの正式な依頼で報酬と戦闘ボーナスも貰ってたらしい。更に臨時ボーナスが入った訳だ。ガストンさんから話の経緯を聞いたからか、C級冒険者たちにも礼を言われた。新しい装備を買うとのこと。


 薬師ギルドからの謝礼はお金だけじゃなかった。古めかしいデザインの薬壺のペンダントを貰った。これを示すことで俺たちは、世界中の薬師ギルドにとって恩人に当たるとみなされる。ガストンさんも貰ってたけど、金よりこちらの方が価値があると言っていた。


 ゲルトーは薬師ギルドの最高幹部の愛弟子、もう1人も幹部の縁者ということだ。薬師ギルドも派閥争いよりも新薬の研究開発にでも専念してくれるといいのだが。


◇


 お金の心配がなくなったので孤児院に挨拶に行った。これから数年間は月々寄付がガストンさんを通じて届くこと。子供達が痩せすぎているので、食事の量を増やして欲しいことを話してきた。ガストンさんに相談したら、孤児院近くに土地が売りに出されていたから畑として確保してくれるそうだ。有効利用してくれるといいな。


 夏の暑さもピークを過ぎた。夜は涼しいくらいだ。俺たちは色々あったこの街を出て儀式の地に向かうことにした。ナイラさん、ガストンさん、ルーメル、C級パーティの皆が見送ってくれた。


◇


 グレイスガルドを出てから半日、日も暮れ野宿の準備をしてたら、街道をこちらに向かってくる者がいた。その数8人。


「カッツ、また懲りないヤツらがきたぞ」


「ネクロスさんは酒でも飲んでいてください。俺とジョリで追い払います。」


 どこか楽しそうなネクロスさんに葡萄酒の瓶を投げた。器用に受け取ったネクロスさんは蓋を開けるとラッパ飲みをした。いつものことだ。


 エルとの『血盟』の効果か俺は夜目が効くようになった。月明かりどころか、新月の夜でも雲で星の見えない夜でも昼と戦闘力は変わらない。ネクロスさんとエルを置いて、ジョリと相手の左右に潜む。俺は、『泥だんご』の魔法を追いかけてきたヤツらに喰らわせた。悲鳴がひびく。


「この先は死地!何か御用か?」


 動揺しているのが分かる。声だけでは俺の位置は補足できないようだ。移動しながら2発目の『泥だんご』を喰らわせる。さらにジョリは催涙玉を投げた。煙に巻かれて戦闘どころではなかった。8人を峰打ちで倒した。俺たちが薬師ギルドから大金を貰ったことを知って追いかけてきたらしい。顔は知らない。グレイスガルドは様々な人間が入ってくるから、比較的新入りなのかもしれない。


「うーむ、この人達、どうしよう」


「カッツ様、いっそ見せしめに全員……」


 ジョリからすると、今後俺たちに手を出してくる輩がってこないようにする意図だろう。


「ジョリ、全員殺してしまっては怖さも伝わらないだろう。コイツら俺達を殺そうとしたんだから、ジョリの言い分にも一理あるとは思うけれど」


 その時、エルがゆっくり近づいてきた。彼女を見た追跡者達は固まってしまった。


「……ね、ネザリスの影……なんでこんな所に……。」


 この反応が彼らの生命を救った。エルのことを完全に母猫・バルナと誤解している。


「カッツ様、失礼します」


 ジョリが俺の腕で鈍く輝く『隠者の腕輪』を外す。俺の魔力が漏れはじめる。悲鳴もあげずに気絶する者が3人、他の者は声を出せずに涙を流しながら首をイヤイヤと振っている。多分、俺を魔王か何かだと完全に勘違いしているのだ。これだけ怖がらせれば脅しにはなっただろう。翌朝、俺達はまだ腰が立たない彼らをそのままにして、去った。目的地は北西である。


 

 

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