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ネコを拾ったら魔族になったったオハナシ 〜ネコと一緒のスローライフ〜  作者: とんじる


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27.カッツ、呼びだされる

 長老派が本格的に調停という名の介入に乗り出した。俺はガストンさん(ギルドマスターと言った方がいいだろうか)に呼び出された。


「悪いな、連日。一緒に来てくれるか。」


 ガストンさんの声がいつもより緊張している気がした。俺達は冒険者ギルドの奥、最上階に登り更に奥へと歩く。明らかに今までとは違う重厚な扉。ガストンさんがノックをして入ってゆく。


「失礼します。冒険者、カッツを連れてきました。」


◇


 中には10人程の老人達が座っていた。ある者は鋭い眼光を、ある者は年齢には似つかわしくない体格を、またある者は全く魔力を感じさせなかったり……誰しも何かある、そんな年寄達だ。


「ガストン、そう畏まらんでいい。カッツと言ったな」


……声の主は、真ん中に座る白髪髭の老人だ。この人だけはそこら辺にいる普通のじいちゃんだ。ドワーフ族だろうか。背は低いが服の上からでも普通ではない筋肉の盛り上がりは見てとれる。


「忙しいところ、すまんの。これから我らの問いに答えて貰いたい。ただ正直に答えてくれ」


「分かりました。何でも正直に答えます」


「薬師ギルドの事件、お主が依頼を受けて森へ向かったのは何時だ」


「7時にギルドの受付開始時間に来て、7時半には森へ向かっています」


「随分と早い出発だ。」


「はい。ここ数日、同じことを繰り返しております。午前中のうちにギルドに戻り依頼達成の報告をしています」


「すると、事件のあった日も午前中に森に行っている訳か。カッツよ、ギルドの森への道中、誰かに会わなかったかの」


「いえ、誰とも会っておりません」


「ガストン、薬師ギルドの連中の主張を」


「はい、9時半にギルドをのぞいて、告知がないので、護衛をつけずに出発したと主張しております」


 ここまでくると、俺もこの老人達の確認したい内容が分かってくる。薬師ギルドの連中がギルドに顔を出した時間は、1番混む時間だ。その日の依頼が張り出されるのが7時から(朝一番で張り出されるのは大抵、昨晩にギルドに届いた依頼だ)、その日の依頼締切が9時、9時半はその日の依頼が出揃う時間だ。よって、9時半頃のギルドは冒険者でごった返す。中を覗いただけの人を見て覚えておくのは受付嬢も難しいだろう。


 そして、9時半過ぎに薬師ギルドの連中が森へ向かったとすると、途中、確実に俺達と顔を合わせることになる。そうならないのは、森に入って薬草の群生地までの一本道を通らなかった場合だ。距離と時間の面からそうする意味もないし、道から外れれば、魔物に襲われる確率も高まる。


 老人達は俺とガストンさんを立たせたまま、ボソボソとした声でやり取りしていたが、俺にだけ礼を言った。俺達は一階のギルドマスターの部屋に戻った。


「ガストンさん、誰ですか、あのじいちゃん達?」


「冒険者ギルドの最高幹部だよ。一人一人が伝説級の逸話の持ち主だ」


「なんか、ガストンさんが緊張してるなぁって……」


「あの人達から見れば、ひよっこだよ、俺も」

 

 若い頃のガストンさんも冒険者だったと聞いたことがある。少し興味は湧いたけど、ガストンさんも疲れてそうだったので、俺はまたの機会にと思いガストンさんと別れ宿へ帰った。エルは懐でずっと眠っている。一番大物なのはエルかもしれない。そんなことを考えていたら、懐を出てきて肩の上で大きな欠伸をした。階下から夕食のいい匂いがしてきた。


◇


 翌日、森に入れない俺は宿でエルとゴロゴロしていた。ジョリは買い出しに行き、ネクロスさんは酒場だろう。昼過ぎ、ガストンさんから呼び出しがあり、冒険者ギルドへ向かう。長老派が薬師ギルドと和解するように言ってきたらしい。ガストンさんからすると、和解も何も喧嘩すらしてねぇってトコだろうけど。事の顛末は、俺も気になる。胸当をつけて準備をするとエルが肩に飛び乗ってきた。


 昨日とは一転、今日のガストンさんは上機嫌だった。議会派を通して昨日の俺の話、冒険者ギルドの受付嬢が俺が依頼を受けた時刻、納品の時刻を記録していたこと。更に、俺の採取した新鮮な薬草の行き先が他ならぬ薬師ギルドだったことが決定的だった。ポーション不足で新鮮な薬草は幾らでも欲しい時だ。薬師ギルドも冒険者ギルドと不毛な争いをしてても仕方ないのだろう。長老派の恩着せがましい介入は免れたのだ。


「ガハハ!気分がいい」


 ガストンさんは笑いが止まらないが、俺が気になるのは、森に入れるようになるのは、いつになるかだ。


「カッツ、砦を造るぞ」


「へ?砦?」


「あぁ。森は低ランクの冒険者達が訪れることが多い。薬草採取なんて、誰しもがはじめに通る。薬師ギルドと話して砦を設けて、そこに各ギルドが出張所を設けることにした。薬師ギルドはポーション加工所を造るらしい。」


 砦は森の入口近くにある丘に造るらしい。小さな砦だが、堀を巡らし魔物の急襲にも備えた作りにするそうだ。俺はしばらく力仕事をすることになるのかな。


「カッツ、幹部連中がおもしろい小僧だと言ってたぜ」


「あぁ……そうですか。おもしろい事言った覚えはないですが」


「ガハハ……あの人達に名前を覚えられたんだ。損はないと思うぜ」


 ガストンさんは笑いながら、酒でも飲みに行くぞと誘った。受付嬢も一緒だ。


◇


 3日と空けずに砦の造成計画が発表された。来春完成の予定。ヤケに早いなと思ったら、昔から計画はあったが、予算の関係で見送っていたのだという。冒険者ギルドの長年の望みが形になることになる。そして、薬師ギルドにとっても悪い話ではない。


 俺が手伝えるのはどこまでかな、とエルと遊びながら考える。少しでもガストンさん達の力になれたらいいが、来春には儀式も終えたい。完成を見ずに旅立つ事になるだろう。


 図面は基本的に冒険者ギルドの素案を大きくしたものになった。面積は案の倍以上で、ノトク村よりも大きいだろう。ちょっとした街だ。建設ギルドの連中は手が足りなくなりそうだから、冒険者ギルド所属の冒険者達を引っ張ってきたいと打診してきたようだ。ガストンさんはうれしい悲鳴をあげていた。


 ただ、行方不明の薬師ギルドの2人は依然見つかっていない。普通に考えるともう生きてはいないと思われるが、冒険者ギルドからは、毎日C級以上のパーティが捜索にあたっている。森は依然として低ランク冒険者には解放されていない。街をブラブラして歩くだけの日々……モイラさんから連絡がきたのは、街ブラに飽きてきた頃だった。


  


 

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