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ネコを拾ったら魔族になったったオハナシ 〜ネコと一緒のスローライフ〜  作者: とんじる


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18/50

18.カッツ、コボルトを拾う

 村を出て西へ向かう。エルが肩から降りて先導するように歩きはじめる。機嫌良く尻尾はをピンと立てて歩いている。俺は重要なことに気がついた。エル、ちっちゃいままじゃね?こちらの世界にきてから随分経つ。もう、大人のネコのはずなのに、エルは大きくなっていない。それともこの世界の山猫は大人になるのが遅いのか。


「ネクロスさん、エルって、もう大人のネコだよね」


「とっくに乳離れしとるわ」


ネクロスさんの反応はあっさりとしたものだ。


「いや、でも、エルの大きさ変わってないよ。はじめて会った頃のままだよ」


「知らなかったのか。エルは自分の大きさ変えることができるぞ。そういえば、お主といる時は子猫の時の大きさだな。実際はバルナと変わらない。立派な大人の山猫だよ」


 つまり、エルは俺の前では子猫のままでいたってことか。

エルは俺の服の中に入るのが大好きだ。そのためには小さいサイズでいる必要がある。そう考えると、エルはやっぱりかわいらしい。あれ?サイズを変えることができるなら、物凄く大きくなって貰って背中に乗って走り回ったり、モフモフ天国を味わうことも可能かもしれない。俺の、いや、人類の夢が叶うかもしれない。


「大きさは生まれてから今のエルの大きさ迄しか変えられんよ」


ネクロスさんの残酷な言葉で、俺の子供の頃の夢は儚くなった。


◇


 エルが急に立ち止まった。尻尾を振ってやや警戒するように周囲をうかがう。北と南は森、東西に貫くように街道が走っている。突然、北側の森にエルが飛び込んでゆく。途中、エルは。身体を変化させて、大きな山猫の姿になった。


「何か見つけたかの。お主は何か気がついたか」


「いや、何も。そんなの分かるわけない」


「我よりもエルの血が入ってるお主の方が感覚は鋭いはずじゃがの……。さあ、後を追うかの」


 以前、俺は混じってると言われたことがあった。ネクロスさんが言っているのは、エルの血が俺の能力に影響を及ぼすってことだと理解した。でも、そうすると、俺の血はエルにいい影響を与えられるのかと考える。あんまりメリットなさそうだな。

 

「血の契約にデメリットは無いわ。能力の底上げにはなってもな。」


 また、ネクロスさんが俺の考え出ることが、わかったみたいな答えをしてきた。顔にでてたらしい。


◇


 森の中は下草も低く歩きやすい。5分程奥に入ったところで俺たちはエルを見つけた。隣に誰かがいる。大きな木に背中を預けて俯いており、顔は狼のようで、はじめて見る種族だ。傷だらけで矢が2本肩に刺さっており、装備している皮の鎧も無惨に斬り裂かれていた。傷からの出血が酷い。白い毛を赤黒く血が染めている。


「コボルトじゃの、これは助からぬな」


「ポーションは?」


「使うだけ無駄よ」


 ネクロスさんがはっきり言った。俺もそう思う。そのくらい酷い傷だった。埋葬くらいはしてやろう。死んだ後に他の魔物に食われるのも嫌だろう。そんなことを考えていると、エルが鳴き出した。子猫の頃からあまり鳴かない性格なのに、俺の目を見て必死に叫ぶように鳴いている。エルの感情が俺に流れ込んでくる。


「助けて。……助けて!」


 言葉ではなく、感情でエルは訴えている。どうやって……と考えた俺が思いついた方法は1つだけだった。血を与える。


「ネクロスさん、俺、魔王のようにできるかな?」


「血を、与えるつもりか。お主がいくら助けたくとも此奴の器が耐えられるか、賭けじゃな」


 魔物が意識を取り戻した。俯いたまま、声にならない声で何かを伝えようとしている。まだやり残したことがあるのかもしれない。俺は叫んでいた。


「よいか、生きるも死ぬもお前次第だ!俺の血を与える!」


 魔物は虚な目で俺を見上げた。目が合った瞬間、目が、受け入れる、まだ死ねないと訴えている気がした。


「戻って来い!」


 サブ武器のナイフで手の平を切り、血を与える……何も起こらない。エルが、身体を震わせた。全身の毛を逆立てている。エルから光が溢れ、電気が走るように、俺とコボルトを包んだ。


◇


――「お、起きたな。」


 ジョリは起き上がろうとして全く身体が反応しないことに気がついた。熱い。自分の中で大きな何かが暴れ回っている気がする。目の前の魔族の男は自分とパーティの自己紹介をして、今迄の経緯を話した。ジョリが覚えているのは男に血を与えられた事だけだった。カッツと名乗った男はまず、眠れと言った。熱が引けば立てるようになる。男の言葉を当たり前のように受け入れ、ジョリは心地よい眠りに落ちてゆくのを感じた。


◇


 それから3日、ジョリは男達と過ごした。魔法生物であろう喋るクマのぬいぐるみは、鞄の中から薬草類を出して惜しげもなくジョリに使ってくれた。流石にポーションを使おうとした時はやめて貰った。ジョリには高価なポーションに 値する何かを返すことはできない。


 カッツという男は浮世離れしていて、警戒心がまるで無い。ジョリを家族のように扱い、献身的に世話を焼いた。この人のよさでよくこれまで生きてこれたとジョリが思った程だった。魔法生物をさん付けで呼んでいるが、上級魔族の振る舞いではない。そこらの街の人族といった方がしっくりくる。


 2人に礼を言うと、


「礼ならエルに言え」


 と声を揃えた。なんでも、はじめにジョリを救おうとしたのはこのエルという山猫らしい。コボルト族なら山猫の恐ろしさは子供のころから教えられる。強い魔力を持っていて、縄張りに入った熊をも噛み殺すと親に教えられる。大人になっても怖い。目の前にいるネコにジョリがお礼をすると、手をぺろりと、なめられた。危うく気を失いそうになるのをジョリは必死に堪えた。

 

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