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ネコを拾ったら魔族になったったオハナシ 〜ネコと一緒のスローライフ〜  作者: とんじる


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17.港町ヌカーヌカ

 2日程船で西に進み中継地点の島に着いた。小さな漁村があり土産物の干物を売っている。殆どの客はそれを買い求めている。決して広くはない船に押し込まれるように乗っていたのだ。小島であろうと開放感がある。財布の紐も緩むのだろう。


 ネクロスさんが買って焼けと煩いので3枚ほど買って店で網を借りて焼いてたら、今度は酒を売りにきた。もちろん酒も買う。ネクロスさんが、買ったそばからグイグイと飲み干す。ぬいぐるみが干物を肴に酒を飲んでいるのが珍しいのか何人か集まってきたが、あまりにいい飲みっぷりに感化されたのか、真似をしはじめて辺りは煙に包まれた。客寄せパンダならぬ、客寄せグマである。ぬいぐるみだけど。


「旦那の魔法生物ですか?おかげさまで酒まで売れます。ありがたいことです」


 程よく塩気の効いた干物をむしって食べていると、土産物屋の主人が楚々と近づいてきて俺にも酒を注ぎ挨拶をして行った。商売熱心なものだと感心した。


 ひと組、船から降りて何も食べないグループがいた。マーレを追い出した連中だ。ネクロスさんを見てたけど、俺と目が合うと目を逸らして船に戻って行った。


◇


 更に2日波に揺られ、港町ヌカーヌカに到着した。この世界に来て1番大きな街。魔王の島だけでなく、何本か航路がこの街から繋がっているそうだ。元の世界のハブ空港みたいな交通の要衝なんだろう。宿に泊まる。エルは従魔という扱い。小型の従魔は部屋に一緒に泊まれるそうだ。ネクロスさんは魔法生物という扱いで俺と同じ料金を取られた。ぬいぐるみなのに。


 港町だけあって魚介類を使った料理がうまい。金額を伝え、おまかせで頼む、はじめに茹でた小さな巻き貝が出てきた。新鮮な貝はワタの苦みがアクセントとなって幾らでも食べれそうだ。ネクロスさんは殻ごと食べていた。この生き物はどういう胃袋してるのか、1度見てみたい。シメに麦のお団子が入ったスープが出た。香草の香りが効いている。いい出汁だと思ったら、はじめの方で出てきた巻き貝の茹で汁がベースなんだそうだ。エルにはフォーンの肉を食べてもらった。いつもよりガッツいていたから気に入ったのだろう。


 翌朝、西へ向けて旅立つ。町を出て街道を数キロ歩いた頃、背後から


「待ちやがれ!」


 と声がした。顔を見ると、元マーレのパーティメンバー達だ。無視してそのまま歩くと、剣を抜いて背後から斬りかかってきた。避けなければ致命傷だっただろう。しかし、剣は空を斬った。


「何のつもり?」


理由を訊いてみたけど、


「ソイツを寄越せ!」


 リーダー格であろう戦士が剣先で指した先にいるのは、ネクロスさんだ。


「魔法生物なんて、珍しくないんだろう?この世界では」


「バカ言いやがる。メシを食って酒を飲む魔法生物なんて聞いたこともねぇ。王都の貴族にでも売れば、大金に変わるって訳だ。オマエじゃ、その価値も分からねぇだろうから、俺達に寄こせっ!」


なるほど、目の付け所が違うって事かと、俺は納得した。


「ほう、中々いい目を持っておるのう……」


 ネクロスさんがフワフワと前に出て奴らに近づいてゆく。奴らはネクロスさんを捕まえようと殺到したが、ネクロスさんは、するりするりとかわしてしまう。大の大人が必死になって、クマのぬいぐるみを追いかけているのは中々シュールだ。


 魔法を使える者が呪文を詠唱すると、氷柱が数本出現した。狙いはネクロスさんだ。氷柱はネクロスさんの手前で消えてしまった。パーティの連中が一瞬にして固まった。


「ご馳走さん。お返ししないとな」


 ネクロスさんが言うと、先程の数倍の大きさの氷柱が出現した。

 

「何か言い残すことはあるかの?」


全員、言葉が出てこない。


「カッツ、こやつら、どうする?許してやるかの?」


「……ネクロスさん、こんなヤツらに構わず行こう。」


「カッツは、優しいのう……。」


氷柱は遥か上空に飛んでった。


俺たちは呆気に取られているパーティを残して歩きはじめる。


「クソッ!」


 戦士がが懲りずに斬りかかろうとした、その時、空から氷柱が降ってきた。


「我は許してやるとは言っとらんからの……」


氷柱は寸分違わずパーティメンバーを貫いていた。


◇


 夕方まで歩いて小さな村に着いた。村の宿に泊まる。一階が食堂兼酒場となっており中々の盛況振りだ。


「いや、凄かった。あれは余程の遣い手だぜ。」


 隣のテーブルでは若い冒険者達が昼に街道沿いで見たという氷漬けのパーティの話をしている。まさか、すぐそばで燻製を食べているクマのぬいぐるみの仕業だとは思うまい。


「カッツ、御主、いつから気づいてた?」


「昨夜、宿の外から敵意を感じてたからね。途中で寄った島でこっちを見てたけど、ネクロスさんが目当てだとは思わなかったよ」


「まぁ、合格点じゃ。警戒は怠るなよ。メシを食おうが、寝てようが」


 この世界の生命は軽過ぎる。元の世界との大きな違いだ。昼間の冒険者達は他人の生命を奪おうとして、自ら死地に飛び込んだようなものだ。相手が自分より強いか分かる能力も必要なのかもしれない、俺はそんな事を考えた。


 翌朝、ネクロスさんが提案してきた。儀式の場へ向かう前に西にある城塞都市グレイスガルドを目指す事だった。商都とも呼ばれる大都市である。目的は冒険者ギルドへの登録である。登録ならヌカーヌカでもできたのだが、グレイスガルドには、冒険者のスキルが分かる装置があるそうで、俺のスキルや今後の成長に役に立つかもしれないそうだ。この世界に来た時に、ワタリは世界を渡る時に何かのスキルを得ることが多いと言われたことを思い出した。俺にスキルがあるのか無いのか、検討もつかないけれど、行ってみる価値はありそうだ。分かりやすい目標を持つのは大切だ。俺は昨日より少しだけ急ぎ足で西へ歩き出した。


 


 

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