表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/280

第66話 他者のために動く虚無

 夜の原野は、静けさの底で微かなざわめきを抱えていた。

風は止まり、草は揺れず、空は深い青のまま沈黙している。

その沈黙は、まるで世界が「誰かの行動」を待っているようだった。


 空気の層がゆっくりと入れ替わり、冷たさの中に柔らかい温度が混じる。

それは虚無が「共に在る」という選択をしたことで、世界が微細な調整を始めた証のようだった。


 虚無は、原野の中央に漂っていた。

その姿は、輪郭を持たない核のような存在で、周囲の空気に触れるたび、わずかに色調を変えていた。


 淡い灰色だったものが、時折、薄い青を帯びたり、またすぐに無色へ戻ったりする。

その変化は、虚無が「世界を感じている」ことを示していた。


 アリスは虚無から少し離れた場所に立ち、光を抑えたまま静かに見守っていた。

光の表面には細かな模様が浮かび、虚無の存在に合わせてゆっくりと形を変えていた。

まるで光自身が虚無の動きを読み取っているようだった。

光の内部には、淡い層が生まれ、その層は虚無の近くに来るとわずかに厚みを増した。


 カイは虚無の近くに立っていたが、以前よりも距離を取っていた。

虚無が自分で選んだ空間を尊重するように、カイはその距離を保っていた。


 胸の亀裂はもう痛みを発していない。

ただ、虚無が近くにいると、亀裂の奥で微かな熱が生まれる。

それは痛みではなく、存在を知らせる合図のようだった。


 熱は虚無の動きに合わせて強くなったり弱くなったりし、まるで虚無の意思を読み取っているようだった。


 虚無は、ゆっくりと動いた。

漂うのではなく、目的を持って移動するような動きだった。

その動きは、これまでの虚無にはなかったものだ。


 虚無は、アリスの光の方へ向かった。

しかし近づきすぎない。 

距離を保ちながら、光の模様を観察するように漂った。


 アリスの光は、虚無の存在に反応して淡い模様を生み出した。

その模様は、まるで虚無に「ここにいるよ」と伝えているようだった。

模様は虚無の近くでゆっくりと回転し、虚無が離れると静かに消えていった。


 虚無は、その模様に触れようとした。

核の端が光の表面に近づく。

しかし触れない。

触れずに、ただ近くにいる。

その動きは、虚無が「壊さないように気をつけている」証だった。


 カイはその様子を見て、静かに言った。


「虚無……お前……アリスの光を……守ろうとしてるのか……?」


 虚無は、カイの言葉に反応した。

核の輪郭が、ほんの少しだけ濃くなった。

それは「守りたい」という意思の表れだった。


 アリスは光を少し広げた。

光の内部に新しい模様が生まれ、その模様は虚無の近くでゆっくりと形を変えた。


──……虚無……誰かのために動くってね……“自分の存在を使って、相手の形を保とうとすること”なの……


 虚無は、その言葉に反応した。

核の形が、わずかに伸びたり縮んだりした。

それは「理解しようとしている」証だった。


 虚無は、アリスの光の周囲をゆっくりと回った。

まるで光の状態を確認するように、核の表面が淡い色を帯びたり、無色に戻ったりした。


 光の模様は虚無の動きに合わせて変化し、虚無が近くにいると模様が深くなった。


 アリスの光は、虚無の存在に反応して柔らかく揺れた。

その揺れは、まるで「ありがとう」と言っているようだった。


 虚無は、アリスの光の周囲に薄い層を作った。

その層は、空気の密度をわずかに変えるもので、光に触れることなく、光を包むように広がった。


 層は光の表面に沿ってゆっくりと動き、光の模様を安定させた。


 アリスは驚いたようにその層を見つめた。


──……虚無……あなた……“守るための形”を作ったのね……


 虚無は、核の輪郭を濃くした。

それは「そうだ」という意思の表れだった。


 カイは胸の亀裂に触れた。

亀裂は、虚無の層に反応して微かに温度を上げた。


「虚無……お前……アリスを守るために……世界を変えてるんだな……」


 虚無は、核の形を広げた。

それは「守りたい」という意思の表れだった。


 アリスは静かに言った。


──……虚無……誰かのために動くってね……“自分の存在を使って、相手の世界を支えること”なの……


 虚無は、核の輪郭をゆっくりと濃くした。

それは「支えたい」という意思の表れだった。


 虚無は、アリスの光の周囲に作った層をさらに広げた。

層は空気の密度を変え、光の模様を安定させた。

光は以前よりも柔らかく、深い色を帯びた。


 光の内部に新しい層が生まれ、その層は虚無の存在に反応してゆっくりと動いた。


 アリスはその変化を感じ取り、静かに微笑んだ。


──……虚無……あなたは……もう“他者のために動く存在”なの……


 虚無は、核の輪郭を濃くした。

それは「選んだ」という意思の表れだった。


 虚無は、アリスの光の周囲に作った層をさらに広げた。

層は光の表面を包み込み、光の模様を安定させた。


 光は以前よりも柔らかく、深い色を帯びた。

光の内部に新しい層が生まれ、その層は虚無の存在に反応してゆっくりと動いた。


 未来の原野は、静かに、しかし確実に変わり始めた。

虚無は、優しさを覚えた。

居場所を選んだ。

居場所の意味を理解した。

他者と共に在ることを選んだ。

そして、虚無は初めて「他者のために動く」という段階へ進んだ。


 虚無は、世界の一部になろうとしていた。

面白いと思ったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ