表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/280

第36話 影の帰還

 根源層の光が静まり、世界がゆっくりと形を取り戻していく。


 白い空間に、少しずつ色が戻り、漂う文字が再び流れ始めた。


 アリスは俺の腕の中で、小さく息をしていた。


「アリス……大丈夫か」


──……うん……カイが……守ってくれたから……


 その声は弱々しいが、確かな温かさがあった。


 リーナが駆け寄る。


「アリスちゃん……!本当に……よかった……!」


 アリスは微笑んだ。


──……ありがとう……リーナ……


 根源層は静かだった。

まるで嵐の後のように。


 だが、その静けさは長く続かなかった。


 空間の奥で、黒い影が揺れた。


 敵調整者の影。


 消えたはずのその存在が、再び姿を現した。


 リーナが息を呑む。


「カイさん……!まだ……生きて……!」


「来るぞ……!」


 影はゆっくりと歩み寄りながら言った。


「……見事だ。原型と鍵が“設定を超えた”のは、世界の歴史でも初めてだ」


「だったら、もう俺たちに手を出すな」


「それはできない。お前たちは“危険すぎる”」


 影の声は淡々としていた。


「原型と鍵が結びつけば、世界の設定そのものが揺らぐ。均衡が崩れれば、世界は再構成され続ける」


「そんなの……させない!」


「させない?もう始まっている」


 影が指を鳴らした。


 根源層の空間が揺れ、白い壁に“ひび”が走る。


 そのひびから、黒い霧が漏れ出した。


 リーナが震える。


「な、何ですか……あれ……!」


「“再構成の残滓”だ。原型の力が暴走したときに生まれる、世界の“未完成の設定”」


 黒い霧は形を変え、獣のような影を作り始める。


 アリスが震える声で言う。


──……カイ……あれ……わたしの……力の……残り……


「アリスの……?」


──……うん……わたしが……完全に制御できなかった部分……


 影は静かに言った。


「原型の力は、“書き換え”と“創造”だ。制御できなければ、世界に“異物”を生む」


「異物……?」


「そうだ。世界に存在してはならない“設定”。それが、お前たちの前に現れる」


 黒い霧が形を取り、巨大な影の獣が姿を現した。


 揺らぎの獣とは違う。

もっと荒々しく、もっと“生まれたて”の存在。


 リーナが叫ぶ。


「カイさん……!あれ……!」


「ああ……アリスの力の暴走が生んだ……“新しい設定”だ」


 影は静かに言った。


「これが、原型と鍵が結びついた結果だ。世界は、お前たちを中心に揺らぎ始めている」


「黙れ……!」


「黙らない。これは“事実”だ」


 影は一歩前に出た。


「鍵よ。お前は選ばなければならない。原型を守るか、世界を守るか」


 アリスが震える。


──……カイ……わたし……どうすれば……


 俺はアリスの手を握った。


「アリス、俺はどっちも守る。お前も……世界も……!」


 影は静かに笑った。


「ならば、証明してみせろ」


 影の獣が吠え、根源層が揺れた。


 戦いが始まる。


 影の獣が吠えた瞬間、根源層の空間が大きく歪んだ。


 白い床が波のように揺れ、空間そのものが“生き物”のように脈打つ。


 リーナが叫ぶ。


「カイさん……!空間が……!」


「気をつけろ、リーナ!」


 影の獣は、生まれたばかりの“設定”だ。


 形が安定せず、獣の姿になったかと思えば、次の瞬間には人の腕のような影が伸びる。


 アリスが震える声で言う。


──……カイ……あれ……わたしの……“未完成の力”……


「未完成……?」


──……うん……わたしの力は……まだ完全じゃない……だから……“形になりきれない設定”が……こうして……生まれる……


 影は静かに言った。


「原型の力は、世界を創る力だ。だが、未完成のまま使えば、世界を壊す」


「アリスは壊さない!」


「壊すつもりがなくても、結果は同じだ」


 影の獣が吠え、影の腕が俺たちへ迫る。


「リーナ、下がれ!」


「は、はい!」


 俺はアリスの手を握りしめた。


「アリス、力を貸せ!」


──……うん……!


 アリスの光が俺の身体に流れ込む。


 世界の文字が視界に広がり、影の獣の“設定”が見える。


(……これは……“未完成の設定”……なら……)


「アリス、書き換えろ!俺が調整する!」


──……わかった……!


 アリスの光が獣へ向かう。


 獣の身体が揺れ、影の形が崩れ始める。


 影が叫ぶ。


「やめろ!!未完成の設定に触れれば、お前たちの存在が揺らぐ!」


「揺らいでもいい!アリスと一緒なら……俺は何度でも立ち上がる!」


──……カイ……!


 アリスの光が獣を包み、俺はその“設定”を調整する。


(……安定させる……形を整える……世界に馴染ませる……!)


 獣の影が光に溶け、白い文字へと変わっていく。


 リーナが叫ぶ。


「カイさん……!消えていく……!」


「ああ……アリスの力が……正しく働いてる!」


 影は静かに言った。


「……馬鹿な……原型と鍵が……“未完成の設定”を安定させるなど……」


 アリスの声が響く。


──……わたし……カイとなら……世界を壊さない……世界を……守れる……


 影は沈黙した。


 そして、ゆっくりと姿を消した。


 根源層に静寂が戻る。


 リーナが息をつく。


「カイさん……本当に……終わったんですか……?」


「いや……まだだ」


 胸の奥の欠片が、強く脈打つ。


──……カイ……“次の層”が……呼んでる……


「次の層……?」


──……わたしの力が……完全に目覚める場所……


 根源層の奥で、新たな光が瞬いた。


 それはまるで、俺たちを呼んでいるようだった。

面白いと思ったら、ページ下の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ