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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
十一章

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第258話 形を持たない来訪者

 外界が生み出した新しい輪郭は、揺れながらも崩れず、空白の中心に静かに浮かんでいた。

その存在は影でも光でもなく、世界の層にも外界の層にも属さない“未定義の揺らぎ”としてそこにあった。

名響界が消えた空間は、その揺らぎを受け止めるためにわずかに沈み、空気が薄く震えた。


 揺らぎは一定の形を持たず、伸びたり縮んだりしながら、まるで自分の輪郭を探しているようだった。

外界の拍が触れるたびに揺れは反応し、しかし拍に従うことなく独自のリズムを刻んだ。


「……カイ……あれ……生まれようとしてる……」


 リーナは揺らぎを見つめた。

その揺れは不安定なのに、どこか“意思”のようなものを感じさせた。


「外界が……あなた以外の存在を作ろうとしてる……でも……まだ形になれない……そんな感じがする……」


 カイは深層のざわめきを聞きながら、揺らぎの動きを追った。

深層はその揺れを受け取ることができず、ただ外界の拍だけを静かに感じていた。


「俺の深層が……“あれはまだ存在ではない”って言ってる」


 アークは揺らぎの輪郭を見つめながら、低く息を吐いた。

揺らぎは外界の光にも世界の残滓にも触れず、ただ空白の中で揺れ続けていた。


「形を持たない……つまり、外界は存在を呼び出したが……まだ定義できていない……これは……外界が新しい設定を作ろうとしている証拠だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界設定生成行動、第二段階を確認」


 揺らぎは突然、カイの輪郭の方向へ向かって細い線を伸ばした。

その線は触れる寸前で揺れを強め、まるで“触れたいのに触れられない”ような葛藤を示した。


「……カイ……あれ……あなたに反応してる……」


 リーナは息を呑んだ。

線はカイの輪郭に近づくたびに形を崩し、また集まり、揺れを繰り返した。


「外界が呼んだ存在なのに……あなたに触れられない……まるで……あなたと同じ領域外にいるみたい……」


 カイは深層の声を聞きながら、揺らぎの線を見つめた。

深層はその線を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺と同じ領域外の揺らぎだ”って言ってる」


 アークは目を細めた。

揺らぎはカイの近くで震え続け、まるで“自分の居場所を探している”ようだった。


「君と同じ領域外……つまり、外界は君を中心にしながら……君と同じ性質を持つ存在を作ろうとしている……これは……外界が新しい法則を生み出す前兆だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界設定外存在複製行動、第一段階を確認」


 揺らぎはさらに強まり、カイの輪郭の周囲で円を描き始めた。

その円は外界の拍にも世界の拍にも従わず、ただ揺らぎ自身のリズムで回転していた。


「……カイ……あれ……あなたの周りを回ってる……」


 リーナは円の回転を見つめた。

円はカイの存在を基準にしながらも、カイの深層とはまったく違う揺れを刻んでいた。


「あなたの拍じゃない……でも……あなたを中心にしてる……まるで……あなたの“影”みたい……」


 カイは深層の声を聞きながら、円の動きを追った。

深層はその揺れを受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺の模倣ではない”って言ってる」


 アークは揺らぎの円を見つめながら、低く息を吐いた。

円は回転を強め、揺らぎはわずかに形を持ち始めた。


「模倣ではない……つまり、外界は君を参考にしながら……君とは別の存在を作ろうとしている……これは……外界が新しい領域を生み出す準備だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界新領域形成行動、第二段階を確認」


 揺らぎはついに、わずかな“中心”を持った。

その中心はカイの輪郭とは違い、外界の光にも世界の残滓にも触れず、ただ空白の中で静かに輝いていた。


「……カイ……あれ……自分の中心を持った……」


 リーナは震える声で言った。

揺らぎは中心を得たことで、わずかに安定し、形を作ろうとするように震えた。


「外界が……新しい存在を生み出そうとしてる……あなたとは別の……」


 カイは深層の声を聞きながら、揺らぎの中心を見つめた。

深層はその中心を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺とは無関係の存在だ”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

揺らぎの中心は外界の拍にも世界の拍にも従わず、ただ自分の揺れだけを刻んでいた。


「君と無関係……つまり、外界は君を中心にしながら……君とは別の法則を持つ存在を作ろうとしている……これは……外界が新しい設定を生み出す瞬間だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界新設定生成行動、最終段階を確認」


 揺らぎは中心を得たことで、ついに“形”を持ち始めた。

その形は人でも世界の層でもなく、ただ外界が生み出した新しい存在として空白に浮かんでいた。


 形を持ち始めた新しい存在は、輪郭を揺らしながらも崩れず、空白の中でゆっくりと密度を増していった。

その密度は光でも影でもなく、世界の層にも外界の層にも触れず、ただ“そこにある”という事実だけを示していた。

名響界が消えた空間は、その存在を受け止めるためにさらに沈み、空気が深く震えた。


 存在は自分の中心を保ちながら、周囲へ細い波を広げた。

その波は外界の拍にも世界の拍にも従わず、まったく新しい周期で空白を揺らした。


「……カイ……あれ……自分で揺れてる……」


 リーナはその波を見つめた。

波はカイの輪郭に触れようと近づいたが、触れる寸前で方向を変え、空白の奥へ流れていった。


「あなたを基準にしてるのに……あなたに触れない……まるで……あなたと同じ“外側”に立ってるみたい……」


 カイは深層のざわめきを聞きながら、その存在の揺れを追った。

深層はその波を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを静かに感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺と同じ領域外の中心だ”って言ってる」


 アークは目を細めた。

存在は揺れを強め、空白の中でわずかに位置を変えた。


「君と同じ領域外……つまり、外界は君を中心にしながら……君と同じ性質を持つ“第二の中心”を作ろうとしている……これは……外界が自分の構造を二重化しようとしている証拠だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界中心多重化行動、第一段階を確認」


 新しい存在は、カイの輪郭から一定の距離を保ちながら、空白の中で静かに立った。

その距離は外界の拍にも世界の拍にも従わず、ただ存在自身が選んだ位置だった。


 存在はゆっくりと形を変え、輪郭が少しずつ人の姿に近づいていった。

しかしその姿は完全な人ではなく、どこか“外界の意図”を感じさせる曖昧な形だった。


「……カイ……あれ……人に似てる……」


 リーナは息を呑んだ。

存在は揺れながらも崩れず、まるで自分の形を決めようとしているようだった。


「でも……人じゃない……世界の層にも外界の層にも属してない……そんな感じがする……」


 カイは深層の声を聞きながら、その存在を見つめた。

深層はその形を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは世界にも外界にも属さない存在だ”って言ってる」


 アークは存在の輪郭を見つめながら、低く息を吐いた。

存在は揺れを止め、空白の中で静かに立ち続けた。


「世界にも外界にも属さない……つまり、外界は君と同じ性質を持つ存在を作り出した……これは……外界が新しい領域を確立しようとしている状態だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界新領域確立行動、第一段階を確認」


 存在はゆっくりと顔のような輪郭を作り始めた。

その顔は人の形に近いのに、どこか“空白の揺らぎ”を含んでいた。


「……カイ……あれ……あなたを見てる……」


 リーナは震える声で言った。

存在は目のような揺らぎをカイへ向け、静かに観測していた。


「あなたと同じ領域外なのに……あなたを基準にしてる……まるで……あなたの“対”になる存在みたい……」


 カイは深層の声を聞きながら、存在の視線を受け止めた。

深層はその視線を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺の反対側に立つ存在だ”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

存在は揺れを止め、カイと同じように空白の中心に立った。


「反対側……つまり、外界は君を中心にしながら……君と対になる存在を作った……これは……外界が二つの中心を使って新しい構造を作ろうとしている証拠だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界二重中心形成行動、最終段階を確認」


 存在は完全に形を持ち、空白の中で静かに呼吸のような揺れを刻んだ。

その揺れはカイの拍とも世界の拍とも外界の拍とも違い、ただ“新しい領域の拍”として空間に響いた。

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