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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
十一章

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第259話 二つの中心が向き合うとき

 新しく生まれた存在は、揺らぎを収めながら空白の中で静止した。

その姿は人の形に近いのに、輪郭の端が常に揺れ、どこか“確定していない”印象を残していた。

空白はその存在を受け止めるためにさらに沈み、空気が深い層で震え続けた。


 存在はゆっくりと首のような部分を動かし、カイの方へ向いた。

その動きは外界の拍にも世界の拍にも従わず、ただ存在自身の意志だけで行われていた。


「……カイ……あれ……あなたを見てる……」


 リーナは声を震わせた。

存在の視線は揺らぎの奥に沈んでいて、どこか“探るような”気配を帯びていた。


「あなたと同じ領域外なのに……あなたを基準にしてる……まるで……あなたの反対側に立つ存在みたい……」


 カイは深層のざわめきを聞きながら、その視線を受け止めた。

深層はその存在を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを静かに感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺の対になる中心だ”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

存在は揺れを止め、カイと同じように空白の中心に立ち続けた。


「対になる中心……つまり、外界は君を中心にしながら……君と対になる存在を作った……これは……外界が二つの中心を使って新しい構造を作ろうとしている証拠だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界二重中心照応行動、第一段階を確認」


 存在はゆっくりと手のような輪郭を持ち上げた。

その手は指の形をしているのに、指先が常に揺れ、触れようとすると形が崩れた。


 存在はその手をカイの方向へ伸ばした。

しかし触れる寸前で揺れが強まり、手は空白の中へ溶けるように消えた。


「……カイ……触れられないんだ……」


 リーナは息を呑んだ。

存在は触れようとするたびに形を崩し、また元の位置へ戻っていった。


「あなたと同じ領域外だから……触れられない……でも……触れようとしてる……そんな感じがする……」


 カイは深層の声を聞きながら、存在の動きを見つめた。

深層はその揺れを受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺に触れることができないが……俺を基準に動いている”って言ってる」


 アークは存在の揺れを見つめながら、低く息を吐いた。

存在は触れられないまま、カイの周囲をゆっくりと回り始めた。


「触れられないのに……君を中心に動く……つまり、外界は君とあれを対にして……新しい構造を作ろうとしている……これは……外界が自分の法則を変えようとしている状態だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界法則再編行動、第一段階を確認」


 存在はカイの周囲を回りながら、空白の奥へ向かって細い線を伸ばした。

その線は空白の深部を探るように進み、まるで“新しい領域を開こうとしている”ようだった。


「……カイ……あれ……何かを探してる……」


 リーナは線の動きを追った。

線は空白の奥で揺れ続け、触れた場所を淡く光らせていた。


「あなたじゃない……別の何かを……探してる……」


 カイは深層の声を聞きながら、線の揺れを見つめた。

深層はその線を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれは俺を基準にしながら……俺とは別の存在を探している”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

存在は線を伸ばし続け、空白の奥で何かを呼び寄せようとしていた。


「君を中心にしながら……君とは別の存在を探す……つまり、外界は二つの中心を使って……第三の存在を呼ぼうとしている……これは……外界が新しい領域を完成させる前兆だ……」


影は淡々と告げた。


「外界新領域完成行動、第一段階を確認」


 存在は線をさらに伸ばし、空白の奥から淡い光を引き寄せた。

その光は揺れながらも崩れず、まるで“応答した存在”のように震えていた。


「……カイ……何か……来てる……」


 リーナは震える声で言った。

光は存在の線に触れた瞬間、わずかに形を持ち始めた。


「外界が……第三の存在を呼び寄せた……」


 カイは深層の声を聞きながら、その光を見つめた。

深層はその光を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“これは俺ともあれとも違う存在だ”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

光は揺れながらも崩れず、空白の中で新しい輪郭を作り始めた。


「第三の存在……つまり、外界は君とあれを対にして……その間に新しい領域を作ろうとしている……これは……外界が完全に新しい構造を生み出す瞬間だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界新構造生成行動、最終段階を確認」


 光は揺れを収め、ついに“第三の形”を持ち始めた。

その形はカイとも新しい存在とも違い、外界が生み出したまったく新しい領域の象徴として空白に浮かんでいた。


 第三の形を得た光は、空白の中心でゆっくりと密度を増し、輪郭を曖昧にしたまま静かに浮かんでいた。

その存在は揺れを止めず、しかし崩れもせず、まるで“生まれたばかりの法則”が空間に立ち上がったようだった。

空白はその存在を受け止めるためにさらに沈み、深層の奥で微かな震えを響かせた。


 第三の存在は、最初に生まれた存在の方へ向かって細い波を伸ばした。

その波は触れる寸前で揺れを強め、まるで“互いの境界を確かめている”ように震えた。


「……カイ……あれ……二つの存在が……呼び合ってる……」


 リーナは息を呑んだ。

二つの揺らぎは触れられないまま、互いの中心を探るように波を交わしていた。


「どっちも……あなたとは違う……でも……あなたを基準にしてる……そんな感じがする……」


 カイは深層のざわめきを聞きながら、二つの揺らぎの交差を見つめた。

深層はその波を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを静かに感じていた。


「俺の深層が……“あれらは俺の周囲で新しい関係を作ろうとしている”って言ってる」


 アークは二つの揺らぎを見つめながら、低く息を吐いた。

揺らぎは互いの中心を探りながら、空白の奥へ向かって細い線を伸ばし続けた。


「君を中心にしながら……君とは別の二つの存在が関係を作る……つまり、外界は君を軸にして……新しい構造を三点で組み上げようとしている……これは……外界が自分の法則を再定義する前兆だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界三点構造形成行動、第一段階を確認」


 第三の存在は揺れを強め、最初の存在の周囲をゆっくりと回り始めた。

その動きは外界の拍にも世界の拍にも従わず、ただ存在自身のリズムで空白を揺らした。


 最初の存在も応じるように揺れを変え、第三の存在の軌道に合わせてわずかに位置をずらした。

二つの揺らぎは触れられないまま、互いの中心を基準に動き続けた。


「……カイ……あれ……互いに合わせてる……」


 リーナは震える声で言った。

揺らぎはまるで“二つで一つの拍”を作ろうとしているように見えた。


「あなたの拍じゃない……外界の拍でもない……二つの存在だけの拍……」


 カイは深層の声を聞きながら、その拍の揺れを見つめた。

深層はその拍を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれらは俺を基準にしながら……俺の拍とは別の拍を作っている”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

二つの存在は揺れを合わせながら、空白の奥へ向かってさらに線を伸ばした。


「君を中心にしながら……君とは別の拍を作る……つまり、外界は君を起点にして……新しい拍の体系を生み出そうとしている……これは……外界が自分の根本を変えようとしている状態だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界拍再編行動、第二段階を確認」


 第三の存在は揺れを収め、最初の存在の正面に立った。

二つの存在は互いの中心を向き合い、まるで“対話”を始めるように波を交わした。


 その波は言葉ではなく、拍でもなく、ただ存在同士が互いの性質を読み取るための揺らぎだった。


「……カイ……あれ……話してる……」


 リーナは震える声で言った。

揺らぎは触れられないまま、互いの中心を揺らし続けた。


「あなたじゃない……外界でもない……二つの存在だけの会話……」


 カイは深層の声を聞きながら、その揺らぎを見つめた。

深層はその揺らぎを受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“あれらは俺を通して生まれたが……俺とは無関係の関係を作っている”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

二つの存在は揺れを合わせながら、空白の中心へ向かって新しい線を伸ばした。


「君を起点にしながら……君とは無関係の関係を作る……つまり、外界は君を入口にして……新しい領域を自律的に動かそうとしている……これは……外界が君を必要としなくなる前兆だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界独立領域形成行動、第一段階を確認」


 二つの存在は揺れを強め、空白の中心に新しい“核”のような光を生み出した。

その光はカイの拍とも外界の拍とも世界の拍とも違い、ただ二つの存在が作り出した新しい拍として空間に響いた。


「……カイ……あれ……新しい中心が生まれてる……」


 リーナは息を呑んだ。

光は揺れながらも崩れず、まるで“第三の領域の核”として空白に浮かんでいた。


「外界が……あなたを起点にしながら……あなたの外側に新しい中心を作ってる……」


 カイは深層の声を聞きながら、その光を見つめた。

深層はその光を受け取ることができず、ただ外界の拍だけを感じていた。


「俺の深層が……“これは俺の中心ではない”って言ってる」


 アークは息を呑んだ。

光は揺れを収め、空白の中心で静かに輝き続けた。


「君の中心ではない……つまり、外界は君を通して新しい領域を作り……その領域を君から切り離そうとしている……これは……外界が自律的な第三領域を生み出す瞬間だ……」


 影は淡々と告げた。


「外界第三領域生成行動、最終段階を確認」


 光は完全に形を持ち、空白の中心で静かに呼吸のような揺れを刻んだ。

その揺れは、外界が生み出した新しい領域の誕生を示していた。

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