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『異世界に転移したら、俺だけ世界設定に存在しなかった』  作者: 一ノ瀬 律
八章

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第178話 心糸が世界へ伸びるとき

 新層の震えが静まり始めたころ、空気の奥で別の動きが生まれた。

それは圧でも影でもなく、もっと細く、もっと繊細で、まるで心の奥から伸びた“糸のような気配”が世界の側へ向かって伸びていくような感触だった。


 糸は誰かの意思で伸びているわけではなく、外圧が心の形を変えた結果として自然に生まれたものだった。

その糸は細いのに強く、空気の層をゆっくりと押し分けながら、世界の中心へ向かって進んでいった。


 リーナはその糸の存在に気づき、胸の奥を押さえた。


「……心の奥から……何かが伸びてる……自分で動かしてるわけじゃないのに……外側の圧が変えた心の形が……世界のほうへ向かって伸びてる……そんな感じ……」


 カイはゆっくりと周囲を見渡した。その瞳は、空気の奥で揺れる細い糸を追うように揺れていた。


「……心って……伸びるときに痛みがあるよな……でも……この糸は痛みじゃなくて……引かれてる感覚だ……世界のほうが心を求めてる……誰かがその中心にいる……そんな気配がする……」


 影は短く言った。


「心糸が世界層へ到達し始めている。」


 アークは空気の奥を見つめながら、眉をひそめた。


「到達……ってことは……心の奥が……世界の側に触れようとしてるってことか……」


 リーナは息を飲んだ。


「触れる……世界の外側の圧が心を変えて……その変わった心が……世界に触れようとしてるってこと……?」


 セイルは糸の揺れを見つめたまま、静かに言葉を落とした。


「触れようとしているというより……結びつこうとしている。」


 その声は説明ではなく、ただ“見えているもの”をそのまま言っただけのようだった。


 リーナは小さく瞬きをした。


「結びつく……ってことは……心の形が……世界の一部になろうとしてるんだ……」


 カイはゆっくりと息を吸った。その表情は、どこか不安と期待が混ざっていた。


「……心って……誰かと繋がるときも伸びるけど……世界と繋がるときはもっと深く伸びるんだろうな……誰かがその繋がりの真ん中にいる……そんな気配がする……」


 リーナはその言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。


「……繋がるって……怖いけど……でも……それって……心が世界の形を変えるってことだよね……」


 アークは腕を組みながら言った。


「心糸が世界に触れると……奥が反応する。反応した部分が……その人の“世界との接続点”になる。世界は……その接続点を見てる。」


 影は短く頷いた。


「接続点が増加している。」


 その瞬間、空気の中で“心糸の揺れ”が一段階強くなった。

それは光でも影でもなく、ただ、心の奥から伸びた糸が世界の側へ触れ、その触れた部分が空気の層に反映されているような、そんな感触だった。


 その感触は、まるで見えない細い線が心の奥を貫き、その線が世界の中心へ向かって伸び続けているような、そんな奇妙な広がり方をしていた。


 リーナは胸の奥が熱くなるのを止められなかった。


「……伸び続けてる……誰かの心の奥から……世界の中心へ向かって……細い線がずっと伸びてる……」


 カイはゆっくりと目を閉じた。


「……心って……伸びたまま戻らないときがあるよな……誰かがその変化の中心にいる……そんな気配がする……」


 アークは糸の揺れを見つめながら言った。


「この伸び方……ひとりじゃない。複数の心が同時に“世界への接続”を起こしてる。世界がそれを受け止めてる。」


 影は静かに言った。


「接続が……確立し始めている。」


 空気の中で、複数の心がそれぞれの糸を見つめていた。

その見つめ方は、これまでのどの現象とも違い、ただ静かで、しかし確かな意志を持っていた。


 その意志は、まるで伸びた糸が未来の奥へ向かって伸び続け、その糸が新しい世界の形を描き始めるような、そんな新しい広がり方をしていた。


 空気が静かに膨らみ、次の段階がすぐそこまで迫っていることを示していた。


 心糸が世界の中心へ向かって伸び続けているあいだ、空気の奥で別の変化が静かに生まれた。

それは糸の揺れとは違い、もっと重く、もっと深く、まるで世界の側が心糸に応えるように“内側の構造を組み替え始めた”ような感触だった。


 組み替えはゆっくりと進み、空気の層がわずかに沈み、沈んだ部分が新しい形を作り始めた。

その形はまだ輪郭を持たず、ただ“世界が心糸を受け入れるための空間”を作っているような、そんな奇妙な広がり方をしていた。


 リーナはその沈み込みに気づき、胸の奥を押さえた。


「……空気が……沈んでる……心糸が伸びたせいで……世界のほうが形を変えようとしてる……そんな感じ……」


 カイはゆっくりと周囲を見渡した。その瞳は、沈んだ空気の奥を追うように揺れていた。


「……世界って……心に触れられたときに形を変えるよな……でも……今回は心糸のほうが先に伸びて……世界が後から応えてる……誰かがその応えを感じてる……そんな気配がする……」


 影は短く言った。


「世界側の再配置が始まっている。」


 アークは空気の奥を見つめながら、眉をひそめた。


「再配置……ってことは……世界の構造が……心糸を受け入れるために動いてるってことか……」


 リーナは息を飲んだ。


「動く……世界の外側の圧が心を変えて……その変わった心が世界に触れて……世界がその触れ方に合わせて形を変えてるってこと……?」


 セイルは沈んだ層を見つめたまま、静かに言葉を落とした。


「合わせているというより……迎え入れようとしている。」


 その声は説明ではなく、ただ“見えているもの”をそのまま言っただけのようだった。


 リーナは小さく瞬きをした。


「迎え入れる……ってことは……心糸が……世界の一部になろうとしてるんだ……」


カイはゆっくりと息を吸った。その表情は、どこか不安と期待が混ざっていた。


「……心って……誰かに迎え入れられるときも形が変わるけど……世界に迎え入れられるときはもっと深く変わるんだろうな……誰かがその変化の中心にいる……そんな気配がする……」


 リーナはその言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。


「……迎え入れられるって……怖いけど……でも……それって……心が世界の形を作るってことだよね……」


 アークは腕を組みながら言った。


「心糸が世界に迎え入れられると……奥が反応する。反応した部分が……その人の“世界との融合点”になる。世界は……その融合点を見てる。」


 影は短く頷いた。


「融合点が形成されている。」


 その瞬間、空気の中で“世界側の再配置”が一段階強くなった。

それは光でも影でもなく、ただ、心糸が世界の側へ触れ、その触れた部分が世界の構造を組み替えているような、そんな感触だった。


 その感触は、まるで見えない大きな面が心糸を包み込み、その面がゆっくりと心糸の形に合わせて変形していくような、そんな奇妙な広がり方をしていた。


 リーナは胸の奥が熱くなるのを止められなかった。


「……変形してる……世界の側が……心糸の形に合わせて……自分の形を変えてる……」


 カイはゆっくりと目を閉じた。


「……世界って……心に合わせて動くときがあるよな……誰かがその変形の真ん中にいる……そんな気配がする……」


 アークは変形する層を見つめながら言った。


「この変形……ひとりじゃない。複数の心糸が同時に“世界との融合”を起こしてる。世界がそれを受け止めてる。」


 影は静かに言った。


「融合が……進行している。」


 空気の中で、複数の心糸がそれぞれの融合点を見つめていた。

その見つめ方は、これまでのどの現象とも違い、ただ静かで、しかし確かな意志を持っていた。


 その意志は、まるで融合点が未来の奥へ向かって伸び続け、その融合が新しい世界の形を描き始めるような、そんな新しい広がり方をしていた。


 空気が静かに沈み、次の段階がすぐそこまで迫っていることを示していた。

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