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予知能力で彼女を寝取られる未来を見た ~諦めて他のSS級美少女たちを救ってたら、なぜか執着され始めた件~  作者: おなきく


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第99話 新学期①

 どうにか和花(のどか)の両親とは話がまとまった。

 和花の父親のスタートアップに必要な資金も、思っていたより少なくて済んだ。

 ……和花が同棲の許可まで取ろうとしたときは、さすがの父親も堪えきれず涙ぐんだが。


 そのまま愛理(あいり)とゆいを連れて、俺は家に向かった。


「すべて丸く収まったわね、(れん)くん」

「まあ、結果的には……」


 正直、我ながら和花の父親に殴られても文句は言えないと思っていた。

 いくらか大目に見てもらえたのは、俺が彼女の命の恩人だったからなのだろう。

 何より、和花自身の意志が強かった。


「でも正直、なんていうか……和花を金で買ったみたいで、後味が悪いんだ」


 作戦だったとはいえ、父親が首を縦に振った決め手がエンジェル投資だったことに変わりはない。

 もちろん、彼が本当に金のために和花を売ったわけではないはずだ。

 もう反対しきれないと悟ったところへ、投資という形の落としどころが差し出された。

 だからこそ、矛を収めたのだろう。


「蓮くん、それは考えすぎ。何も知らない和花さんをお金で釣ったわけじゃないでしょ。蓮くんのことが大好きな和花さんを迎えに行くために、使えるものを使っただけだよ」

「そうかな……?」

「そうよ。ネット小説で言うなら、主人公が決闘に勝って、攫われたヒロインを取り戻すのと同じことよ」


 いや、それじゃ和花の父親が完全に悪役じゃないか……。


「異世界の主人公が武力で救い出すなら、蓮くんは現代社会の武器――お金を使っただけよ」

「言われてみれば、そんな気もするな……」

「ダメね、蓮くん。帰ったら私がまた、体で癒してあげる」


 正直、和花も愛理も、十分すぎるほど色っぽかった。

 我ながら、俺も相当な変態だなと思う。


「でも愛理、俺はもう限界だ。正直、色々ありすぎて疲れた」


 夏祭りでの長澤(ながさわ)先輩と心愛(ここあ)さんの件に始まり、さっきの和花の両親のことまで。

 たった一日で、こんな怒涛の展開が押し寄せるなんて思わなかった。

 日記に書こうものなら、夜が明けるまでペンを走らせることになりそうだ。


「分かったわ。代わりに明日またしてくれる?あ、もちろん今度は私たちに任せて。今日は蓮くんが頑張ってくれたし」

「……二日連続でやる気?」

「何言ってるの、蓮くん」


 愛理がニヤリと口角を上げ、言葉を継いだ。


「毎日よ」

「……」


 どうやら俺は、サキュバスたちを彼女にしてしまったらしい。



 ◇



 いつも以上に長く感じた夏休みが終わった。

 二学期の教室は賑やかだった。

 相変わらずの奴らもいれば、夏の間にすっかり変わってしまった奴らもいた。


 二学期が始まって早々、席替えが行われた。

 その結果、俺の席は愛理の『悪夢』で見た通り、窓際だった。

 そして、前の席には高木(たかぎ)が座っていた。


「よお、元気か?」

「元気だけど。ていうか、お前、なんでそんなに焼けてるんだよ」


 もともとそこまで色白でもなかったのに、日焼けサロンに通い詰めたのかと思うほど真っ黒になっていた。


「うちの親戚が海の家をやっててさ。バイトがてら少し手伝ったら、このザマだよ」

「へえ、そうなんだ」


 こいつはこいつで青春を謳歌したってことか。


「他には?」

「……ない」

「そう?」

「そうだってば! 綺麗なお姉さんたちの水着姿で目の保養をして、ナンパもちょっとくらいしてみたかったのに! 忙しすぎて、そんな暇、一秒たりともなかったんだよ!!」


 高木が不満をぶちまけ始めた。

 どうやら得たものは、容赦ない紫外線だけだったらしい。


「お前はどうだったんだ?」

「俺? まあ……本当に色々あったな」


 和花や愛理とデートして、三泊四日の海旅行にも行って、心愛さんを落雷事故と電車事故から救って、ゆいと少しずつ和解して……。

 これまでで一番濃い夏休みだったと言っていい。


 高木が身を乗り出して、声を潜めた。


「そういえばお前、結局誰に決めたんだ?」

「何を?」

「とぼけんなよ! 小森(こもり)さんか菅原(すがわら)先輩かって話に決まってんだろ」

「あ……」


 こいつには色々と助けてもらったし、嘘はつきたくなかった。

 だが、俺たち三人の関係をむやみに話してもいいものか。

 そう迷っていた矢先だった。


「小森さん、小森さん、この写真マジ?」

「深川くんと付き合ってるの?」

「しかも美人で有名な菅原先輩もいるし、三人ってどういう関係? もしかして、三人で付き合ってるの?」

「え、えっと……」


 ……夏祭りの時の写真まで撮られていたらしい。

 女子たちが和花を取り囲んで質問攻めにしていた。

 当然、和花はガチガチに固まり、まともに答えられずにいた。


 女子たちの声が高木の耳にも届いたのか、彼が低い声で尋ねてきた。


「深川よ……。まさかとは思うが、『両方』なのか?」

「さあ、何のことやら……」

「お前、マジか!? 本当に三人で付き合ってんのか!?」

「さあ、何のことやら……」

「マジでムカつくわこいつ!! お前が幸せになるのは願ってたけど、ここまで幸せになれとは言ってねえぞ!!」


 高木が怪獣みたいに、グオオッと吠えた。

 俺たちの会話に聞き耳を立てていた他の男子たちも、「おいおい、マジかよ」とざわつき始めた。

 この調子じゃ、噂が広まるのも時間の問題だな……。


 和花のことが少し心配になって、彼女のほうへ視線を向けた。

 俺の視線に気づいた彼女は、ビクッと肩をすくめて、耳まで真っ赤にもじもじし始めた。

 その反応に、女子たちがまたしても大きく食いついた。


「え、何なに!? 小森さん、超可愛いんだけど!!」

「やっぱり付き合ってるんだ! しかも三人でなんて、漫画みたい!」

「何それ、ハーレムってやつ? でも、なんでよりによって深川くんなの? まあ、見た目は悪くないけど、ごく普通だし」


 ああ、やっぱり俺を快く思わないやつもいるよな。

 いや、考えてみれば印象が悪いのも当然か。

 クラスメイトから見れば、幼なじみの結月(ゆずき)を理不尽に振っておいて、別の女の子二人と同時に付き合い始めた最低男に映るはずだ。


 ところが和花は眉をひそめ、冷えた声で言い放った。


「少なくとも私の前では、蓮の悪口を言わないでほしいんだけど」

「あ、ご、ごめん。そういうつもりじゃなくて。た、ただちょっと不思議だなっていうか……」

「まあ、それは……。優しいし、顔もタイプだし……。そ、それに、その……。すごいから」

「え? 何が?」

「ぐ、具体的には言えないけど、い、色々とね!」

「「きゃあ〜」」


 おそらく和花は、俺の財力や予知能力のことを言いたかったのだろう。

 あからさまに口にできず、言葉を濁したのだ。

 ……けれど、どう見ても他の女子たちは別の意味に受け取っていた。


「そんなにすごいんだ、深川くん」

「やっぱり、あれには勝てないって言うもんね」

「あれって何よあれって」


 女子たちが一斉に笑い声を上げた。

 当の和花だけは意味が分からないらしく、一人で首を傾げていた。


 今度は、ゆいを囲む別の女子たちの会話が耳に飛び込んできた。


「私、最初マジで誰か分かんなかったじゃん! 結月、夏休みデビューでもしたの?」

「そういうわけじゃないけど……」

「あ、そっか! 別れたから髪切ったりする、ああいうやつ!」

「い、いや……」


 見れば、ゆいの周りにも女子たちが群がっていた。

 制服の着こなしも、以前とは少し違っていた。

 ボタンは一番上まで留めず、スカートの丈も少しだけ短い。


「あ、あのさ、みんな。実は私、お願いがあるんだけど……」

「ん? 何?」

「私、これからは結月じゃなくて、ゆいって呼んでほしいの」

「え? 急に? 何それ?」

「え、えっと、それは……」


 ゆいが少し慌てて、言葉を詰まらせた。

 いや、そこまでしなくてもいいのに。


 ゆいが声を落として言った。


「実はね……蓮と別れたの、全部私のせいなの。蓮は何も悪くない。だから昔の自分を捨てたくて、イメチェンもしたし、呼び方も変えてもらおうと思って」

「そ、そうなんだ。うん、分かった。じゃあこれからはゆいって呼ぶね」

「ありがとう。あと念のために言っておくけど、蓮を責めたりしないでね。これ、私が決めたことだから」

「もちろんよ」


 そのやり取りは、高木の耳にも届いていたらしい。

 高木は目を丸くし、こちらに顔を向けた。


「なんか変わったな、北山さん」

「そうか?」

「ああ。なんて言うか、今度こそ本気でお前のことを想ってるんだなって、伝わってくるっていうか」

「何だよ、それ」

「知らねえよ俺も」


 高木が笑い飛ばした。

 こいつ、本当に勘が鋭いな。


 ひとまず、うちのクラスは大きな波乱もなく新学期を迎えられそうだった。

 愛理のクラスはどうなっているだろう。

 放課後に聞いてみようと思っていたところで、高木が口を開いた。


「あ、そういえばお前に朗報があるぞ」

「朗報?」

「写真部のことだよ」


 高木がニヤリと口角を吊り上げた。


「強制廃部になりそうだぜ」

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