↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予知能力で彼女を寝取られる未来を見た ~諦めて他のSS級美少女たちを救ってたら、なぜか執着され始めた件~  作者: おなきく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/106

第81話 メイド②

 いや、なんでメイド服?

 こっちはまだ、全然状況に追いつけていないのに——


「メイド服!? み、見たいです!!」


 心愛ここあさんのテンションが、誰よりも上がっていた。

 しまいには、勝手にドンキの袋から引っ張り出してみせた。

 結月ゆずきは顔をほんのり赤らめ、俺をチラリと見た。


「メイドだから一応買ってきたんだけど……」


 そういえば、結月はとりあえず形から入るタイプだった。

 それより、あのメイドの提案は、比喩でもなんでもなく言葉通りの意味だったのか。


 愛理あいりが鼻で笑った。


「メイド服、着たことないの?」

「ええ、まあ、そりゃ……。普通は着る機会なんてないじゃないですか」

「へえ、そうなんだ。大好きなオタクの彼氏のために着てあげたこともないのね」

「うっ……」


 オタクの彼氏って、俺のことだよな?

 愛理、あからさまに牽制してるな。

 そもそもここに結月を呼ぼうと言い出したのは愛理なのに、何を考えているんだろう。


「私たちは超ミニスカも、マイクロビキニも、ケモミミコスも着たのに。ね、和花のどかさん?」

「え? そ、そうですね。れん、なんだかんだ言ってコスプレ好きみたいだし」


 結月の両手は小刻みに震えていた。

 だが反論の言葉が見つからないのか、口を真一文字に結んだままだった。


 そんな結月の両手を、心愛さんがぱっと取った。


「早く着てください! ゆずさん、絶対すごく似合うと思います!」

「う、うん……」


 心愛さんに背中を押され、結月はメイド服を持って部屋へ着替えに向かった。

 どうやら心愛さんは、今回も険悪な空気を察して、あえて割って入ってくれたらしい。


「もう、お二人とも! いくら蓮様の元カノが気に入らないからって、そんなにピリピリしてたら心愛メンヘラになっちゃいそうです!」

「ごめんなさい、美代子みよこさん。確かにちょっと過敏になってたわね」


 心愛さんが地雷ちゃんシンドロームのリーダーかどうかは分からない。

 ただ、この前の特典会を見る限り、実質的にグループを引っ張っているように見えた。

 そのせいか、こういう場を取り持つのが妙にうまい。

 ……肝心の本人は、グループ内でハブられているというのに。


「ところで蓮様、どうしてあんなに可愛い人を振ったんですか? 付き合ってた頃にメイド服を着てくれなかったから?」

「いや、まさか。ちょっと事情があるんですけど……」

「あ、すみません! 超プライベートなことですよね」


 心愛さんが深く頭を下げた。


「いやいや、気になるのは当然ですよ。ただ……たぶん聞いたら、心愛さんは俺の頭がおかしいと思うはずです」

「そうですか? 正直すっごく気になりますけど、後でもっと蓮様と仲良くなったら聞くことにしますね!」

「俺ともっと仲良くなる計画なんですか?」

「もちろんです!」


 彼女はさりげなく俺の二の腕を掴み、小声で続けた。


「心愛をもっと好きになって、心愛をもっとたくさん推してもらわなきゃいけませんから!」

「あ、はは……」


 この子、本気でドームを狙っているのかもしれない。



 ◇



 白いフリルのカチューシャ。

 襟とカフスの白が映える、黒のパフスリーブワンピース。

 そして、細かなフリルをあしらった純白のエプロン。

 きゅっと絞られたウエスト。

 その上では、豊かな胸がエプロンを押し上げ、否応なく視線をさらっていく。


「お、おお! か、可愛いです! でもすごい!!」


 結月が部屋から出てくると、心愛さんが叫んだ。

 結月は恥ずかしいのか、頬を上気させていた。


「す、すごいって?」

「ここですよ!」


 心愛さんが人差し指で、ぐいっと結月の胸元を示した。


「羨ましいなあ、あたしもこれくらい大きかったら、今よりもっと人気出たはずなのに」

「いいことばかりじゃないんですよ……?」

「巨乳の子って絶対みんなそう言うんですけど、じゃあ貧乳になるかって聞かれたら、絶対ならないじゃないですか!」


 胸のことでよほど鬱憤が溜まっていたのだろう。

 心愛さんは日頃の恨みつらみを晴らすかのように、貧乳にまつわるエピソードを次々とまくし立てた。

 芸能界では外見の比較が一般社会より露骨なぶん、コンプレックスも刺激されやすいのかもしれない。


 心愛さんが、珍しくがっくりと肩を落とした。


「はぁ……高校生になったら、もうちょっと成長しますかね。ちなみに、ゆずさんと秘書さんって、いつ頃からそんなに大きくなったんですか?」

「ちょっと、私もそんなに小さくないんだけど!?」


 和花が反発すると、心愛さんが和花の胸のあたりをじっと見つめた。


「服の上からだとちょっとよく分からないんですよね。一回触ってみてもいいですか?」

「だ、ダメ! は、恥ずかしいし……。それに、私の胸は蓮しか触れないんだから」

「ここでノロケですか! くっ、蓮様は本当に女運がいいですね!」

「あ、はは……」


 俺はぎこちなく笑うしかなかった。

 和花と愛理のことを思えば、確かに女運が悪い方ではないだろう。

 だが予知能力がなければ、俺は結月と付き合い続け、取り返しのつかない結末を迎えていたかもしれない。

 そういう意味では、予知能力が俺の女運の悪さを、かろうじて帳消しにしてくれたとも言える。


「それでそれで、お二人はいつそのサイズになったんですか?」

「うーん……。中学生の時だったと思うけど」

「私もよ」

「じゃああたし見込みなし!? このまま貧乳人生!?」


 結月と愛理の答えに、心愛さんががっくりとうなだれた。

 まあ、女の子はたいてい、男より成長が早いっていうし。

 それでも俺は、慎重に言葉を選んで心愛さんに言った。


「心配しないでください。高校に入って大きくなる可能性はゼロじゃないですから」

「そ、そうですよね? まだワンチャンあるんですよね?」

「もちろんですよ。それに、まあ……。貧乳が好きな人も多いですし」

「それ、全然慰めにならないんですけど!? 貧乳でもOKならまだしも、巨乳より貧乳が好きって男、そんなに多くないじゃないですか!? しかもなんかちょっと引くし!!」

「世の中にはいろんな好みがありますからね」

「だから全然慰めになってないんですけど!! ちなみに蓮様は貧乳と巨乳どっちですか?」

「そりゃ巨乳——。あ、胸だけで女の子を判断したりしませんよ」

「遅すぎます!!」


 心愛さんが怒ったように眉間を寄せ、俺の胸板を両手でぽかぽか叩いた。

 一方で、結月はうつむいて自分の胸元に視線を落とし、ぽつりとつぶやき、かすかに微笑んだ。


「やっぱり蓮は巨乳が……」


 その様子を見た愛理が「ふーん……」と声を漏らした。


「蓮くんが巨乳好きなの知ってたのに、一回もそれで喜ばせてあげなかったのね」

「うっ……。どうしてそれを……」

「和花さんの時はすごく喜んだって、蓮くんが自分で言ってたから。ね、和花さん?」

「え? う、うん……。ちょっと恥ずかしかったけど、すごく喜んでくれて……」


 その瞬間、結月の顔が引きつった。

 腹を立てながらも、必死にこらえている顔だった。

 本当に、愛理と結月は水と油だ。


「ひえええっ……! なんだか大人の会話が聞こえたような気がします……!!」


 心愛さんが顔を真っ赤に染めて、両頬に手を当てた。

 ああ、確かに中学生の前でする話ではまったくない。

 とはいえ、歳は一つしか違わないのだが。


「ほらほら、雑談はここまでにして、宿題に戻ろう」

「はーい」

「あの、蓮……」


 結月が恐る恐る尋ねた。


「私は何をすればいい……?」

「とりあえず、今日は和花と心愛さんの宿題を手伝ってくれないか。中3の範囲ならまだ覚えてるだろ?」

「ある程度は」


 俺ほどじゃないにしても、結月も勉強はそこそこできる方だ。

 正直、三人に教えながら自分の分まで片づけるのは、少しキツかった。

 これで、だいぶ楽になりそうだ。。


「それから、ちょっと真面目な話があるから後で少しうちに来てくれ」


 心愛さんの『悪夢』について知っておく必要があるからな。

 すると結月が目を丸くした。


「え? ほ、本当に? 私が蓮の家に行ってもいいの?」

「あ、ああ……」


 結月は、本当に嬉しそうに笑った。

 前は当たり前のように俺の家を出入りしていたから、こんな反応は見られなかった。


 なぜか、付き合っていた頃よりも、今の結月のほうが彼女みたいに見えた。



 ◇



 とりあえず、今日の分の夏休みの宿題は全部終わらせた。

 これからは心愛さんのオフに合わせて集まることにして、俺たちは家へ引き上げた。

 もちろん、結月も一緒に。


 母さんが結月を見て、気遣わしげに声をかけた。


「話は大体あゆみさんから聞いたわ。結月ちゃんも随分苦労したそうね」

「そ、それは……」

「この前、私も詳しい事情を知らなかったとはいえ、冷たくしてごめんなさいね」

「い、いえ……」

「じゃ、ゆっくりしていってね」


 そのまま二階に上がろうとした、その時。

 カチャッという音とともに、トイレから杏奈あんなちゃんが出てきた。


「え? だ、誰?」


 案の定、杏奈ちゃんが結月を見るなり後ずさりした。

 結月も杏奈ちゃんに気づき、「この子は……?」と首を傾げた。


 和花が杏奈ちゃんの隣に寄り添いながら答えた。


「私の妹よ」

「あ、そういえば前に言ってたね、妹がいるって」

「うん。杏奈、ちゃんと自己紹介しなきゃ」


 結月が腰をかがめて杏奈ちゃんと視線を合わせた。


「私は北山きたやま結月。お嬢ちゃんの名前は?」

「こ、小森こもり杏奈です……。その……。もしかして、お姉ちゃんの友達だった人?」


 だった、って。

 そういえば杏奈ちゃんは、勘が鋭い上に、言葉も容赦なくストレートだ。


 結月が戸惑った様子で「あ、はは……」とぎこちなく笑った。


「まだ友達……だと思ってるよ」


 その言葉に、和花がはっと目を見開く。

 正直、俺も意外だった。

 ただ、伊藤いとうさんの時みたいに、また仮面をかぶっているだけなんじゃないか——そんな疑いも、わずかにあった。


「杏奈ちゃーん?」


 その時、母さんの呼ぶ声が聞こえた。

 途端に杏奈ちゃんが、びくりと肩を跳ねさせた。


「トイレ終わった? 次はなにして遊ぼっか?」

「そ、それぞれ読書……」

「あら、そんなのつまんないじゃない! おばさんにいい考えがあるからついてきて!」

「嫌だ……!!」


 杏奈ちゃんはうちの母さんに手を引かれ、部屋へ連れていかれた。

 結月だけはこの光景に慣れておらず、「え? 何?」ときょとんとしていた。

 一方で、和花と愛理は平然と二階へ上がっていった。


 俺の部屋の前に着いたところで、和花が口を開いた。


「ゆ、結月。ちょっと私たち二人だけで話そ」


 その表情は、この上なく真剣だった。

 和花の性格を考えれば、この一言だけでも、相当な勇気を振り絞ったはずだ。


 俺はわざと黙っていた。

 ここで目配せでもすれば、結月は応じるだろう。

 だが、それでは和花が振り絞った勇気を、俺が台無しにしてしまう。


(とにかく、和花も一度結月と決着をつけなきゃいけないしな)


 例の体育の時間の喧嘩以来、この二人がまともに顔を合わせたことはなかったはずだ。


 結月が、和花と俺の顔を交互にちらりと見た。

 やがてぎゅっと目をつむり、こくりと頷いた。


「分かった」


 その返事を聞くなり、愛理がすっと俺の腕に抱きついてきた。


「じゃあ蓮くん。ううん、ご主人様。私たちはエッチなことでもしてようか」

「……」


 わざと隣の部屋に声を聞かせるつもりじゃないだろうな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。