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予知能力で彼女を寝取られる未来を見た ~諦めて他のSS級美少女たちを救ってたら、なぜか執着され始めた件~  作者: おなきく


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第63話 過激なファーストキス

 ここで俺が愛理あいりの願い事を断れば、和花のどかはよくて愛理はダメだという理屈になってしまう。

 ……和花の場合は、どちらかといえば不意を突かれたようなものだった。

 だが愛理には、そんな言い訳は通用しない。


(下手したら、二人の関係が取り返しのつかない事態になりかねない)


 今、俺たち三人が妙な関係にありながらも平和でいられるのは、俺の公平な接し方が多少は影響しているからだろう。

 だが、それが崩れた瞬間、愛理は和花を出し抜くために手段を選ばなくなるに違いない。

 そう――家族のためなら、自分の身すら顧みなかったあの時のように。


(そうなれば、和花はひどく傷つくだろうし……)


 ただでさえ、和花は人付き合いが極端に苦手だ。

 せっかく親しくなれた相手が突然敵意をむき出しにしたら、とてつもないショックを受けるはずだ。

 そう――結月ゆずきと大喧嘩したあと、呆然と歩いて車に轢かれかけた、あの時のように。


(……そこまで読んで提案してきたのだろうか)


 正直、愛理とそういう関係になりたくないわけじゃない。

 美人なうえに献身的な女の子を、嫌いになるはずがない。

 むしろ、和花にしても愛理にしても、俺にはもったいないと思えるほどだ。

 ただ、俺の中で何かが引っかかっているだけだ。


(なんだかどんどん愛理の計画通りに進んでいる気がするが……)


 これからも俺たち三人が穏やかな日常を過ごせるのなら、俺のちっぽけな良心など安いものだ。

 結局、一番得するのは俺に違いないし。


 俺は愛理に頷き、答えた。


「分かった。けど、するのは愛理からだ。和花がしたみたいに」

「……分かったわ。じゃあれんくん、命令して。私を、奴隷みたいに」


 奴隷ヒロイン志望はまだ健在なのか。

 これもすべて、自分を奴隷ヒロインにするための計画なんじゃないかとさえ思えてきた。

 分かっていながらも彼女の思惑に乗るしかない自分が、少し情けない気もする。


「愛理、俺にキスしろ」

「はい、ご主人様……」


 彼女が目を細め、顔を近づけてきた。

 整った目鼻立ちが、視界いっぱいに広がった。


 やがて、しっとりとした唇が触れ合った。

 小さく、チュッという音がした。


「やっと、やっとくれた。ご主人様、もう一回だけするね」

「え? ち、ちょっと――」


 和花だって一回だけだったのに?

 だが、そんなツッコミを入れる暇もなく、次の瞬間には唇を塞がれていた。

 今度は両腕を俺の背に回して強く抱きつき、全身で縋りつくように力を込めてきた。


「……!?」


 さっきよりも深いキスに、俺は目を見開いた。

 でも、確かに初めてというのは本当みたいだな。

 経験のある人間が見れば、童貞や処女かどうかはすぐ分かるというが、どうやら本当らしい。


 だが正直、むしろこのぎこちなさが妙に興奮を掻き立てた。

 一歳差とはいえ愛理は年上だし、普段のイメージもかなり大人びている。

 そんな彼女に、男慣れしたところがまるでなく、不器用さばかりが滲んでいるなんて。


(どうせこうなったんだ、俺がリードしようか)


 これ以上、愛理に主導権を握らせたら、本当に最後までいってしまいそうだった。

 だがそれ以上に、キスがどういうものか教えてやりたい気持ちのほうが強かった。

 そう、単なる俺の歪んだ欲望だった。


 一度唇を離して呼吸を整え、今度は俺からもう一度唇を重ねた。

 愛理は不意を突かれたように小さく震えたが、すぐにそれを受け入れ、ぎこちなくも応えてきた。


 薄く目を開けると、さっきまでの緊張がほどけた彼女の顔は、甘くとろけていた。

 見たことのない愛理の表情を見て、俺は思わず口角を上げた。


(そういえば、結月にはこんな風にしたことがなかったな)


 大切だったから、いつも優しくするだけだった。

 もちろん、今目の前にいる愛理が大切じゃないわけではない。

 だが愛理は――俺の中の荒々しいものでさえ、すべて受け止めてくれそうな気がした。

 何より、本人がそれを望んでいるように思えた。



 ◇



「すっごくよかったよ、蓮くん」


 ……どうにか、理性の糸だけは手放さずに済んだ。

 危うく暴走しそうだった――いや、もう十分すぎるほど暴走していたか。


「ごめん、俺がちょっと乱暴に……」

「何言ってるの、すっごくよかったんだから。私、やっぱり優しいのより乱暴にされる方が好きみたい」

「でもそもそも、なんでいきなりあんなキスにしたんだよ。和花とは本当にチューだけだったのに」

「そうだったの? 知らなかったわ」


 やっぱり、こうやってしらを切ると思っていた。

 これ、100%わざとだ。


「でも蓮くんって、本当に別の意味ですごいわね。あそこまでいったのに最後までいかないなんて」

「愛理、あんまり進展が早すぎると、逆に良くないこともあるんだぞ」

「そう? でも蓮くん、ちょっと嬉しいわ」


 愛理がニヤリと笑い、言葉を続けた。


「私ともっと進展すること、考えてくれてるってことでしょ?」

「うっ……」


 ここまでくれば、俺も認めざるを得ない。

 俺はもう、愛理をはっきり異性として意識している。

 手に入れたい。他の誰にも渡したくない。そう思ってしまうくらいには。


 露天風呂から出ると、待っていた和花がなぜかまたムスッとした顔で近づいてきた。


「なんか、昨日の私の時よりずっと長かったんだけど」

「それは和花さんが途中で逃げ出したからでしょ」

「うっ!」

「それに実は蓮くんと――」


 愛理が和花の耳に口を近づけてヒソヒソと囁いた。

 ……どうせ何を吹き込むつもりか分かりきっているのに、どうしてわざわざそんなことをするんだ。


 間もなくして、和花の顔が真っ赤になった。

 それだけじゃなかった。

 よく見れば、その目元がうっすらと潤んでいた。


「れ、蓮……。どうして私にはそういうことしてくれないの? わ、私のキス、そんなに下手くそだった……?」

「あ、いや、そういうわけじゃ」

「私だって蓮の命令ちゃんと聞くし、蓮に乱暴にされたいのに」

「分かった、分かったから。後で望み通りにしてやるから、泣き止んで。な?」

「……約束?」

「ああ」


 本気で泣き出しそうだったから、さすがに焦った。

 和花は、本気で嫉妬すると怒るより先に泣いてしまうんだな。

 これからは極力気をつけなければと思った。


 一方で、俺は愛理を睨みつけた。


「……わざと狙っただろ?」

「さあ?」


 気づけば勢いで、和花とも深いキスの約束までしてしまっていた。

 俺と和花の性格を見切ったうえで、自分の二股計画に都合のいい流れへ誘導したのだろう。

 愛理は知れば知るほど少し恐ろしくもある。


 和花が一歩踏み出して、俺の近くに寄ってきた。

 そして、自分の頭を差し出すように、軽く俯いた。


(一つ試してみようか)


 何を求めているのかはすぐに察しがついた。

 けれど、本当に和花はそんな乱暴なことを望んでいるのだろうか。

 愛理と違って、むしろ優しさを求めているような気がするんだが。


「和花、してほしいことがあるなら直接口で言ってみて」

「え、え? う、うん……。その……」


 和花は耳まで真っ赤にしながら、小さな声で言った。


「な、撫でてください……」


 恥ずかしそうにしながらも、ためらいはしなかった。

 ……案外、和花も方向性が違うだけで、愛理と同じタイプなのか?


「よくできました」


 俺は和花の望み通り、彼女の頭を優しく撫でた。

 すると、彼女が笑った。


「えへへ……。蓮、いつしてくれるの? え、エッチなキス……」

「……どうしても日にちを決めなきゃダメ?」

「うやむやに誤魔化されるのは嫌だもん」


 なんでこういうときに限って、いつものツンデレが出ないんだ。


「来週……いや、今週中にするよ」

「本当だよね? こ、今度は蓮からしてね……?」

「分かった」


 俺と和花のやり取りを聞きながら、なぜか愛理は微笑ましげにしていた。



 ◇



 今日は本当に色々ありすぎたせいか、枕に頭を乗せた途端、眠気が一気に押し寄せてきた。

 やけに長く感じた今回の夏旅行も、明日帰れば終わりだ。


 この時、俺は油断していた。

 まさか、また『悪夢』を見ることになるなんて。

 それも、心愛ここあさんの――。

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