第50話 ツンデレと挑発と煽り
俺が段ボール箱から取り出したのは、ビニールで包装された服だった。
「これ、着てきて」
「何よ、これ? スカート?」
和花と愛理が受け取って広げた。
確かにスカートではあった。
ただ……。
「な、何よこの丈!? す、すっごく短いんだけど!?」
「なるほど、超ミニってやつね。アニメや漫画に出てきそうな」
「まあ、そうだな」
「上着とかは?」
「それは自由にコーデして。下着も含めて」
「し、下着も含めて!?」
「これくらい短いと、少し動いただけで当然見えるだろ。だから言ったじゃん、エッチだって。やめるなら早く言えよ」
「や、やめないって言ったじゃない!」
和花が拗ねたように超ミニスカートを胸に抱えて、俺の部屋から出ていった。
愛理はそんな和花を見てくすくす笑った。
元々は愛理に選ばせるつもりで、白と黒の二枚を用意していたのだが——まさかこんな形で和花にも渡すことになるとは思ってもみなかった。
「愛理」
「どうしたの?」
「……これ、宅配便で届いたのを先に見て、わざと和花を巻き込んだんじゃないよな?」
「さあ? じゃあ私も着替えてくるわね」
この曖昧な反応、100%だな。
でも、どうして和花をわざわざ巻き込んだんだろう。
愛理が俺に好意を持っていて、こんなのも俺とわざと妙な雰囲気を出すためだとしたら、彼女にとって和花はむしろ邪魔な存在のはずだ。
ハーレム気分を味わわせてやろうなんて、さすがにないだろう。
(……なんかこれ、密かに期待しちゃうな)
俺が用意したエロい服を女の子が着てくれる状況。
今日の超ミニスカートもコスプレ専門店で仕入れたものだ。
とすれば、これも一種のコスプレと言えるのかもしれない。
考えてみれば、結月とはこういったことを一度もしたことがなかった。
結月には、嫌がられそうで言い出せなかったから。
(どうせ何かを要求し続けなきゃいけないなら……)
結月にはどうしても頼めなかったことをやってみようか。
そうしていれば、愛理が気乗りしないことや、本当に嫌がることも、おのずと見えてくるだろう。
いくら彼女でも、本当に何でもOKというわけではないはずだ。
期待半分、不安半分のままベッドに腰を下ろし、あれこれ考えているうちに三十分ほどが過ぎた。
思ったより時間がかかるな――とぼんやり考えた、その矢先だった。
「お待たせ」
部屋のドアが再び開き、二人の姿が現れた。
◇
俺たち三人とも、危うく理性のブレーキが壊れかけていた。
しゃがみ込んだり、ローアングルで盗撮みたいな真似もしたり、ジャンプ動作のあるアイドルダンスを踊ったり。
そして愛理と和花がベッドに寝転がり、二人で体を絡ませたままカメラを見つめる構図の写真まで。
(……次はもう少し自重しよう)
和花がツンデレを発揮すれば、俺も負けじと挑発を返し、そこへ愛理がさらに煽りを加える。
そんな無限ループが、三人の熱気を際限なく高めていった
夜も更けたため、俺一人になった部屋のベッドに横たわった。
今頃隣の部屋では、愛理がモニタリング業務を始めている頃だろう。
普段は休みだからもっと遅くに寝るが、今日は二人と色んなことがあったせいか、すぐに眠気がやってきた。
(明日からはそろそろ海に行く計画でも立てるか)
2泊3日から3泊4日くらいで考えていた。
三人で遠出の旅行か。
……何も起きないよな?
明かりを消して眠りについた。
この時の俺は知らなかった。
まさか、旅行先での『悪夢』を見ることになろうとは——。




