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予知能力で彼女を寝取られる未来を見た ~諦めて他のSS級美少女たちを救ってたら、なぜか執着され始めた件~  作者: おなきく


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第33話 体育祭

 体育祭当日。

 運動が苦手な菅原すがわら愛理あいりは、気乗りしないまま借り物競走のスタートラインに立っていた。


 マイク越しに「用意」の声が響く。

 直後、号砲とともに、愛理は弾かれたように飛び出した。


(お願い、簡単なやつで……)


 彼女は学校行事にそれほど積極的なタイプではない。

 強制参加も同然だから、仕方なく走っているだけ。

 かといって手を抜きすぎれば余計な反感を買うため、人並み程度には力を入れていた。


 テーブルにたどり着いた愛理は、紙を拾い上げて読んだ。


(よし、これなら)


 去年なら戸惑っていたはずのお題だ。

 知り合いもおらず、大声で誰彼構わず連れ出す勇気もなかったのだから。

 しかし、今年は違う。


 愛理は迷うことなく1年2組の生徒たちが集まる場所へ駆け寄ると、金髪ボブの女子の腕をぐいっと掴んだ。


「え!? わ、私ですか!?」

「ええ。だから早く来てちょうだい」

「何のお題なんですか!?」

「それは後で確認して」


 二人は並んでゴール地点へと走り出した。

 それほど遠くもないのに、運動不足の二人はたちまち息を切らした。

 愛理は紙を審判に渡した後、そのままゴールした。


「それで先輩、どんなお題だったんですか?」


 小森こもり和花のどかは期待していた。

 こんなにたくさんの人の中から自分を連れてきたということは、何か特別なお題だったのではないかと。

 クラスメイトたちの話では、生徒会が今年、変わり種のお題をたくさん用意したらしい。


「1年の女子の後輩、よ」

「超普通!!」


 期待はずれの答えに、和花はがっくりと肩を落とす。

 そんな彼女のリアクションが理解できず、愛理は不思議そうに小首を傾げた。


 二人は息を整えながら、グラウンドを並んで歩いていた。

 すると、先ほどの1年2組の方から、右手にギプスを巻いた男子生徒が二人に向かって手を振っているのが見えた。

 以前の愛理なら、きっと無視していた。

 けれど今は、軽く手を挙げて応えた。


「和花さん、一つ気になることがあるんだけど」

「はい?」

結月ゆずきって言ったわよね? 深川ふかがわくんの元カノ。どの子?」

「あ……」


 和花はためらった。

 しかし、どうせ自分がすでに名前まで教えてしまっているし、れんも特に隠そうとはしないだろう。


「あの子です。低めのツインテールの子。胸が大きくて」

「ふーん……。結構可愛いし、男子受けしそうな見た目ね。どうして別れたか知ってる?」

「それはいくらなんでも、私の口から言うのはちょっと……」

「そう? じゃあ、直接聞いてみようかしら」

「え!? 先輩!?」


 別れた経緯を知っていながら、和花は結月よりも蓮と仲が良い。

 それだけで、結月側に原因があると愛理は踏んだ。


 愛理は一歩もためらわず、1年2組のほうへ大股で歩いていった。

 和花は止めることもできず、かといってそのまま放っておくこともできず、後ろからオロオロしながらついていった。


「あなたが結月さん?」

「あ、はい……。すみません、どなた……?」

「ごめんね、急に下の名前で呼んだりして。名前しか聞いてなかったから」

「あ、はい……。北山きたやまと言いますが……」


 愛理がニヤリと笑った。


「2年の菅原よ」

「え? す、菅原先輩って、最近蓮とよく一緒にいる、あの……?」

「私のこと知ってるのね」

「はい、まあ、それなりに有名ですから……」

「その深川くんのことで聞きたいことがあるんだけど、少し時間いいかしら?」


 結月は一瞬ためらいを見せた。

 だが、すぐにコクリと頷いた。

 和花を含む三人はグラウンドを離れ、人けのない校舎裏へ移った。


「単刀直入に聞くわ。北山さん、どうして深川くんと別れたの?」


 その問いに、結月が一瞬拳をきつく握りしめ、眉間を寄せた。


「……どうしてそんなことが気になるんですか?」

「異性として興味があるから、って言ったら?」

「それなら蓮に聞けばいいじゃないですか。どうしてわざわざ私のところへ来たんですか? 本当にいい性格してますね」

「こういうのは元々、両方の言い分を聞いてみなきゃいけないでしょ? その一環よ。もちろん、深川くんにも後で聞くつもりだけど」


 もし別れの直接の原因が蓮の大きな落ち度なら、結月は真っ先にそこを口にしたはずだ。

 それをしない時点で、やはり自分の読みどおり、結月の側に何かある。

 愛理はそう考えた。


「……言っておきますけど、私は浮気なんてしてませんからね!」

「浮気? 深川くんが北山さんのことを疑ったの?」

「私だって悔しいんですよ! 急に部活の先輩と浮気するから関わるなって言われたら、戸惑うじゃないですか!」


 愛理には、すんなりと腑に落ちた。

 事情を知らない者が聞けば、蓮の病的な疑心暗鬼や束縛が原因だと思うはずだ。

 だが、愛理が今まで見てきた彼の姿とは全く結びつかない。

 蓮には蓮なりの、そう疑うだけの理由があるはずだ。


「その部活の先輩に一度会ってみることはできるかしら?」

「え!? せ、先輩! それはやめた方がいいですよ!」


 二人の会話を聞いているだけだった和花が飛び上がって驚いた。


「どうしたの? どんな人か知ってるの?」

「知ってると言うか、知らないと言うか……。と、とにかく私は会いたくないですから!」


 和花が慌てて二人から距離を取った。

 愛理はきょとんとしたが、きっと和花は蓮から何か聞いたのだろう。

 和花は文句こそ言うものの、結局は蓮の言葉に素直に従うところがある。


「それで北山さん? 案内してもらえるかしら?」

「……まあ、それくらいなら構いませんけど」


 二人は再びグラウンドに戻り、3年生が集まっている方へ向かった。

 結月は金髪の巨体という目印を頼りにあたりを見回したが、肝心の姿はどこにも見当たらなかった。

 話を聞くと、写真部の部長が走って足を捻挫し、長澤ながさわ先輩が付き添って保健室へ向かったらしい。


「じゃあ、保健室に行けばいいのね」

「はぁ……。私、なんで今こんなことを……」


 結月がため息をつきながらも、愛理を連れて保健室へ向かった。

 保健室のドアを開けて中に入ると、カーテンが引かれたベッドが一つ見えた。


「部長、ここにいますか?」

「え? あ、う、うん!」


 結月はカーテンをそっと開けた。

 その中には写真部の部長と、三年の男子生徒が一人、背を向けたままベッドに腰掛けていた。


 写真部の部長が結月に尋ねた。


「な、何の用?」

「いえ、実は私に用があるわけじゃなくて……」


 愛理はベッドにいる二人の様子を注意深く観察した。

 写真部の部長は顔を赤くし、体操服もわずかに乱れていて、明らかに取り乱していた。

 ベッドまわりにも、慌てて取り繕ったような不自然さが残っている。


 結月が小声で言った。


「……長澤先輩、先輩を探している人がいます」

「俺を?」


 金髪の巨漢がベッドから立ち上がり、二人の前へと近づいてきた。


「何の用だ?」


 愛理は一目で、長澤という男の底を見た。

 全身をねっとりと舐め回すような視線。

 そして、露骨に見下してくる目つき。

 かつて安値で体を売れと迫ってきた下劣な男たちと――まったく同じ目だった。


「いえ、私の用事はもう済みました。それじゃあ、失礼します」


 愛理はすぐにきびすを返し、保健室の外へ出た。

 結月はわけがわからずぽかんとしていたが、すぐに愛理の後を追いかけた。


「何なんですか、急に! 先輩が会わせてほしいって言ったんじゃないですか」

「北山さんは気づかなかったの?」

「何にですか?」

「あの二人、私たちが来る前までエッチなことしてたわよ」

「え、ええっ!?」


 それすらも気づかないなんて。

 愛理は呆れを通り越し、情けなさすら覚えた。


「どうしてあなたが深川くんに見捨てられたのか、分かった気がするわ」

「何ですかその言い方は! 今私と喧嘩しようって言うんですか!?」

「北山さんはどうしてあんな連中がいるところで部活をしてるの?」

「何言ってるんですか! 自分の夢のために部活をするしかないんですよ」

「そう。その夢が深川くんより大切だってことね」


 結月が眉間をきつく寄せた。


「先輩に何が分かるっていうんですか!! そもそもこの学校に進学したのも、ここの写真部が強豪だからなんですよ! なのに今さら辞めたら……!!」

「私は別に北山さんが悪いとは言ってないわ。ただ、北山さんの優先順位がそうだっていうだけよ」


 たかだか高校時代の恋人のために、自分の真剣な夢を諦める?

 むしろ周りが止めるだろう。

 結月にも、結月なりの立場と事情がある。

 それくらいは愛理にも分かっていた。


「夢が叶うといいわね。もっとも、隣に深川くんはいないだろうけど」

「っ……!」


 廊下で立ち尽くし、うつむく結月を後に残して、愛理は校舎の外へ出た。

 強烈な6月の日差しが、愛理の体を温かく包み込んだ。

 その日差しは、どこか蓮を思い出させた。



 ◇◇



 腕の怪我のせいで見学した体育祭から数日後。

 和花と菅原先輩と並んで帰る、それが新しい日常になりつつあった。

 そんな下校途中、俺のスマホが短く震えた。


「おっしゃっていた件、準備完了しました」


 探偵からのメッセージだった。

 都合のいい日を知らせてほしい、とも添えられていた。


 俺はすぐに振り向き、菅原先輩を見た。


「先輩、今週末って時間空いてます?」

「特に予定はないけど」

「じゃあ、俺と二人でどこか行きましょう」

「デートのお誘いかしら?」


 和花が「ええええっ!?」と大きな声を上げた。

 正直に目的を話すわけにはいかない。


 俺は小さく頷いた。


「はい。少し変わったデートになりますけどね」

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― 新着の感想 ―
愛理先輩スゲー行動力www 結月もある意味ある部分アタマお花畑だよなあ。 それを考えると和花は素直に蓮の言う事とか忠告を聞く分だけ遥かに、比べ様もなくマシですね。
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