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予知能力で彼女を寝取られる未来を見た ~諦めて他のSS級美少女たちを救ってたら、なぜか執着され始めた件~  作者: おなきく


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第32話 業務開始

「あ、えっと、つまりこの子がれんの仕事を手伝うことになった……?」

「はい。菅原すがわら愛理あいりと申します。深川くん……。蓮くんのために一生懸命頑張ります」

「あ、そ、そう」


 母さんに菅原先輩を紹介した。

 なにしろ、これから週五日、俺の家で働いてもらうことになったのだから。

 ただ、母さんはどことなく渋い顔をしていた。

 同じ部屋ではないとはいえ、年頃の息子と女の子を毎晩同じ屋根の下に置くのだ、親として気が気ではないのだろう。


 菅原先輩が、キッチンで夕食の準備をしている和花のどかに声をかけた。


「随分手慣れてるわね。通い妻?」

「そ、そんなわけないじゃないですか! こ、こ、これはあくまで私の命を救ってくれた蓮への恩返しですから!」

「じゃあ、その通い妻役、私がやってもいいかしら?」

「え、ええっ!? そ、それは……」

「冗談よ。顔真っ赤にして、可愛いわね」

「いくら先輩でも、一発殴りますよ!? それと、嫌いな食べ物やアレルギーはありますか!?」

「ううん、何でも食べるわ」


 この二人が俺の家にいる。

 その光景が、なんとも不思議でならなかった。

 先月まで、想像すらできなかった景色だからだ。


 母さんが俺の左腕をガシッと掴んだ。


「ちょ、ちょっと。蓮、こっち来なさい」


 母さんは俺を部屋の隅まで引っ張っていくと、和花と菅原先輩の様子をうかがいながら、小声で尋ねた。


「あんた、どっちなの?」

「何のことだよ」

「だから、あの二人のうち、どっちが本命なのって聞いてるの! ま、まさか二股かけてるわけじゃないわよね……?」

「二人ともそういう関係じゃないって……」


 これまで周りにいる女の子といえば、結月ゆずきくらいしかいなかった。

 そんな俺が、急に複数の女の子を家に招き入れたのだから、母さんが過敏に反応するのも無理はなかった。


「それに、まだ彼女を作る気はないから」

「そ、そう……? まあ、それならいいけど……。とにかく、あんまり女の子を勘違いさせちゃダメよ? そのうち刺されるわよ」

「俺はチャラ男じゃないっての」

「それは分からないわよ。それこそあんたのお父さんだって、今じゃ薄くなった頭にビール腹だけど、モテてた頃は女の子みんなに優しくして、かなりの人気だったんだからね?」


 母さんはそんな男を射止めたってことか。

 それなら、すごいのは父さんじゃなくて、むしろ母さんの方だ。


「蓮! ご飯できたから食べて!」


 その時、和花が呼ぶ声が聞こえた。

 俺はすぐに食卓についた。

 すると、和花と菅原先輩がそれぞれ俺の左と右の席に腰を下ろす。

 ……いや、向かいの母さんの隣だって空いてるのに、なんでわざわざこんな窮屈な座り方をするんだ。


 あの非常階段の時と同じように、思いがけず二人の間に挟まれる形になった俺を、母さんが冷ややかな目で見つめていた。


「血は争えないわね、まったく……」



 ◇



 和花が杏奈あんなちゃんの分を取り分けて、自分の家へ帰っていった。

 菅原先輩はそのまま俺の家に残った。


 2階に上がり、俺の部屋の隣にある空き部屋に入った。


「ここで仕事してくれればいいですから」

「空き部屋っていうか……普通に綺麗な部屋じゃない」

「まあ、普段は客用としても使ってますからね」


 事実上の物置だ。

 両親の物もあるが、大半は俺の荷物だ。

 客用兼ねてるし、掃除だけは欠かさずやっている。


 座卓に置いたノートパソコンとサブモニターを指さし、俺は言った。


「基本的に業務はこれでお願いします。パソコンは使えますか?」

「一応マウスとキーボードの使い方は分かるわ。……たぶん。家にパソコンがあったの、かなり昔だから」


 父親の事業が失敗した時に、パソコンも売り払ったのだろう。

 必要最低限の家具すらない生活なのだから、パソコンなど残っているはずもない。


「あ、そうだ先輩。これも使ってください」


 俺はポケットから、あらかじめ用意しておいたスマホを取り出した。


「ス、スマホ?」

「はい。業務用スマホです。支給する会社もあるって知ってるでしょ?」

「でもこんな最新機種を……」

「数年前のものだから、そこまで最新じゃないですよ。元々俺が使ってたやつなので、遠慮なく使ってください」


 証券アプリは動作が重いため、俺はスマホもPCも、できる限りその年の最新スペックを維持するようにしている。

 だから電話はもちろん、ラインやネット小説を読む程度なら、まだ十分使えるはずだ。


「通信費も俺が経費で負担するんで、気にしないでくださいね」


 菅原先輩が、恐る恐る俺の差し出したスマホを受け取った。

 初期化しておいた状態なので、「こんにちは」という文字が画面に表示されていた。


「業務用スマホだから、業務時間中にしか使っちゃダメなのよね?」

「いえ、そんな必要はないですよ。むしろ常に持ち歩いてほしいんですけど」

「そ、そうなの?」

「はい。そうしないと、俺がいつでも必要な時に連絡できないじゃないですか」


 自分で言っていて、まるでパワハラ上司みたいだと思った。

 けれど、業務上の命令という形にしておいた方が、菅原先輩も受け入れやすいだろう。


「あ、それと業務とは関係ないですが、そのスマホで和花とラインの交換もちゃんとしておいてくださいね?」

「分かったわ。でも、新しいスマホでの最初のライン交換相手は、深川くんにしておきたいな」


 初期設定を終えてすぐにラインをインストールした彼女が、QRコードを差し出してきた。

 俺もスマホを取り出し、そのQRコードを読み込んだ。

 これで昼休みなんかに、いちいち探し回る手間も省けそうだった。


「あ、そうだ。これも必要ですね」


 俺は布団を一枚取り出して床に敷いた。


「途中で万が一腰が痛くなったら、ここに横になってもいいですよ」

「え? いいの? そのままうっかり寝落ちでもしたら……」

「まあ、その辺は先輩が自分で気をつけてください。それに、どうしても眠ければそのまま寝ていいですから。先輩の健康を害してまで働かせるつもりはないんで」


 この仕事自体、ただ菅原先輩を平日の夜に引き止めるための口実に過ぎないのだから。


「分かったわ。確かに、健康じゃなきゃうちの社長がお気に入りの私の生足も台無しになっちゃうものね」

「その通りです。先輩には俺のために体を健康に保つ義務があるんですよ」


 彼女がニコッと笑いながら、俺の手をそっと握った。


「ありがとう。私、深川くんのために一生懸命頑張るね」

「はい、よろしくお願いします」


 その後、ノートパソコンの電源を入れ、証券ツールの使い方と俺のポートフォリオについて簡単に説明した。

 これまで様々なバイトをこなしてきた経験からか、菅原先輩は俺の言葉を一言たりとも聞き逃すまいと、ひたすらペンを走らせていた。

 普段の彼女からは想像もつかないほど、真剣な横顔だった。


「そこまで難しくないですよね? 肝心なのは、株価が急に変動したり、予期せぬ速報を見逃さないことです」

「思ってたより難しくなさそうね。基本的にはずっと画面だけ見てればいいのよね?」

「はい。他に質問はありますか?」

「私がやるべき仕事自体は理解できたんだけど、その……」


 菅原先輩が彼女らしくなく、もじもじしていた。


「ロングとショートって何……?」

「あ、俺が少し飛ばして説明しちゃいましたね。ロングは一般的に考える、安く買って高く売る投資方法です。つまり株価が上がるのを期待するわけです。ショートはその逆です。株価が下がって利益が出るのを期待するんです」

「え? 株価が下がるのになんで利益が出るの?」

「空売りとも言うんですけど……そうですね、簡単に例えるなら。俺が先輩から一週間、鉛筆を一本借りるとします。借りた直後に、それを中古で500円で売る。それから一週間後、同じ鉛筆を200円で買い戻して、先輩に返すんです」

「そうやって300円の利益を出すってこと?」


 俺は頷いた。

 実際はもっと複雑だが、彼女が投資判断まで担うわけではない。

 この程度の説明で十分だろう。


「俺の主な専門はショートです。だから悪材料が出たら、俺にとってはむしろ朗報なんです」

「そうなんだ……。私はそういう知識がほとんどないから、深川くんがすごいとしか思えないわね」

「でも先輩は、少し嫌な気分になりませんか?」

「何が?」

「その……。俺が他人の不幸を利用してお金を稼いでる、とも受け取れるじゃないですか」


 もちろん、俺としては自分の能力を十二分に活かしているだけだ。

 だが、世間の受け止め方が良いとは言いがたい。

 だから両親や結月にも、自分がショート投資家である事実を隠してきた。

 こうして隠さず打ち明けたのは、菅原先輩が初めてだ。


「そうねえ。私はそのへん、完全に門外漢だから、良い悪いの感覚すらないっていうか……。でも、深川くんが他人の不幸を利用してるとは思わないわ」

「……そうですか?」


 彼女がニコッと笑いながら答えた。


「だって、私……今、幸せだもの」


 その言葉に、俺は思わず顔が熱くなった。



 ◇



 一週間と少しが過ぎた。

 菅原先輩は予想以上に集中して、几帳面に仕事をこなしてくれた。

 夢の中で彼女は自分を要領が悪いと言っていたが、特にそんなことはないようだった。


 いつものように朝起きて、学校へ行く準備をしている時のこと。

 プルルルル——

 スマホから着信音が鳴った。

 誰かと思えば、例の私立探偵だった。


「朝早くに申し訳ありません。今、お電話よろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「中間報告をさせていただきます。ターゲットが頻繁に出入りしている闇カジノを特定いたしました。少し手こずりましたが、潜入に成功しました」

「時間帯もですか?」

「はい。表にまとめてお送りいたします」


 さすが、この業界で腕利きと名を馳せているだけのことはある。

 あとは——残るひとつだけだ。


「もう一つ、お願いしたいことがあります。もちろん、別途報酬はお支払いします」


 菅原先輩に真実を知らせる。

 たとえ残酷でも、それで一度にすべてに決着をつけるのだ。


「その闇カジノに、二人潜入できるように手配してください」

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― 新着の感想 ―
深川くん、今日の日本市場だと大儲けしただろうな…。
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